Withコロナ時代に生まれた「Flags Niigata」から、新しい地域との関わり方を考える
2020.06.12 UP

Withコロナ時代に生まれた「Flags Niigata」から、新しい地域との関わり方を考える

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 突如出現した新型ウイルスの脅威によって、気軽に自分の故郷へも帰れなくなってしまった今、地元から離れて暮らすその場所から、地元のためにアクションを起こすことができるオンラインコミュニティが誕生した。その名も「Flags Niigata」。20代の中心メンバー15名から立ち上げられた新たなコミュニティから、都市と地方の未来を考える。

新潟を想う人を繋ぐ「Flags Niigata」

 「Flags Niigata」は、東京と新潟をつなぐコミュニティとして、緊急事態宣言下にあった今年5月1日に発足したオンライン上の地域コミュニティだ。「上手に東京を離れよう。上手に新潟に近づこう。」というメッセージを掲げ、新潟支援プロジェクトの企画・実施やオンライン上における参加者同士の交流の場を提供する。対象は、20〜30代の新潟県在住者や首都圏在住の県内出身者、また、県内在住や出身者でなくとも新潟にゆかりのある人や新潟のために何かしたいという思いがあれば、誰でも参加することができる。

Flags Niigata_イメージ

 「Flags Niigata」の公式サイトから参加申込をすると、参加者同士のコミュニケーションツールとなるSlackへの招待メールが届く。そのメールに従ってSlackへ加入すれば、参加者同士のフリートークや、新潟支援を考える意見交換が誰でも自由にできる場になっている。

 そうして集まった会員数は、現在460名ほど(2020年6月8日時点)。帰郷したくでもできない県外在住者や、県内飲食店の厳しい状況を目の当たりにする県内在住者などの多くの共感を集め、発足直後から参加者の輪は次々に広まり、今もその数は増え続けている。新聞やテレビ、ラジオなどの県内メディアにも複数取り上げられるなど、地元新潟での注目度も高い。

Flags Niigata_Slack写真
会員が参加できるSlackのイントロダクション。参加者向けに、プロフィール設定や自己紹介の方法、各チャンネルの紹介ページを設けている。

参加者のアイデアから生まれるプロジェクト。

 会員が参加できるSlackでの会話は、フリートークはもちろん、新潟の情報交換やイベント告知、アイデアの共有等と話題は様々。会員主体で、自由なコミュニケーションが交わされている。そんなSlackで上がった声をもとに、今立ち上がっているプロジェクトは全部で3つある。

  1. 新潟エールチケット
    新潟の飲食店を支援するために、先払いチケットを発券するプロジェクト。チケットは、3,000円プラン/5,000円プラン/10,000円プランの3種類が用意され、支援額を選んで購入できる。
     
  2. ステイホーム with 新潟
    インターネット上で買うことができる新潟の特産物や製品を紹介するプロジェクト。現在は、新潟の日本酒やキッチン用品、B級グルメのお取り寄せなどが、購入可能なURLと一緒に紹介されている。
     
  3. 新潟オンライン酒場
    オンライン会議ツールのZoom上で行われる、会員同士のオンライン飲み会。参加の条件は、他の人にお勧めしたい新潟のお酒やおつまみを持ち寄ること。毎回、20〜30名の会員が参加する。

 このほか、今まさに立ち上げ準備をしているプロジェクトもあり、今後さらに活動の幅を広げていく予定だ。

 こうした住む場所を問わない「Flags Niigata」というオンライン上の地域コミュニティは、「Withコロナ時代」に必要な新しい地域とのつながり方を提案している。

 現在、緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスの感染拡大によって人びとの生活や社会は大きく変わってしまった。人と人との関係、そして地方と都市の関係が新時代へ突入しつつある今、代表の後藤寛勝さんは何を思い、「Flags Niigata」を立ち上げたのか。話を訊いた。

Flags Niigata代表_後藤寛勝さん
Flags Niigata代表の後藤寛勝さん。1994年、新潟県新潟市生まれ、26歳。2017年4月より、日本のどこかで数日だけオープンする野外レストラン「DINING OUT」を主催する、博報堂DYメディアパートナーズグループ (株)ONESTORYに入社。地域資源の再編集と、価値創造に取り組んでいる。2020年4月に、東京と新潟に点在する新潟出身の20,30代の若者をつなぐコミュニティ「Flags Niigata」を設立。

「帰る」以外に、新潟のためにできることの選択肢がなかった。

 始まりは、後藤さんが東京での自粛生活中に自室でひとり考えていた、「新潟のために何ができるだろう?」という想い。故郷・新潟を想う中で、ひとつの衝撃的な気づきがあったと話してくれた。

「新潟が大好きだし、新潟のために何かしたいって常に思ってたけど、僕には『帰る』以外にできることの選択肢がなかったんです。帰らないと、新潟のためにできることって何もないんだなっていうことに衝撃を受けました。だったら、今ここにいながらできることをやりたいなと思ったんですよね。」

 コロナの影響で地元へ帰ることができない状況の中、東京にいながら新潟のためにできることを考え始まった「Flags Niigata」。しかし、決してコロナ禍だけに焦点を当てているわけではない。世界的なパンデミックを経て変わっていく社会を見据え、後藤さんはこの先の「東京と地方の関係性の変化」に注目している。

 「僕みたいに仕事も在宅でできたりする人とかは、たぶん『これ全然東京じゃなくてもいいじゃん』っていう気づきがあったと思うんですよ。だから、働き方においても、暮らし方においても、これから東京と地方の関係性がどんどん変わっていくな、と感じました。そんなふうに、あらゆる物事において場所を選ばなくなるんだったら、都市や地域に参加する方法もものすごく多様化していくと思ったし、その参加の多様化を、このタイミングならオンラインで生み出せると思って、動き出したんです。」

 学生時代には、NPOで若者の政治参加を促進する活動をしていたという後藤さん。その時から常に、どうしたらより多くの人が都市や地域へ参加するのか、ということを考え続けてきた。東京と地方の関係性が変わろうとしている今、地域への新しい参加の方法を示そうと動き出した。

 こうしてスタートした「Flags Niigata」だが、コロナ禍における新潟出身者同士の交流や新潟支援を活動のメインに掲げつつ、後藤さんの中でより本質的な“裏コンセプト”を2つ設定していた。

①オンラインとオフラインを横断する地域の寄合所になる

 若者の地元離れや町内会・自治体への参加率の低下など、地域内の繋がりが希薄になっていると言われる中、オンライン上に出現した「Flags Niigata」が、新たな地域の寄合所として機能することを目指した。東京や新潟などそれぞれが今いる場所を越えて、同じ「新潟」という地域のつながりで集い、情報を交換しながら地域のためにできることを考え、実行する。住んでいる場所にとらわれることなく、新潟に関わりのある人が、今いる場所から参加できる地域との関わり方を作り出したいと考えた。

②アイデアを具現化するプラットフォームになる

 今や460人が集うコミュニティとなった「Flags Niigata」には、年齢や職業、考え方もバラバラな会員たちが集う。それ故にひとりひとりが新潟のためにやりたいことも様々だが、これだけの大所帯になったからこそ各自が持つスキルや人脈を活かし、出てきたアイデアをどんどん実現できる場になることを目指している。代表である後藤さん自身も、「Flags Niigata」の発足や運営に終始することなく、このコミュニティの一員として、実現したいアイデアをこのコミュニティの仲間と共に実行していきたいと話す。

 この2つの“裏コンセプト”が達成できれば、離れた場所であっても地域のつながりを保つことができ、さらにそのつながりを活用してアイデアをかたちにしていく、新しい地域参加の仕組みができるだろうと、後藤さんは考えている。

「こういう状況の中で、いかに誰かの心の居場所になるかを考えていた」

 こうしたコンセプトを掲げ活動する「Flags Niigata」だが、「何かを生み出さなければならない」といった意識の強いコミュニティというよりも、実際はもっと自由でアットホームな一体感が生まれているようだ。発起人の後藤さん自身も、常に活動に対する意識が高い集団にするよりも、それぞれが居場所を見つけて、会員同士ゆるくつながるコミュニティであることが大事だと感じていた。

「『アイデアを具現化する』とかって言ってますけど、基本フリートークで全然良いんです。僕も一人暮らしだから寂しいし、同じように心寂しい人たちっていっぱいいると思うんですよね。だから、こういう状況の中で、いかに誰かの心の居場所になるかを考えていました。実際、何気ない会話でみんなずーっと話していたりするし、特別なアイデアがなくても、誰でもいて良い場所にすることが大事だと思ったんです」

 「Flags Niigata」が始動したのは、ゴールデンウィークの連休直前だった5月1日。毎年この連休中に地元へ帰省していた人たちも、今年は自宅で過ごした人がほとんどだっただろう。会いたい人にも会えない大型連休を前に、寂しさや不安を募らせていた人も多かったはず。そんな気持ちに寄り添い、気軽に参加できるコミュニティを目指したからこそ、始動とともに驚異的なスピードで会員数は増え、連休最終日の5月6日には350名を越えていた。

Flags Niigata_新潟オンライン酒場
実際に開催された、「新潟オンライン酒場」の様子。月に2回定期的に開催され、会員同士が顔を合わせて交流する機会になっている。

内と外の分断を作らないために、多くの視点を入れる。

 そんな「Flags Niigata」の立ち上げには、代表の後藤さんを含めた計15名の初期メンバーが関わっている。立ち上げの仲間を集め出した時、後藤さんはできるだけ属性の異なるメンバーに声をかけることを意識した。

「こういうソーシャルな活動って、興味がある限られた人だけで進んでいく傾向が強くて、意識の高い人と低い人で分断してしまいがちだと感じています。僕はそれがすこく嫌で。だから、立ち上げからできるだけ多くの視点を入れておきたかったんです。」

 そう話す通り、立ち上げには、一般的な会社員のメンバーをはじめとして、神戸からやって来た地域おこし協力隊の隊員やウェブデザイナー、さらに飲食店の経営を熟知したメンバーから南魚沼で米農家を営むメンバーまで、東京・新潟を問わず様々な領域で活躍する仲間が集まった。この個性豊かなメンバーと「Flags Niigata」始動に向けて話し合いを進める中で、活動の方針を決める新たなヒントを得たと、後藤さんは振り返る。

「たとえば、『Flags Niigata』ではSlackを使ってコミュケーションを取っていますけど、『Slack』っていう言葉も聞いたことがない人だってもちろんいます。自分たちでは当たり前に使っているツールでも、そういう人にとっては、『アプリをダウンロードするの?』『どうやるの?』っていう感覚だったりして、そこがすごいヒントになりました。そんなふうに、普段こういう活動にあまり関心がない人たちにもちゃんと視点を合わせたほうが、この先の活動の広がりがあるし、意味があると思いました。」

 普段から「新潟を良くしたい」「新潟のために何かしたい」といった意識を常に持ち行動する人は、おそらく少数派だ。だからこそ、「Flags Niigata」はそうでない人たちにもしっかりと寄り添い、フラットな目線に合わせながら着実に進んでいきたいと考えている。そうすることで、「Flags Niigata」の外にいる、より多くの人たちを巻き込んだ取り組みや、さらに幅広い活動の実現を目指し、活動を続けていく。

自分たちの手で新潟を良くしていくことを当たり前にする。

 このようにして「Flags Niigata」が始動してから1ヶ月が経過したところだが、早くも新たなプロジェクトの動きも始まっている。コロナ禍を経て、地方での就職や移住の選択肢が広がることを見据え、新卒採用向けには県内企業のオンライン就活相談会やOB訪問等の実施、さらに、転職や移住を検討する人向けには「大人の職場体験ツアー」企画など、東京から新潟へ人の流れを作ることを目指したプロジェクトが動き出している。後藤さんが「Flags Niigata」の“裏コンセプト”に掲げる、「アイデアを具現化するプラットフォームになる」ということを体現するように、次々と新しい活動が生まれているようだ。

 後藤さんは最後に、「すべてを行政に頼るのではなく、より良い新潟を作るための方法をみんなで考え、行動を起こしていくことを当たり前にしたい。そのきっかけが、『Flags Niigata』という場所になれば良い」と語ってくれた。

 「Withコロナの時代に求められる『新しい生活様式』の場所は、東京である必要があるのか?」そんな問いに直面する人が増え、地方に注目が集まる今こそ、地域との関わり方を見直すチャンスかもしれない。新潟以外の地域からも、「Flags 〇〇をやりたい」という問い合わせが来ており、後藤さん自身も他地域での展開に積極的に協力したいと考えている。こうしたオンライン上でつながる地域との新たな関わり方は、新潟だけでなく他の地域でも参考になるはずだ。

Flags Niigataを深ぼる

Miho Aizaki