地域活性化センター 吉弘拓生 | 11 | NEXTスーパー公務員
2019.04.05 UP

NEXTスーパー公務員 地域活性化センター 吉弘拓生 | 11 | NEXTスーパー公務員

WORK

一般財団法人『地域活性化センター』職員。浮羽森林組合を経て、2010年に福岡県うきは市職員に。2015年には、群馬県・下仁田町副町長に就任した。2018年にうきは市へ復帰し、今年4月から地域活性化センターで勤務中。1981年生まれ。趣味は、人と出会いつなぐこと。

福岡県うきは市の職員から、群馬県・下仁田町の副町長へと、異色の経験をしてきた吉弘さん。人と向き合い、それぞれの人が活躍できる環境づくりを通じて地域活性化を進める取り組みを紹介します!

地元自治体の主事から
他市町村の副町長に。
人と向き合い、
活躍できる環境づくりに
取り組み続ける。

 この連載ももうすぐ1年。これまでも各地の公務員を取り上げてきましたが、改めて、公務員が活躍するためには、本人が前向きに行動することもそうですが、それができる環境がある、あるいは、その環境をつくっていることが、とても大事な要素だなと感じています。今回取り上げさせていただくのは、そうしたNEXTスーパー公務員が生まれる“環境”をつくろうとしている方、吉弘拓生さんです。吉弘さんは、福岡県うきは市の主事(民間企業で言うところの平社員)から、群馬県・下仁田町の副町長に抜擢。去年4月からは改めてうきは市に主査(こちらも平社員)で復職しました。そして、この4月からは新たなステージへ。吉弘さんの取り組みを通じて、地方創生を進める上での、地元の人間が外の世界を知って戻ってくることの価値や、NEXTスーパー公務員を生み出すための“環境”の大切さについてお伝えできればと思います。

人と向き合い続けて
うきは市から下仁田町へ。
副町長として、人が一歩
踏み出す環境づくり。

 これまで常に“人”に向き合い続けてきたという吉弘さん。大学卒業後の最初の就職先は、うきは市にある『浮羽森林組合』。「観光の視点から森を活用できないか」と、“森林セラピー”で森に人を呼び込むことを提案。数多くの地権者の理解を得るために、1年半もの間、毎日のように訪ねて対話を続けました。「森に人が入ることで、きっと森が元気になる」。最終的には地域全体として納得してもらうことができ、その結果、年間1万人もの方が訪れるようになるほどに。
 うきは市役所への採用後も、地元住民を巻き込んだ取り組みを進めます。その一つが、JR九州の観光列車「ななつ星in九州」の歓迎行事。“モノ”ではなく沿線の“人”に着目し、沿線の保育所の園長先生との話から、「園児の情操教育にもなれば」と始めたのが、「『ななつ星in九州』に笑顔で手を振る」という企画でした。最初はあっという間に保育所の前を通過していましたが、その光景が徐々に列車のクルーの間で話題となって通過するスピードが落ちていき、遂にはうきは駅に停車することに。そして、「うきは産のフルーツを車内で提供したい」と、JR九州から声をかけてもらうことにまで発展。心を掴んだ瞬間でした。
 そうした活躍が、当時の下仁田町長の目に留まり、「培ってきた経験や手法の伝授を。人材育成、とにかく刺激を与えて」と、2015年4月から副町長に大抜擢。国家公務員が地方公務員として副町長になることは多いですが、市町村から別の市町村へ、それも主事が副町長に就任することは画期的でした。
 当初は「若いけど大丈夫か?」といった反応が多かったものの、主事として現場感覚を持っているという強みを生かし、徹底的に“人”と向き合いました。吉弘さん自身が平の職員だったからこそ、職員がどんなことに困るのか、理解し寄り添うことができたのです。その結果、職員自らが施策を提案していく風土が生まれ、役場内も少しずつ変化していきました。そして、その変化は町全体にも広がっていきます。「東京まで約2時間という好立地にありながら、外に出て学べる機会が少ない」「ぜひ外での学びを町に持って帰ってきてもらいたい」、そんな想いでつくった、「ねぎとこんにゃく下仁田奨学金」や「地域づくり人財育成支援事業」。後者は地域づくりの勉強会等への旅費や参加負担金を全額町が助成するという制度です。この制度が始まった結果、「外ではこうやっている」「下仁田町ならこれができる」と実際に動き始めた人が多く生まれています。こうした経験から吉弘さんは、“人”が一歩踏み出すきっかけを後押しする“環境”が必要だと感じるようになりました。

外を経験してみて
改めて感じた
交流の価値と、
これからの挑戦。

 うきは市に戻ってからは、地域創生担当として、今ある価値の最大化を図ることを中心に、3年間培ってきた視点や経験を仕事に生かすことに注力。例えば、どう活用するか煮詰まっていた市の文化財施設。そこで働き方改革に着目し、副町長時代に築いたつながりを生かして、誰もがいきいきと自分らしく働き、豊かな人生を送れるような「新しい働き方」に共感・実現していこうとする勉強会「Team WAA!」へと相談。実際に市に来てもらい、徹底的に議論を重ねた結果、公開施設としての文化財に「働ける場所」という価値を見出し、コワーキングスペース化を図ることに。また、そこを利用する人と職員の合同研修会も実施。民間が持つノウハウを伝授してもらうことで新たな“刺激”と“気づき”が芽生え、仕事外のコミュニティができるようにもなりました。
 うきは市に戻ってきた今、改めて全国の自治体同士の人事交流をもっと活発にやるべきだと考えている吉弘さん。副町長の仕事をうできたのも、「スーパー公務員だから」ではなく、明確な役割分担の下で黒子に徹し支えてくれた仲間、秘書官、そして家族たちも含めた“環境”があったから。そうした“環境”をもっとつくっていく必要性を感じています。
 この4月、吉弘さんはその“環境”をつくるべく、地域活性化のためのひとづくり等の活動を支援している、一般財団法人『地域活性化センター』で働くことを決めました。例えば、自治体間の交流を促進するための「レンタル移籍」制度など、平成の次の時代の公務員が自信をもって活躍できる環境づくりや制度・仕組みづくりを行い全国に広げてゆくという使命を担っていきます。「僕らが動けば、もっとワクワクする社会になる」。そんな想いで吉弘さんは、今度は「寄り添う」側に回って、「NEXTスーパー公務員」を増やしていく支援に取り組みます。まだまだ伸ばせる志や想いが、自治体職員にあると信じて。

\上司は見た/
地域と人をつなぐ「横串人財」!
現場視点で動く人財へ。

地域活性化センター 椎川忍理事長

 地域活性化センターには、全国津々浦々から自分たちの地域を良くしたいという熱い想いを持った人たちが集まっています。自治体から研修派遣される職員はもちろん、東京で開催される「土日集中セミナー」や全国各地で開催される「地方創生実践塾」には、先進事例を学び、それを活かした実践活動をしたいという地域づくりに燃える人たちです。今後も、職員の皆さんとともに、“現場視点”で新しい時代を拓き、地域と地域、地域と人のネットワークを構築する「横串人財」の育成を中心に、地域活性化、地域創生に向けた取り組みを進めていきます。
 吉弘さんには、その先頭に立ち、また、全国の志を同じくする地域づくり人のリーダーとして大いに頑張ってほしいと期待しています。

text by Masaaki Waki
illustration by Masaki Takahashi

本記事は雑誌ソトコト2019年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

キーワード

脇 雅昭

わき・まさあき
1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省に入省。神奈川県庁に出向し、現在は観光部長と政策推進担当部長を兼任。 47都道府県の地方自治体職員と国家公務員が集まる「よんなな会」を主宰。「47都道府県の大人たちを仲間に」をコンゼプトに、民間企業の経営層はじめ国、自治体の公務員など「誰かのために何かできる」セクターを超えた仲間づくりを進めている。http://47kai.com