高橋尚子
2020.03.29 UP

連載 | スマイル アフリカ プロジェクト | 133 日本からのシューズがアフリカの子どもたちに贈った、走る楽しさ、未来への夢や希望。

SOCIAL

2009年にスタートした「スマイル アフリカ プロジェクト」。
10万足のシューズ回収を達成し、プロジェクトは一度、休止となります。
プロジェクトのフロントランナーを務めていただいた高橋尚子さんをはじめ、ご関係いただいた方の思いをお伝えし、締めくくりとさせていただきます。

プロジェクトの締めくくりに。

 日本全国から10万足ものシューズが集まり、アフリカへ渡った。2009年に立ち上がった「スマイル アフリカ プロジェクト」の足跡だが、これをひと区切りに休止することとなった。

 プロジェクトは「アフリカの子どもたちへ笑顏のシューズを贈ろう」を合言葉に、多くの個人や法人、学校の会員に支えられ、とりわけ学校会員にいたっては237校がシューズの回収に協力をしてくださった。学校会員のなかで最初にご登録をいただき、以来、活動を続けていただいた文教大学付属小学校の児童からはこんな感想が寄せられた。

文教大学付属小学校の児童たち。アフリカの現状を学び、シューズの必要性を理解したうえで、シューズ回収活動を展開してくれた。
文教大学付属小学校の児童たち。アフリカの現状を学び、シューズの必要性を理解したうえで、シューズ回収活動を展開してくれた。

 「シューズを寄贈することで、ケニアの子どもたちからは笑顏をもらった」(6年男児)、「このプロジェクト以外でも彼らに元気を与えていきたい」(4年女児)。ほかにも、多くの児童がアフリカとのシューズを通した笑顏の交流を経験し、国際社会が抱える問題を垣間見て、社会貢献の大切さを学んだという。

 「環境活動を考えながらこれからの人生を生きていこうと思う」(6年男児)という頼もしい感想もあった。

古いほうのシューズはこの1年前に渡したシューズ。こんなになるまで履いてくれる。
ケニアのスラムの風景。

 ケニアでは2007年末の大統領選挙後に暴動が起き、国内では約3000人もの命が奪われ、混乱が続いていた。そんな状況のなかで活動を開始したプロジェクトだったが、シューズ寄贈と合わせてケニアで「ソトコト サファリマラソン」を開催し、シューズを履いて走る喜びも伝えてきた。大会の実行委員長を務めてきたソウル五輪・男子マラソン銀メダリストのダグラス・ワキウリ氏はこう振り返る。

中央左側がダグラス・ワキウリさん。ケニアでの最大の協力者。
中央左側がダグラス・ワキウリさん。ケニアでの最大の協力者。

 「2009年の第1回大会は記憶に残る素晴らしい大会でした。暴動の後でしたが、国民が大会運営のために集まり、協力し合い、ケニアが笑顏を取り戻す大きなきっかけとなりました。シューズは子どもたちの人生を変え、勇気と自尊心をスラムに与えてくれました。プロジェクトに、そして日本の皆さんにアサンテ・サーナ(スワヒリ語で『本当にありがとう』)」

シューズには日本の子どもたちが書いたメッセージカードも添えられていた。
シューズには日本の子どもたちが書いたメッセージカードも添えられていた。

 プロジェクト現地スタッフの井上清司は、活動を通して触れ合ってきたアフリカの人たちに感謝の気持ちを抱いている。

 「シューズ寄贈先の貧困地区の小学校で撮った写真を見直すと、たくさんの笑顏が写っています。でも、彼らから元気をもらい、本当に笑顏になったのはこちらのほうでした」

シューズは、夢を持つことの大切さも贈った。

 当初からプロジェクトのフロントランナーを務めた高橋尚子さんにとって2009年は、現役を引退した翌年だった。

 「マラソン選手だった私にとって、シューズは体の一部も同然でした。そのシューズが、スラムでは子どもたちから命を守る『防具』となることを実感しました。ゴミなどが散乱する環境のなか、子どもたちがシューズを履いて楽しそうに走り回る姿や、『夢を持つことの大切さを教えてもらった』『走ることの楽しさを周りにも広げていくね』と言ってくれたことを忘れません。マラソンではアフリカは日本のライバルですが、近い将来、彼らの中から世界で活躍する選手が出てくることを期待したいです」

2018年のランニング大会で。
2018年のランニング大会で。

 2月3日、最後のシューズを積んだ貨物船が東京・晴海埠頭を出港した。3月上旬、ケニアのモンバサ港に入港する。その先で笑顏が待っている。

 これまでプロジェクトに関わっていただいたすべての方に、心より感謝を申し上げます。アサンテ・サーナ!

シューズ回収は目標の10万足を達成しました。みなさまのご協力、ありがとうございました。

シューズ回収プログラム終了のお知らせ

 10万足の回収を目標に2009年から推進してきたシューズ回収プログラムですが、2019年11月23日をもちまして、回収の受け付けを終了し、現在、会員の募集・継続は休止しています。みなさまからお預かりしたシューズは1足ずつ検品を行った後、2020年2月にアフリカに向けて送り、現地の子どもたちへ寄贈を行っていきます。詳細につきましては下欄の事務局・問い合わせ先にお問い合わせをいただくか、プロジェクトのホームページをご覧ください。

チャリティ・プログラム

 会員制度とは別に、ご寄付を2020年3月末まで受け付けております。そのご寄付はシューズ回収プログラムの活動費としてのみ、大切に使用させていただきます。
協力:一般社団法人 ロハスクラブ
寄付専用お振り込み先
三井住友銀行 日本橋支店(695) 普通口座:8064395 名義:スマイルアフリカプロジェクト事務局
みずほ銀行 築地支店(015) 普通口座:2659237 名義:スマイルアフリカプロジェクト事務局

記事は雑誌ソトコト2020年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

photographs by Masaru Suzuki & Smile Africa Project
text by Katsuyuki Kuroi

キーワード

黒井克行

くろい・かつゆき
1958年北海道出身。早稲田大学卒業後、出版社勤務を経て、ノンフィクション作家に。主な著書に、『高橋尚子 夢はきっとかなう』(学習研究社)、『テンカウント』(幻冬舎文庫)、『男の引き際』(新潮新書)、『日野原新老人野球団』(幻冬舎)など。日本大学法学部非常勤講師も務める。