六龜の家族
2020.05.27 UP

連載 | 田中佑典の現在、アジア微住中 | 17 アフターコロナ、信頼経済に向けて動き出そう。

LOCAL

東京、在宅ワークをしながら、微住の今後を考える。

 新型コロナウィルスの感染拡大は連日世界中で広がっている。この影響で、私もしばらくアジアへの渡航ができなくなってしまった。

 今回は東京の自宅より、これまでお世話になった微住先の状況(3月中旬頃)をお伝えする。

 まず1つ目の国は、台湾。台湾の防疫対策は迅速かつ適切、と世界から高く評価されて、台湾国内でも蔡英文総統の支持率が急上昇している。しかし出国・入国が基本的にはできなくなってしまったため、多くの友人たちは皆、口を揃えて日本に旅行に行けなくなってしまったことを嘆いている。

 一方、高雄の山間部にある六龜の状況を聞いてみた。「六龜の生活は普段と何も変わらない。感染者はゼロ。そもそも人口も観光客も多くないし、まわりでマスクをしている人もいない」とのこと。2月下旬に高雄市内に行った際はマスクをしている人も多く、検温や消毒を徹底するお店も多くあったが、同じ高雄でも市内と田舎では対策に差があるようだ。

番号間違い
光州のスーパーマーケットの様子。日本のように食品の買いだめなどはないようだ。

 次にシンガポールでは日本と同様に在宅勤務を行う企業が多く、友人も基本外には出ず、毎日デリバリーサービスの『Grab food』 や『Food panda』を利用しているそうだ。現地在住の日本の友人は「元よりコンパクトシティで、さまざまな政策が政府によって徹底されているため、今回の件も迅速な舵取りができている。何より国民からの信頼も厚いリー・シェンロン首相はスピーチが抜群にうまい。中国語、マレー語、英語と各言語で国民に今後の政策を訴え、ネット上はリー氏への感謝のコメントであふれかえっている」と話す。

 独裁国家と言われるシンガポールだが、投票率90パーセント以上。自分たちが決めたリーダーを信用し、そしてリーダーも結果を出すため、不平不満が生まれないそうだ。

メディアではあまり報じられない現地の実話。

 今年もそろそろ再微住を考えていた韓国・光州の状況を聞いてみた。「光州はほかの都市に比べて感染者数が比較的少ないため、学校は休みになっているが、そのほかの会社や商業移設は普通にやっている。ただし普段から防疫のためにマスク着用などはしっかり行っていて、外食する人は少し減っている」とのこと。

 そしてベトナム・ホーチミンでは一度は感染者全員快復となったが、その後新たに感染者が増え、観光客も多いホーチミンは経済的打撃は非常に大きいようだ。そんな中、微住中ホーチミンで仲よくなった日本語学校で働くベトナム人の先生や彼の生徒たちに連絡を入れた。「コロナも大変だけど、明日の宿題も大変です……」と日本語勉強中の写真が送られてきた。

間違い探し
ホーチミンの学生たちは毎日大量の宿題と闘っている。FBでのチャットの感じだと少しは上手になった?

 一部の生徒はすでに大阪や神戸などの日本企業に就職し、ホーチミンにはもうおらず、残りの生徒たちも日本での就職に向けて必死に日本語の勉強中だ。彼らにとって、自分たちの人生がかかっている日本への就職は、コロナ云々では動じない強い夢なのだ。

”信頼経済”に向かう令和時代。

 皆ひとまず無事で何より。無論どこの地域が安全かということを伝えたいわけではない。いつ何があってもおかしくない状態である。そう、これは“状態”でしかないのだ。このコロナによって明らかになった計画性の無意味。先が見えないことがデフォルトになっていく中で不確実性の“状態”といかに共存できるかがアフターコロナの生き方になる。

間違い探し
毎日人であふれかえるホーチミンの繁華街・ブイビエン通りもこの有様。

 そんな不確実な世の中で支えとなるのは、“貨幣”でも大多数の人が価値とする“評価”でもない気がする。インフォデミック(根拠のない情報の拡散からの混乱)からもそう感じる。

 私がなぜアジア微住という旅を続けているかは、国や地域の垣根をとって主導的に自分の信じられる共同体をつくっている作業だったりするからだ。ふるさととは違い、“ゆるさと”は自主的に選んで見出す地域と関係づくり。今後は個があらゆる場面で、さまさまな選択肢の中から自主的にセレクトすることが余儀なくされる。

 地域側も観光という不特定多数の受け入れからようやく目が覚めるだろう。アジア微住にしばらく行けない今、いずれやってくる“アフターコロナ”に向けて粛々と準備を進める。

記事は雑誌ソトコト2020年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

田中佑典

たなか・ゆうすけ
職業・生活芸人。アウトサイダーの視点で、台湾と日本をつなぐ「台日系カルチャー」の発信を続けてきたが、その足場をアジア全体に拡大。自ら提唱する「微住(びじゅう)」とは一つの場所で2週間以上滞在してみること。観光以上、移住未満でアジアを俯瞰する。