山口由人
2020.06.23 UP

若い世代の目線でアクションを起こす、『Sustainable Game』。

LOCAL

「愛を持って社会に突っ込め」というビジョンを掲げて、社会の課題を発見し、解決に向けた行動を起こす彼らは、まだ中学生と高校生。
SDGsを軸にしたイベントには全国から参加者が集まり、新しい時代をつくろうとしています!

シリア難民を助けたいが、何もできなかった。

 中学・高校生による団体『Sustainable Game(以下、サスティナブル・ゲーム)』は、2019年5月に設立された。代表を務める山口由人さんは当時中学3年生。山口さんは中学2年生の時から、自身の通う中学校でSDGsの認知度を高める活動を行ってきたこと、父親の仕事の都合でドイツに11年間暮らしていたことが設立の背景にあった。

 SDGsが国連サミットで採択される前の2011年、中東各地に広がった民主化運動の波「アラブの春」を受けてシリア危機が発生したことが、山口さんの人生に影響を与えた。「ドイツはシリア難民を歓迎したのに、次第に難民の子どもがいじめられている光景を見たり、難民が乗車するバスが爆破される事件が起きたりして、難民が取り残されていく姿を目の当たりにしました。彼らを助けたい思いが湧き上がってきたけれど、何もできないまま帰国しました」と山口さん。

 日本の中学校に入学後、山口さんはカードゲームでSDGsを学ぶ授業を受け、ドイツで何も行動を起こせなかった自分を奮い立たせることになった。

「誰一人取り残さない」に共感して団体を設立。

 SDGsの理念、『誰一人取り残さない(leave no one behind)』に共感しました。このツールを使えば、今のカオスな世界に対して、自分が少しでも行動できるのではと勇気づけられました」。SDGsを知った山口さんは、関連イベントを探して学びに出かけていった。『こども国連環境会議推進協会(こども国連)』が主宰するワークショップに参加したり、新聞社などが主宰するフォーラムやセミナーを聴講したりするなかで、参加者とつながり、新しい知識を得て世界が広がっていった。

 「この新しいツールを同世代とも共有したいと思い、学校内でSDGsの認知度を上げるプロジェクトをスタートさせました」。山口さんは文化祭でSDGsを知るための展示を行ったほか、ステッカーを配布して認知度を高めたり、関連イベントなどの情報を校内で掲示したりして活動を続けた。その結果、SDGsの認知度を飛躍的に上げることができたが、その先の行動にはなかなか結びつかない状況に直面した。「自発的に行動を起こすためにどうしたらいいかを考えました」。そこで、山口さんは学生団体をつくろうと仲間を集めることにし、昨年5月に6人の仲間と『サスティナブル・ゲーム』を立ち上げるために奔走する日々を送った。

社会人や大学生も加わった新しい「課題発見DAY」も開催。解決策の幅を広げることができた。
社会人や大学生も加わった新しい「課題発見DAY」も開催。解決策の幅を広げることができた。

社会問題に対する意識が高いことはもちろん、活動に必要なスキルを持つ中学・高校生たちに積極的に声をかけた。「パワーポイントで資料をつくる、動画の編集ができる、AIの開発ができる、ホームページをつくれる、話すのがうまい、絵が上手といろんなスキルを持つメンバーを集めました。エンジニアが必要だと思ったら、プログラミング教室に参加して、隣に座った子に声をかけたりしました」。プロジェクトを実行するのにどんな人が必要なのか、すぐにイメージが湧くという。

仲間と行動を起こして、世界を変えていく。

 『サスティナブル・ゲーム』では、最終的にアクションを起こせるようSDGsに対する意識が段階的に高まる活動を用意している。初期段階の„世界・人を知る“アクションとして、全国の中学・高校生たちを集めたオンラインコミュニティをスタート。現在約370人が登録する。「何かアクションを起こしたい時に学校内に留とどまらず、コミュニティ内でメンバーを集めることができて役立ちます」と山口さん。次の„社会課題を知る“段階で役立つよう、これから独自メディアの運営に力を入れるという。さらに、„課題について考える“アクションとして、イベント「課題発見DAY」をこれまでに10回開催してきた。これは、SDGsのゴールを意識してフィールドワークに出かけ、チームごとに課題と解決策を発表するという内容だ。始めて数回は中学・高校生だけでチームを組んでいたが、メンバーに大学生や社会人も加えて解決方法を一緒に探る新しいイベントも始めている。昨年11月に実施した「SDGsで遊ぶソーシャルハッカソン」では、フードロスと貧困解決のために小売店と子ども食堂をつなぐウェブサイトのプロトタイプを制作したチームや、環境問題への当事者意識が低いという課題を解決するために、海外の事例をオリジナル音楽とともに紹介する動画を製作するチームなど、具体的な解決策に向けたさらなる一歩を踏み出すことができた。

打ち合わせに参加する山口さんは、多世代との取り組みを楽しんでいた。
打ち合わせに参加する山口さんは、多世代との取り組みを楽しんでいた。

 イベント参加を機に、SDGsアクションを起こしている人もいる。昨年10月から『サスティナブル・ゲーム』の運営メンバーになった、高校3年生の横木優希さんもその一人だ。環境チームに所属し、「課題発見DAY」の開催時には動物性食品を使わないヴィーガン料理の弁当を出したり、植物由来の素材を容器に使用した水を販売したりしているという。「ヴィーガン料理であることに加えて、紙製の弁当箱や木製のカトラリーを使い、中学・高校生でも負担できる価格で販売するお店を探すのに苦労しました。でも、食を通じて、気候変動と畜産との関連性などを知ってもらえてやりがいがあります」と話す。

 『サスティナブル・ゲーム』では今後、SDGsを軸に教育やパートナーシップに力を入れていく。「課題発見DAY」のさらなる充実を図り、企業と組んで事業提案も行うことで、SDGsのゴール達成に近づくことを願っている。

活動拠点の「R-StartupStudio」は、東京都港区にある。
活動拠点の「R-StartupStudio」は、東京都港区にある。

今年3月には新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のため、「課題発見DAY」をオンラインで行い、世の中の変化にもスピーディに対応している。「中学・高校生は信用がなく、資金などの面で行動が制約されやすい。行動の質を高めて実績を残すことで信用を高めていきたいし、資金・技術の支援も行って行動しやすい状況をつくりたい」と山口さん。この混沌した世の中を変えようと、着実に歩みを進めている。

サポートするのはこんな人たち!

メンバー、ゲスト、参加者に刺激を受ける。横木優希さん

『サスティナブル・ゲーム』環境チームメンバー
昨年夏の「課題発見DAY」に初参加した時、お弁当の容器がプラスチック製で肉料理が入っていることを指摘したら、由人に運営メンバーに誘われました。「課題発見DAY」で出会う幅広い分野で活躍するゲストや大学生に、また行動力があって次々と新プロジェクトを生み出すメンバーに刺激を受けています。気候変動に危機感を感じている私は、安心できる地球に住むことを目指して環境に関するプロジェクトも実施していきたいです。

ビジネスの視点をアドバイスして持続性を。大森寛之さん

「R-StartupStudio」ファウンダー
『サスティナブル・ゲーム』に会場の提供や企画提案を行っています。彼らは活動家としてSDGsに取り組む姿勢が強いので、ビジネスの要素も融合させて持続的に課題解決ができるようアドバイスをすることが多いです。社会課題の解決は一部の人たちから学生も含めた誰もが関わるようになり、みんなでアイディアを持ち寄って課題を解決することで大きなイノベーションを引き起こす。そんな未来になることを期待しています。

中学・高校生らしい視点にこちらが学ぶことも。大坪勇太さん

「R-StartupStudio」ビデオグラファー
私は「課題発見DAY」の撮影やダイジェスト映像の制作を通じて、『サスティナブル・ゲーム』をサポートしています。彼らの活動拠点になっている「R-StartupStudio」は仲間づくり・チームづくりのコミュニティであることから、彼らのSDGs活動に共感して支援するなかで、逆に私たちが学ぶことも多いです。中学・高校生らしく素直な視点で意見する彼らにハッとさせられ、広い世代の情報交換の大切さを感じています。

山口くんが気になっているアレコレ!

見本にしたい『very50』のブランディング力!

『very50(ベリーフィフティ)』は、中学・高校生をアジア新興国に送り込んで現地の人々が直面する問題の解決に取り組むプロジェクトを実施。行動の積み重ねで現地でも信頼を得ている活動内容に注目しています!

気になっているのは『リディラバ』の安部敏樹さん。

『リディラバ』は、多くの社会問題が未解決なのはそれらの問題を知るルートがないとの理由で、社会問題の現場に訪れるツアー、社会問題の構造を伝えるウェブメディアなどを提供 。難 しく 捉 え る の で は なく身 近に感じる伝え方に共感します。

このアクションを続けるために、大切にしていることは?

活動している時も「誰一人取り残さない」。

photographs by Yuichi Matsuki 
text by Mari Kubota