まちにわ食堂
2020.06.26 UP

連載 | NEXT STAGE まちのプロデューサーズ2.0 | 14 小さなことから始めて、少しずつ仲間をつくろう。

SUSTAINABILITY

今月のまちのプロデューサー

田中宏明さん

 今回ご紹介するのは、コミュニティデザイナーの田中宏明さんだ。コミュニティデザイナーとは、地域の中に、人と人とがつながる仕組みをつくる仕事のこと。田中さんは現在、『まちにわ  ひばりが丘』のスタッフとして、西東京市と東久留米市にまたがるひばりが丘団地地域の活性化に力を入れている。ここでは、住民による主体的なまちづくりの動きが生まれつつあるそうだ。

 田中さんがコミュニティデザインに興味を持ったのは学生のとき。ひょんなことから友人と近所の定食屋を間借りして、カフェを運営することになった。地域の人との交流を深めていく中で、次第にお店だけでなく、どうしたらまちをよくできるかを考えるようになったという。そして大学を休学し、まちづくりを行う2つの会社でインターンを始めた。地方や都市部など様々な場所でまちづくりに関わった経験を踏まえ、卒業後に独立し、今に至っている。

団地をリノベーションしたコミュニティセンター「ひばりテラス118」が活動の拠点。
団地をリノベーションしたコミュニティセンター「ひばりテラス118」が活動の拠点。 

 田中さんのような事務局の外部スタッフから、住民への運営体制の移行を目指すひばりが丘団地地域において、鍵を握るのは「まちにわ師」と呼ばれるボランティア集団の育成だ。よりよいまちにすべく、様々なアイデアを考えたり実行したりする人たちのことで、夫婦揃って参加する人や地域外から参加する人など、これまでに22名の「まちにわ師」が誕生している。彼らは団地自治会主催の夏祭りの手伝いや情報誌の製作など、まちに新たな動きを次々とつくり出していった。その結果、特に若い住人が、自分たちの住むまちにさらに関心を持つようになったという。田中さんは「きっと彼らが次のまちづくりを担っていく人になるにちがいない」と目を輝かせる。

ボランティアチーム「まちにわ師」の方々と一緒に、住民主体のまちづくりを行っている。
ボランティアチーム「まちにわ師」の方々と一緒に、住民主体のまちづくりを行っている。

 地域に入る際、田中さんが大切にしていることは3つある。1つは、自分自身もその土地の文化・伝統を真摯に学び、尊重すること。2つ目は、まちのキーマンを見つけること。そして最後に、新旧住民の交流の橋渡しを行い、彼らの活動やつながりづくりのサポートをすること。これらによって、いずれ自分がいなくなっても、どんどん人と人とがつながって、まちの価値を再生産する状態をつくりたいのだという。

 「まちづくりに興味がある人は、自分の住むまちで、自分にできる小さなことから始めてみてほしい。そして、そこから少しずつ仲間を巻き込んでみてほしい」。自分のまちをもっと知り、好きになる人を増やすことが、まちを持続可能にする、地道だけど着実な道なのかもしれない。これからも住民たちが中心となるまちづくりにするため、多くの人、そしてコミュニティの橋渡し役として、正解のない問いに試行錯誤しながら取り組んでいく田中さんに、今後も目が離せない。

文●横尾俊成

キーワード

田中 宏明

たなか・ひろあき
1991年長野県飯田市出身。筑波大学休学中に地方と都市のまちづくりに触れ、卒業後はフリーランスとして複数のプロジェクトに従事。2015年より一般社団法人『まちにわ ひばりが丘』のスタッフとして常駐を開始。

横尾俊成

よこお・としなり
グリーンバード代表。1981年生まれ。早稲田大学大学院を修了後、広告代理店の博報堂に入社。官公庁・団体、NPOなどを担当する中で、社会課題解決のビジネス化に尽力。2010年10月に博報堂を退社、現職。著書『「社会を変える」のはじめかた』発売中! http://ecotoshi.jp NPOグリーンバード www.greenbird.jp