田舎と田舎の二拠点生活
2020.03.26 UP

連載 | 田舎と田舎の二拠点生活 | 31 誰とどう暮らすかで異なる、食の制限とこだわりを楽しむ。

LOCAL

 小豆島の家と幡豆の家では、食生活がまったく違う。小豆島では、介護や看病に対応した軟らかい純和食が好まれ、幡豆では自然環境に寄り添った多様な食材や調味料を大切にする。どちらも一般的な食事と一味違っている。

拠点ごとの制限とこだわり。

 小豆島では、 90歳代の祖父母3人、療養中の父と叔父、そして1歳児と元気な母の8人で暮らす。家族が誰でも食べられるよう、日本の基礎調味料だけを使った、消化のよい定番和食のみを作る。

 一方幡豆では、夫と夫の仕事を手伝う人、そして1歳児と暮らす。夫は「旬のもの」「地のもの」「化学調味料無添加」の三拍子が揃った食材や調味料を強く望み、なるべく無農薬やオーガニック食材であることを希望する。電子レンジも家にない。加えて豆味噌やたまり醤油など、特有の調味料が根付いている。台所にある調味料も、自家製調味料のほか、勉強として買った調味料、いろいろな人からいただいた調味料など、バラエティ豊かな調味料があり、冷蔵庫の半分以上を味噌が占める。さらに、夫の仕事を手伝う人は約10日おきに2人ずつ入れ替わっており、ヴィーガンの人、イタリア人やスイス人などいろいろな人が来る。 ここに離乳食対応も加わる。

 「ややこしいから出たものを食べろ!」 と強要することもできるかもしれないが、 せっかくなら喜んで食べてほしいもの。

 小豆島では、軟らかく食べやすくなるよう、肉や魚をフードプロセッサーで細かくし、野菜は加熱をする。幡豆でも、夫好みの材料を使い、ヴィーガン対応もすれば、 初めて目にする食材や調味料も教えてもら いながら使う。

食生活を楽しむと、 仕事もスキルも上がる。

 一見大変そうに思えるかもしれないが、「醤油ソムリエール」を生業とする私にとって、多様な食生活を理解し、食の知識を増やせる機会があることは願ったりかなったり。学びや気づきを重ねた分だけ、適切な提案ができるようになる。そして何より楽しいのだ。もはや趣味になっている。

 夫の仕事を手伝う人も、食への意識が高い人がほとんどなので、幡豆の台所を楽しんでくれる。一緒に料理をするときも、食卓を囲むときも、調味料や食材の話題で盛り上がる。休憩時間に遊びで調味料を仕込んだり、味比べ大会が始まったり。さらに、私以外の人がご飯を作ることも多く、オー ル・ベジタブルの中華料理やベトナム料理など、初めてのおいしさに出合えるのだから、ありがたい限り。

 こんな多種多様な環境は、特殊かもしれ ない。だからこそ、これからも拠点ごとの制限とこだわりを楽しんでいこうと思う。

ある日の夫婦

ある日の夫婦

 1月~3月は麹造りの最盛期。『みやもと糀店』が最も忙しい時期だ。麹造りを止めることは許されない。昨年末に家庭内で胃腸炎を感染させ続けた経験を活かし、徹底した予防に努める。外に出る時は頑丈なマスクをつけ、帰ったらていねいに手洗いとうがいをする。部屋は加湿し、喉が痛いかも......と思ったら早めに葛根湯(かっこんとう)を摂取。休憩も重んじて睡眠もしっかりとる。いやあ、もう必死(笑)。なんとか感染せずに乗り切りたい!

記事は雑誌ソトコト2020年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文 ● 黒島慶子
イラスト ● 宮本貴史

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黒島慶子 

くろしま・けいこ
醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときから小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、様々な人やコトを結びつけ続ける。2017年7月6日に、愛知県の幡豆で無農薬で大豆と米を育て、米・豆・麦の麹を作る『宮本農園・みやもと糀店』の宮本貴史と結婚。高橋万太郎との共著『醤油本』を出版。