関係人口
2020.04.04 UP

教えて! 小田切先生!国土交通省のアンケートから繙く、関係人口のイマ。

SOCIAL

近年目にすることが増えてきた「関係人口」について、
国土交通省が大規模なアンケートを実施しました。
その懇談会の座長を務めた明治大学農学部教授・小田切徳美さんの
解説を交えて、関係人口の現状を繙(ひもと)いていきます。

関係人口の数

Question 都市圏にはどれくらいの関係人口がいるの?

A 「『関係人口』という概念は徐々に整理されつつありますが、その実態の把握はまだまだ不十分です。そこで昨年、国土交通省が三大都市圏(東京都周辺、中部圏、近畿圏)の地域の18歳以上の居住者約3万人にインターネットでアンケートを実施しました。そこで見えてきたのは、対象者のうち約23パーセントが関係人口であるという数字です。この数値は三大都市圏の約4700万人の人口から推計すれば、約1080万人という数になります。ここから統計上の誤差を考慮しても、大都市周辺には1000万人前後の膨大な関係人口がいるのは間違いありません。さらに詳細なデータによれば、この数値の中には都市内部を行き来している、いわゆる『地域内関係人口』が多く存在していることもわかりました。例えば、関係人口と判定されている人たちの中で、さらに東京都在住の人たち。この人たちが関わっている地域の約30パーセントほどは、都内の別の地域なんですよ」

都市圏には どれくらいの 関係人口がいるの?

関わり方

Question どんな人たちが、どんな関わり方をしているの?

関係人口の分類

趣味・消費型

 地縁や血縁関係のない地域で、地場産品の購入や飲食をしたり、または趣味や地域環境を楽しむ活動を行っている人たち。関係人口全体で見ると、この分類型に当てはまる人たちがもっとも多く、約半数を占めている。

参加・交流型

 地域の人たちとの交流やお祭りなどのイベント、ワークショップや地域体験プログラムなどに参加する人たち。観光ではなく、それよりも一歩地域に踏み込んだ交流をしている人たちが多く、全体では2番目に多い。

就労型

 主に本業のテレワークや副業・兼業にしている仕事をするために地域へ出向いている人たちが大多数を占める。近年のコワーキングスペースやシェアオフィスの増加に比例して、この分類型の人口も増加傾向にある。

直接寄与型

 関係人口全体の中ではもっとも少ない割合だが、「真の関係人口」として扱われることも。地域での産業の創出やまちづくりプロジェクトの企画・運営など、ゲストというよりもホストとして地域に参加している人が多い。

Question どんな職業の人たちが多いの?

A 「上位から会社員、専業主婦・主夫、無職、パート・アルバイト、自営業など関係人口として地域に関わっている人たちの職業は本当に多様です。会社員が多いのはリモートワークなどをする人たちが増えてきたことも関係していて、『就労型』の増加とも大きな関係性があると言えます。逆に無職の方も一定数いるのは退職後の高齢者や地域おこし協力隊の一歩手前くらいの人たちも多いから。それとこれは私の感覚ですが、インターンなどで地域に行く学生も年々増えてきているのを感じています。今までになかった関係人口のつくり方が増えていて、その考え方も多様化しているのがわかりました」

どんな職業の人たちが多いの?

Question 誰と関係先に行っているの?

A 「一人で複数の関わり先があるので複数回答にしていますが、グラフを見ると『自分ひとり』が55パーセントともっとも大きな数値です。しかし、『家族・親族』も50パーセント近くいて、そこに『プライベートの友人』『仕事関係の同僚や知人』の数値を加えれば『自分ひとり』を上回る数値です。このことから関係人口の多くは個人ではなく、家族や仲間といった、グループで行動しているということがわかります。家族や友人・知人を含めて、仲間が仲間を呼ぶような動きが透けて見え、関係人口がこのような力を持っているということがわかり、これは今回のアンケートでの大きな発見です。今後は、関係人口をグループと捉え、よりていねいにその発展性に目を向ける必要があります」

誰と関係先に 行って いるの?

頻度・距離・滞在時間

Question どれくらいの頻度で訪問し、どれくらいの距離を移動して、どのくらいの時間滞在するの?

A 「左の各項目の数値を見ると、関係先の地域への訪問頻度と移動時間には大きな差がなく、多様な結果になっているのがわかります。移動時間の項目の詳細なデータによると、『就労型』の人たちの割合が多かったのが2時間圏内という結果でした。このデータから、『就労型』の人たちが都市部から比較的近い場所に移動しているのがわかり、これはテレワークなどをする人たちが増えてきている傾向も影響しているはずです。また、滞在期間に関しては予想以上に短く、“非宿泊関係人口”は半分以上を占めているという結果でした。このような結果になった要因としては、やはり『地域内関係人口』の割合の多さが挙げられます。また、遠くに移動する関係人口については、地域で宿泊する場所が不足しているのではないでしょうか。特にお金と時間に限りがある学生からは『シェアハウスなどがあればいいのに』という声も聞きます。関係人口は地域への“リピーター”ですから、今後はそういった場所の充実に向けて、行政や民間がより大きく動いていくはずです」

訪問頻度

 月に1回以上地域を訪れているという人を合計すると、全体で31.5パーセントという結果に。ただ、その一方で「年に1回程度」「年に数回」と答えた人も30パーセント近い数値になっている。この項目の詳細なデータによれば、「趣味・消費型」の人口数は最も多い割に訪問頻度は年間を通して少なく、最も人口数の少ない「直接寄与型」が地域を訪れる頻度が最も高くなっていた。関わり方だけでなく、訪問頻度にも多様性が見られる。

訪問頻度

滞在期間

 最も多かった「半日程度(日帰り)」と答えた人の数が32.1パーセントで、3位の「丸1日程度(日帰り)」の21.6パーセントと合わせると、半数以上が1日で帰ってしまう“非宿泊型”ということがわかった。また詳細なデータによれば、「丸1日程度(日帰り)」と最も多く答えたのが「就労型」、「2〜4日程度」の答えが最も多かったのが「参加・交流型」という結果となっていた。さらにごく少数だが、1〜2週間から1か月以上滞在する人たちもいるようだ。

滞在期間

移動した時間

 パッと見ただけでもわかるように、各項目の数値に大きな差がない。大きく分けて2時間半未満以下とそれ以上がだいたい半数となっており、近場から遠方までさまざまな地域に関係人口が広がっていることがよくわかる結果となった。詳細なデータによると「就労型」は移動時間が2時間圏内と答えた人が多く、都市部からも近い地域へ出向いていることがわかった。逆に遠方になればなるほど、「趣味・消費型」の割合が高いというデータとなっていた。

移動した時間

地域活動への参加度

Question 地域活動にはどれくらいで参加しているの?

A 「地域との関わりが深い関係人口ほど地域活動に積極的に参加していて、そのメインは『直接寄与型』の人たち。中には地域活動の事務局だったりホスト役になっている人も多く、この分類型の約半数の人たちが定期的、または継続的に地域活動に参加しています。ただ下のグラフのように全体的に見ると『参加したことはない』と答えた人が半数を超えているのが現状で、詳細なデータによれば『趣味・消費型』の7割近い人が地域活動に参加したことがないと答えていました。今後、より関わりの深い関係人口を多くつくっていくためには、地域活動に参加したことがない『趣味・参加型』の人たちをどのようにして地域に招き入れ、関わってもらうかも重要な点の一つです」

地域活動には どれくらいで 参加しているの?

Question 関係先を移住先として考えているの?

A 『どちらかといえば移住したい』の回答も含めると、関係先の地域への移住に前向きな人の割合は、全体で50パーセントを超えるなど予想以上に高いです。詳細なデータによれば仕事として地域へ出向いている『就労型』を除いて、分類型ごとの移住希望の割合は『直接寄与型』が最も高く、続いて『参加・交流型』、『趣味・消費型』のような数値になっています。分類型だけで見れば移住希望の度合いに差が出ていますが、関係先の地域に対して、どの分類型の人たちも40〜60パーセントは“移住したい”として捉えており、それぞれの地域へ対する想いの強さが見えました。ただ、必ずしも“移住”が最終的なゴールというわけではなく、関係人口としての考え方・関わり方も徐々に変化してきています」

関係先を移住先として 考えているの?

必要な要素

Question 地域との関係性を深めていくために必要な要素は?

A 「この項目は、言い換えれば関係人口が持つ今後の課題といえますが、ここで『地域とつながれる場所の確保』と答えた人が、2番目に大きな割合を占めていることに注目してください。これはいわゆる“関係案内所”の不足を表しています。この点は地域側が対応できることで、カフェやシェアハウス、コワーキングスペースなどといった場所づくりに意識的に取り組んでいく必要があります。地域と関係人口の声をマッチングしてお互いが徐々にステップアップし、“関係案内所”としての場所と運営する人材の確保ができるように整えていくことが大きな課題といえるでしょう」

地域との 関係性を深めていくために 必要な要素は?

記者の目

関係人口の現場を取材して。

 今回のアンケートの結果から関係人口の現状、そして関係人口をつくっていくための課題などが浮き彫りになりました。このデータは今後の関係人口創出に悩む人たちに、大きなヒントを与えてくれるものになったと思います。

記事は雑誌ソトコト2020年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

text by Hiroya Honma(SOTOKOTO)
illustrations by Kazumi Obika
出典「地域との関わり方についてのアンケート」(国土交通省)

キーワード

小田切 徳美

おだぎり・とくみ
明治大学農学部教授。1959年神奈川県生まれ。東京大学農学部卒、同大学院修了。農学博士。2006年から現職を務め、農政学、農村政策論、地域ガバナンス論を専門とする。著書に『農山村は消滅しない』(岩波新書)など。