番号間違い
2020.05.26 UP

連載 | 標本バカ | 97 番号間違い

DIVERSITY

間違いのパターンがわかってしまえば、正しい番号を推測できる。

 先日息子の算数テストの答案を見ていて、114がとても危険な数字であることに気づいた。設問は面積114平方センチメートルの正六角形の4頂点を結ぶ長方形部分の面積を求めるもので、前に解き方を教えたものだった。解答は正六角形の面積を3分の2すれば得られるのだが、哀れな息子は114を144と間違えて解答していた。こういった数字の“文字化け”はよくあることなのだが、多くの場合は途中で計算が難航して気づく。ところが114が危険なのは、たとえ144に化けたとしても、同じく3で割り切れてしまうところだ。きれいに割り切れたから安心し、間違いに気づかずそれを2倍して計算完了。解答は間違ったものになってしまう。後で見直しすればよいだけの話だが、時間ギリギリだとアウト。

 数字列に2つ以上同じ数字がある時、このミスは生じやすい。なぜこんなことを話題にするのかというと、さまざまな研究機関から寄贈されたコレクションを整理する時に同様の経験があったからだ。大量の標本を登録する際には、まずすべての標本に与えられた研究機関の登録番号と種名をチェックしてエクセルのファイルに入力する。例えば毎年1000から2000点を登録しているニホンカモシカの頭骨の場合は、提供してくれている研究機関で各個体に5桁の数字からなる通し番号が与えられている。最初の2桁は採集年度を表すので、間違えてもさほど問題はない。下3桁の番号が重要だ。エクセルの重複した値を強調表示する機能を使っているので、仮に114の個体を144として記録してしまった場合、正しい144番が存在すればエクセルさんが「同じ番号が2つあるよ」と教えてくれて間違いに気づける。ところが、すべての番号が通しでそろっていない年度も結構あって、たまたま144番が不在の場合はそのまま研究機関の台帳と照合する登録作業に入ってしまう。この段階で動物種が異なっていれば間違いに気づくこともあろうが、同種だった場合は答え合わせされず、息子が間違った数字を3で割り切れたことに安堵したように、作業が完了となる場合もある。僕の業務も時間ギリギリの進行なので、何回も見直しできない。

 3桁の場合はまだよい。博物館の標本数は万単位なので、扱う数字は5桁。標本ラベルの記述をする場合には5つの数字をひたすら書いていくわけだが、どんなに注意していても間違うことはある。上記と同様のミスをするパターンが多いが、もっと頻繁なのは数字を入れ替えてしまうアナグラム変換が起こる場合だ。例えば、現在最新の番号となる65172番の場合は65127と書き間違えたりする。さすがに万の位を間違えることはないが、時には1000や100の位を入れ替えてしまうこともあり、油断大敵だ。

 何事も経験。先日整理していた寄贈コレクションにも番号の重複が見られたが、アナグラムを探ったらすぐに正しい番号を見つけた。傾向と対策は重要なもので、間違いのパターンがわかってしまえば、正しい番号を推測できる。息子にこれを伝えてもしょうがないので、「時間ギリギリでも見直し!」を二人で共有したい。

文●川田伸一郎
題字・金澤翔子
illustration by Fumihiko Asano

記事は雑誌ソトコト2020年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

川田伸一郎

かわだ・しんいちろう
1973年、岡山県生まれ。農学博士。国立科学博物館動物研究部研究員。2019年3月から6月まで同博物館で開催される「大哺乳類展2」の企画も担当。著書に『モグラ博士のモグラの話』『モグラ-見えないものへの探求心-』など。