『小山豆腐』の豆腐
2020.03.21 UP

連載 | SUSTAINABLE DESIGN 『小山豆腐』の豆腐 人が見えてくる島の豆腐。

FOOD

 広島県呉市の大崎下島へ移住して、驚きの出会いがあったのは人だけではなく、どっしりとしたまるで彫刻のような島豆腐。

 島で唯一のお豆腐屋さん『小山豆腐』は、戦前から先代が作り始めて約80年、大きさや大豆の量を変えることなく、時を刻むように毎日欠かすことなく作られてきた。その味を守り続けてきたのが、ご主人の小山行治さん。

 朝5時半を過ぎると、出来立ての温かい豆腐を楽しみにやって来る常連客。出来上がりの少し前に来て、束の間の会話が弾む。そんなお豆腐屋さんとのやりとりは、島に限らず、昔の日本では一つの文化だった。そんな様子も時代には逆らえず、町のお豆腐屋さんは次々と姿を消していった。

 「無駄なことこそ人間らしい。合理化するほどゼロになり、人間もロボットになる」。ご主人のこぼした言葉にハッとした。小さな島で時代に流されることなく、ていねいに作られてきた小山豆腐は、昔のままの暮らしをそっと伝えてくれる。

 手で持つのがやっとの大きさの『小山豆腐』の豆腐は、果実のようにそのままかぶりつけるほどの硬さ。小山さんの奥さんおすすめのオリーブオイルと粗挽き黒胡椒、粗塩でいただくのも絶品の味。

記事は雑誌ソトコト2020年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

photograph by Tom Miyagawa Coulton
text by Mai Miyagawa

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宮川 真伊

みやがわ・まい
三重県出身。イギリス人の夫と海沿いの暮らしに憧れ、瀬戸内海の大崎下島へ地域おこし協力隊隊員として移住。昨年、イングリッシュカフェ『The Tea Cosy』をオープン。