自分たちの手でまちをつくる「リノベーションまちづくり」のススメ
2020.06.25 UP

自分たちの手でまちをつくる「リノベーションまちづくり」のススメ

PEOPLE

「久しぶりに地元に帰ったら、まち並みがずいぶんと寂しくなっていて驚いた」
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか?
日本中どの地域も抱える空き家・空き店舗・空きビルなどの遊休不動産問題。
今、使われなくなってしまった不動産を活用する「リノベーションまちづくり」の動きが全国に広まっています。
その一つとして、2015年から県内各地でリノベーションまちづくりを進めている鹿児島県。その立役者である須部貴之さんにお話を伺いました。

まちのリノベーションが生み出す未来へのチャンス

遊休不動産
時代の移り変わりと共に使われなくなってしまった空きビル。まちの未来に向かって、どんな新しい役割を持たせられるだろうか?

「遊休不動産を活用したまちづくり」と聞くと、なにやら不動産業界の専門的な知識がいるのではないかと思ってしまいますよね。でも、そういうわけではないのです。
リノベーションまちづくりの動きが全国に広がったきっかけの一つに「リノベーションスクール」というものがあります。
2泊3日もしくは3泊4日でリノベーションまちづくりを学ぶ「短期集中型の学校」という形で開催するリノベーションスクールは、2011年7月に福岡県北九州市で始まりました。
次々と他の地域でも開催され、今や10都市800人以上もの人々が参加しています。

  • まちの活性化に向き合ってきた公務員
  • 地元で商店を経営する商店主
  • 不動産の仕事に関わる業界人
  • まちづくりに関心を持つ学生
  • 地元で活動するデザイナーやアーティスト

そんなさまざまな属性の参加者がチームを組み、まちを歩いたり、実際に使われなくなった不動産の現場を活動拠点としながら、活用プランを考えて夜な夜な計画を練り上げ、最後は対象不動産のオーナーへ向けてプレゼンテーションを行うというのがリノベーションスクールの概要です。
参加者全員に共通すること、それは「自ら関わりながらまちの未来をつくっていきたい」という気持ち。
そこに「まちのリアルに飛び込む」というリノベーションスクールの特徴があわさって、これまでに20件以上の事業が実際に立ち上がり、中には自らのプランで起業する参加者もいるという、まちの未来にとって大きなチャンスを生み出してきました。
 

鹿児島にリノベーションまちづくりの流れを!

須部貴之さん
鹿児島大学で自身の取り組みについて話す須部貴之さん

2013年に福岡県北九州市で開催されたリノベーションスクールに参加した須部貴之さん。
大学進学をきっかけに県外へ出て、家業の不動産屋を継ぐために17年ぶりに帰った鹿児島に衝撃を受けていたと語ります。

「中心地だった繁華街は人が少なく、1階部分の店舗が空いているどころか一棟空いているビルもある。
実家が不動産屋を営む騎射場という地域も、自分の記憶にある17年前の町並みは無かった。めちゃくちゃ人が少ないし、空き部屋だって2月・3月は埋まるのが当たり前だったのに1〜2割は空いたままだ。これはどうなんだろう。
そんなショックを感じていた時にリノベーションスクールの存在を知って、北九州まで参加しにいったんです」

全国から人が集まって、寝る間も惜しんで遊休不動産の活用プランを考える。しかも、事業計画まで本気で作り込んでいく。

「こんなふうに実際に動いている人たちがいるんだ!これは絶対に鹿児島に持っていきたい。鹿児島で一緒に動く仲間を作りたい」

その後、須部さんをはじめ鹿児島出身でリノベーションスクールに参加したことのあるメンバーが中心となり、2015年1月に鹿児島県鹿屋市で県内初のリノベーションスクール開催を実現。その後、鹿児島市でも開催が続きました。
鹿児島に誘致したリノベーションスクールをきっかけに、実際に空き家を再生した飲食店や地域の交流拠点などがいくつも誕生し、地域住民同士の交流が生まれるマルシェを開催した参加者もいたりと、着々と鹿児島でのリノベーションまちづくりの動きが加速しています。

まちにダイブすると見えてくる、未来へ向けた新しい役割。

参加者集合写真
鹿児島県霧島市で開催したリノベーションまちづくり講演会の様子。高校生から経営者まで、さまざまな人が参加している。

「リノベーションまちづくりって簡単に言うと、今あるものを使い倒すこと。”まだ何か使えるんじゃないか”という視点で不動産オーナーと何かをやりたい人がつながれば、これまでの過去にとらわれない新しい役割が生まれるんです。
まちの未来へ向かって今どうあるべきか、どういう拠点や人物が必要なのか。そういったことを見つけるためには、自ら”まちへダイブ”してみると良い」

自分が暮らすまちのことって意外と知らないものです。灯台下暗しということわざもありますが、地元の歴史やここにしかない特徴は、意外と知らない場合が多いのです。
海へダイブするように地元のまちへ飛び込んでゆっくり散策してみたり、人と話してみたりすると、それまでは知らなかった意外な発見があります。
その積み重ねによって、まちに新しい役割が生まれ、事業が生まれ、人が育っていくと須部さんは語ります。

まだまだ進む鹿児島のリノベーションまちづくり

フライヤー
2019年に開催したリノベーションまちづくり講演会のフライヤー。年代問わず多くの人が参加した。

最近の動きとしては、2019年に霧島市内で3回のリノベーションまちづくり講演会を開催。県外からリノベーションまちづくりの第一人者の方々をゲストに迎え、高校生から企業経営者までさまざまな人が参加しました。
また、今年は引き続き霧島市内での企画を進めながら、新しく出水市でもリノベーションスクールの開催に向けた動きが始まっています。

「今でしか、ここでしか、私たちでしかできないことは何か」
そんな意識を持ってまちの未来を考えてみる。それは知識の有無や年齢問わず、誰にだってできるリノベーションまちづくりの入り口なのです。

リノベーションスクール

霧島リノベーションまちづくり

文:白水梨恵
写真:霧島市
   須部貴之