たまののおと vol.1
2020.04.29 UP

連載 | リトルプレスから始まる旅 | 63 たまののおと vol.1

SUSTAINABILITY

連絡船の町から。

 今回紹介するリトルプレスは『たまののおと vol.1』。

 岡山県南に位置する玉野市で発行されたフリーペーパー。港町・玉野ならではの特別な「音」が聞こえる小冊子。

 玉野の南、瀬戸内海に面した宇野から、四国の高松とを結ぶ航路として、かつて宇高連絡船があった。1988年に瀬戸大橋が開通すると共に宇高連絡船は廃止され、港町・玉野(宇野)から当時の賑わいや趣が忘れられつつある。

宇野と高松を結ぶ船の 歴史がひと目で分かる!
宇野と高松を結ぶ船の歴史がひと目で分かる!

 宇高連絡船の廃止後、港としての役目がすべて終わったわけではなく、本数が減りつつも高松へのフェリーは運航され、瀬戸内国際芸術祭で有名になった直島(宇野から約20分、ちなみに高松からだと約50分)や、豊島をはじめ、瀬戸内の島々と本州を、今も船で結んでいる。

 『たまののおと』では、玉野のまちの昔と今、未来を紹介している。「連絡船は私の人生」。連絡船と共に歩んだ元国鉄職員・玉積正雄さん(91歳)が当時の国鉄連絡船や、四国汽船での仕事や生活を語っている。

たまののおと vol.1

 「港de遠足」。2010年に宇野港に誕生した淀川テクニックの作品「宇野のチヌ」。玉野市の家庭から出た不用品等で作られたオブジェが、すっかり玉野に馴染んでいる様子。

 「港町でつながる」。14年から宇野港で新しく始まった海が見える港のマルシェ『UNOICHI』。季節ごとにマルシェが開催され、玉野市や瀬戸内の島からいろんな店(『451ブックス』も)が出店している。地元の高校生や大学生が積極的に関わるイベントは、玉野の未来へつながっているように思える。

 「うのののり弁」。イラストで紹介された「春」と「秋」の玉野の魅力を伝える弁当「うのののり弁」。地元の生産者、婦人会のお母さんたち、高校生などによって、多くの方が船上で楽しんだ。

たまののおと vol.1

 「宇高連絡船のあゆみ」。1988年に廃止されるまで、本州と四国を結んでいた宇高連絡船。その航路開設から、拡大、転機など、そのあゆみを年譜とフェリーなどの写真で紹介。玉野に住んでいても、若い世代は知らない歴史が紹介されている。

 本冊子の編集に携わった「宇野港『連絡船の町』プロジェクト」が主催した「撮り船フォトコンテスト」の入選作には連絡船や、人々の生活の昔から今が映し出されている。

 『たまののおと』は、連絡船をとおして瀬戸内海と密接に関わってきた玉野の過去・現在・未来を感じる、思いのこもった一冊になっている。

『たまののおと』発行者より一言

『たまののおと』発行者より一言

 波の音、船の汽笛やエンジン音、そして、宇高連絡船とともに生きてきた人々の言葉もまた、玉野でしか聞けない特別な音だと感じています。その音たちを、ぎゅっと詰め込んで、たくさんの方に聞いてもらいたい。そんな思いを込めて『たまののおと』を作製しました。

今月のおすすめリトルプレス

たまののおと vol.1

『たまののおと vol.1』

 港町・玉野ならではの特別な「音」が聞こえる小冊子。

発行:瀬戸内国際芸術祭たまの☆おもてなし推進委員会
編集:宇野港「連絡船の町」プロジェクト勉強会
2017年3月発行、259×183(32ページ)、フリーペーパー

記事は雑誌ソトコト2017年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

文●根木慶太郎

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根木慶太郎

ねき・けいたろう
岡山県玉野市で新刊や古書、洋書、リトルプレスを扱う書店『451ブックス』を経営。地元では「絵本を読む」教室なども開催。全国から取り揃えたリトルプレスはネットショップでも購入可。www.451books.com