なnD 6
2020.03.10 UP

連載 | リトルプレスから始まる旅 | 75 なnD 6

SUSTAINABILITY

世界が深まる3人の合冊。

 今回紹介するリトルプレス『なnD(なんど)6』は、3つのリトルプレス『なんとなく、クリティック』『nu』『DU』をそれぞれ編集・デザインする3人(森田真規、戸塚泰雄、小林英治)が、年に一度、お互いの企画を持ち寄って制作するリトルプレス。

 3人がコンテンツを16ページ単位で作成し、9つ分を文庫本サイズにまとめて一冊にしている。

 最初のコンテンツは、立花ハジメさん(ミュージシャン/グラフィックデザイナー)へのインタビュー。先日リリースされたアルバムの話題から、コモドール64やアミーガ(Macintosh登場以前のグラフィック用コンピュータ)で作成したピクチャーレコードやジャケットのデザイン、リトグラフの展覧会で展示した活版による作品について聞く。

紙もレイアウトも異なっていく、 カオスな誌面。
紙もレイアウトも異なっていく、 カオスな誌面。

 柴崎友香さん(小説家)には、2016年にアイオワで開かれたインターナショナル・ライティング・プログラムに参加し、現地で体験した「距離」や外から見ることで気づいた「日本社会」について聞く。

 台北に赴き、日本と台湾のインディ専門のレコード店店主、台湾大学の近くで漫画喫茶+書店+ギャラリーを運営する二人、出版社・書店経営者、イラストレーターなどへインタビュー。

なnD 6

 七里圭さん(映画監督)、北沢夏音さん(ライター)、森山裕之さん(編集者)、迫川尚子さん(写真家/新宿『BERG』副店長)、平民金子さん(ブロガー)ほか、多くの人が登場する。

 9つ分に分けられたコンテンツは、それぞれ、紙質や、フォント、レイアウトなど、デザインが変えられ、ページをめくるごとに内容と共に印象も大きく変わる。

 最初から順番に、またはランダムに読み進めていくと、普段目にすることのないようなコンテンツに出合うことができる。

なnD 6

 インターネットが開始された頃は、ネットで世界中すべての情報にアクセスできると思っていた。SNSが普及し始めると、思いもよらない人や生活と出合い、異なる価値観に接し驚いた。

 スマートフォンも普及し、どこでも手軽に情報に接することができる現在、今度は「いいね」と「オススメ」以外の世界が、なぜか表示されなくなった。ディスプレイの上では、世界が急に狭くなりつつある。

 『なnD 6』の小さな紙の上のコンテンツは、3人で作っているにもかかわらず、ディスプレイの上のSNSより、今ではずいぶんと広く、そしてランダムに、普段出合うことのない世界と出合うことができる。

『なnD 6』編集人より一言

『なnD 6』編集人より一言

 『なnD』は、編集者とデザイナーの3人が年に1号のペースで制作している、雑誌でも本でもZINEでもないリトルプレス。毎号発行に合わせて、西荻窪の雑貨店『FALL』で先行販売と関連展示をした後、都内を中心に全国の個性的な本屋で取り扱っていただいています。

今月のおすすめリトルプレス

『なnD 6』

『なnD 6』

 『なんとなく、クリティック』『nu』『DU』の編集者3人によるリトルプレス。

編集:森田真規(『なんとなく、クリティック』)、戸塚泰雄(『nu』)、小林英治(『DU』)
デザイン:nu 発行:nu
2018年3月発行、147×105ミリ(144ページ)、972円

記事は雑誌ソトコト2018年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文●根木慶太郎

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根木慶太郎

ねき・けいたろう
岡山県玉野市で新刊や古書、洋書、リトルプレスを扱う書店『451ブックス』を経営。地元では「絵本を読む」教室なども開催。全国から取り揃えたリトルプレスはネットショップでも購入可。www.451books.com