手紙〜拝啓20歳の太田くんへ(後編)ー ゲイの僕にも、星はキレイで肉はウマイ VOL.6
2019.04.28 UP

手紙〜拝啓20歳の太田くんへ(後編)ー ゲイの僕にも、星はキレイで肉はウマイ VOL.6

DIVERSITY

前号でご説明したが、今回は20歳の自分に手紙を書きたいと思う。「LGBT成人式」という祝典でお話しさせていただいたことがきっかけだ。当日僕は壇上で話す時間をもらい、LGBTの“皆さん”を勇気づける機会を頂いたが、来ている方は一人一人ちがう人間で、みんなにうれしい言葉を紡ごうと思うとすごく難しかった。もちろん何を話すか真剣に考えていったが、結局「みんなに喜ばれようとして、みんなに煙たがられる」、そんなことになっていないかなぁと不安になったのだ。それで式の帰り道「20歳になった自分に手紙を書こう!」と思い立った。「太田を喜ばせようとしたら、意外とみんなに届く(かもしれない)」戦法、それが一番誠実なエールの送り方なんじゃないかと思った。エールって「上手」より「本気」であるべきだと思う。なので、もうこうなったら勢いだ! このまま一気に書いてしまおう。苦しく、必死だった20歳の太田、彼と今の僕はもうずいぶん違う人間になった。人って本当に生きていたほうがいいとつくづく思う。

太田くん、この度は成人おめでとう。28歳、アラサーになった太田です。成人式の日は晴れでしたよね。よかったね。晴れにこしたことはないです。

さていきなりですが、20歳になる君にお願いしたいことがあり手紙を書きました。それは「これから先、なにかチャレンジがうまくいかないことがあっても『もうお先真っ暗だ』とは思わないようにしてほしい」ということです。君にはそういうネガティブなところがある(今の僕にも少しある)。でも、そんなこと考えるのは大間違いなんです。全然だめ、0点です!

なぜなら、君の想像力には限界があるから。もちろん少し大人になった今の僕もそうで、人の未来を予測する力なんて、たいしたことはありません。僕らはいつも、全然分かってないんです。

たとえば、君はまだ僕の人生の支えとなっている彼らに出会っていません。そんな素晴らしい未来との出会いを、今想像できてないですよね。一人は東京の大学にいて、病気と闘っています。一人はすでに社会に出てうまく仕事をこなせず、悩んでいるところですよ。

すごいことだと思いませんか。昨日、君はバレーの練習を終えた後、体育館を出て突然の雨上がりを喜びましたね。そのとき彼らもどこかで喜んでいるんです。「すごい!」「晴れた!」「なんだ、これっ!」、それぞれが空を見ている。それぞれが違う場所で傷ついたり、大事なことに気づいたり、何かを覚悟しています。そんな苦笑いしてしまうくさい話が、まぎれもなく君にとっての真実であるということに、もっとドキドキして生きてほしい。君は、というか人は、離れた場所にまだ見ぬ仲間をかかえて生きているんです。

そう、僕らを救ってくれるのは、お金より何より人ですよ。生きることをやめない限り、君は人に出会い続け、時に、あぁ、僕はこの人のことを20年以上も知らなかったのか! と驚き、目頭を熱くします。いい恋もしますよ。仕事にも熱中する。君の未来は明るいんです。

だから僕はこれからも、考えすぎずに楽観的にいきます。自分の想像力なんて信用せずに、きっとよくなると信じてヘラヘラしていますから、どうか君もそうやって生きてください。絶対、何もかもが大丈夫。だから楽しむ気持ちをもっと大切にしてね。

最後になりますが、本当、20年間生きてきてくれてありがとう。君は最高なんだよ。だた、お酒は本当ほどほどにしてくださいね。君が今からつける酒癖、今も直っていませんから(笑)。

ということで、すべてのLGBTの成人した皆さん!
本当におめでとうございます!(もう4月だけど)。

文・太田尚樹 イラスト・井上 涼

本記事は雑誌ソトコト2017年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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太田尚樹

おおた・なおき
1988年大阪生まれのゲイ。バレーボールが死ぬほど好き。編集者・ライター。神戸大学を卒業後、リクルートに入社。その後退社し『やる気あり美』を発足。「世の中とLGBTのグッとくる接点」となるようなアート、エンタメコンテンツの企画、制作を行っている。