紅茶・香茶コーディネーター本田さなえさんと、お茶に寄り添う体験を
2020.06.21 UP

紅茶・香茶コーディネーター本田さなえさんと、お茶に寄り添う体験を

PEOPLE

長崎市で国産発酵茶葉販売店「紅と香」を営む本田さなえさん。自ら生産者と消費者の間を行き来し、生の声を聴きながら仲介役としての在り方を模索し続ける。このコロナ禍の期間で悟った、より多くの人が愉しめるお茶との向き合い方とは。

国産発酵茶葉 販売店「紅と香」の芽吹き

鎖国下にあった長崎・居留地で暮らしていた西洋人は、
邸宅から望む港の風景を眺めながら、お茶を飲んでほっと一息ついていたのだろうか。
築100年を超える古民家で国産発酵茶葉を販売する「紅と香」も、この地域でそんな癒しのひと時を提供している。

紅と香・外観
ガラス戸を開けると、暖かい光に包まれる店内に誘われていく。

お店を営むのは本田さなえさん。
勤めていた保育士を辞め、趣味でずっと続けていたお茶の活動を本格的に生業としていくことを決める。
きっかけは、この地域で空き家活用に取り組む知人から寄せられた、とある物件の相談。
趣のある町並みの中に佇む古民家、窓から広がる長崎港の景色、そして居留地の異文化が混ざり合う歴史に惹かれ、この家を引き継いだ。

まず初めに立ちはだかった壁は、店舗作り。とにかく開業の前に、この家をなんとかしないといけない。
資金も十分には無かったため、同じく空き家活用に取り組むメンバーや、本田さんの繋がりで手を貸してくれる人たちとコツコツ改修を重ねた。

改修前の外観
改修を着手した当初の様子。
生い茂った草木を刈るところから始めていった。

2017年から始めたリノベーションは、少しずつ歩みを進め、2018年4月に店舗がオープン。
本田さんが直接農家から仕入れてきた国産茶葉を販売したり、お茶を淹れる体験・教室を開いたりなど、開店してから今に至るまで着実にファンを増やしていった。

オープン日の「紅と香」外観
約半年間で店舗部分の改修まで済ませ、「紅と香」がスタートした。

生産者の元でひたすらお茶と向き合う

訪れる人とのコミュニケーションを大事にしながら、そして生産者との繋がりを大切に築きながら、
2020年4月でお店は2周年を迎えようとしていた。

「紅と香」店内
お茶の試飲や体験などができる空間に生まれ変わった。

そんな矢先、新型コロナウイルスの影響があらゆる業界に及んだが、「紅と香」もその例外ではなかった。
対面での販売や商品の仕入れが思うようにいかなくなってきたのだ。
本田さんはこの状況を受けて、「お茶を作りに行こう!」と思い立つ。
早速、元々取引のあった東彼杵のお茶農家に連絡。
コロナ禍による商品の需要縮小・価格下落や従業員の雇用維持の難しさに直面していた農家は、ボランティアで本田さんが来てくれることには歓迎だった。それから4月中旬ごろより約2ヶ月間、ほぼ毎日朝6時に長崎市を出発して茶畑に通い、夜の22時に帰ってくるような日々を送ることに。

茶畑で作業中の本田さん
当分の間、店舗をお休みし、東彼杵町の茶畑の中で修行をする本田さん。

これまでにも本田さんが茶園に赴きお手伝いをすることはあったが、今回の修行の内容は一味違ったとのこと。
というのも、今まではシーズン中に茶摘みをさせてもらうなどの経験しか無かったが、今回は長期間に渡って茶園に通い続けたことで、シーズン外ならではの茶園の管理作業を見学・体験させてもらったようだ。
畑の抜根をして新たな畑を育てる準備、樹勢を強くするための枝の剪定、茶に覆い掛けをする「寒冷紗」という布などといった備品の補修・整備など、ベストな状態でお茶を摘むまでの支度を丁寧にこなしていく姿を目の当たりにしたのだった。

茶葉・手元
先が見えない中で不安になりながらも、今はとにかく茶葉を作るしかない。
そんな思いで手を進める農家の想いにも触れた。
 

photo & text by Kyosuke Mori

  • 1/2