先月はじめて訪れた「2016世界幸福度ランキング」1位のデンマークの首都・コペンハーゲン。この地で真剣に、幸せとは何かを考えてみた。
2020.06.28 UP

連載 | 森の生活からみる未来 | 57 仕事はライフスタイルデザインの一つにすぎない❺

SUSTAINABILITY

 「❶心身メンテナンス」「❷ライフテーマ」「❸パートナーシップ&ファミリー」という、3ステップを経て初めて、ぼくらは、お金がどれくらい必要かを考える(❹マネープラン)。次に、❷のために社会で具体的に「何をすべきか、どう働くべきか=❺キャリアデザイン」が見えてくるはずなのだ。

 つまり、キャリアデザインという項目は、人生デザインにおける優先順位として、5段階目でやっと登場する、ということである。

 海外から「働きすぎ・働き者」と揶揄され続けて、半世紀近くが経つ日本。この国では未だに、“キャリアデザイン至上主義”の考え方が横行している。仕事を人生の中心とし、家族や健康よりも、仕事を最優先する思想。

 でも残念なことに、そんな日本人の、1人当たりの労働生産性はとても低い。主要先進国7か国では20年以上、最下位を維持している。米国と比較すると、何と3分の2レベル。なんとも悲しい事実である。このデータは、仕事ばかりに生きることを強いられた、ぼくら日本人への警鐘だと感じられるのは、ぼくだけではないはずだ。

「何のために働くか」ではなく、「仕事のために、お金を稼ぐために生きる」という考え方は、本当に人を幸せにするのだろうか。仕事やお金はあくまで、幸せな人生をデザインするための“手段”や“ツール”にすぎないのに。

「お金や仕事のために、人生を、命を犠牲にしている状態」、つまり手段と目的が入れ替わっていることに気づかずに、生きてしまっている人は、決して本当の豊かさと幸せを手にすることはできないだろう。本当の豊かさと幸せは、お金では決して得られないという真理は誰でも知っているはず。

 ただ、健康的に生活するための最低限のお金も環境もないという、貧困状態にあると、幸福感を手にすることは難しい。だが、それ以上の過剰なお金が、人を劇的かつ本質的に幸せにすることは決してない。

 途上国に比べると金銭面では圧倒的に恵まれている日本。物質的な豊かさと便利さにおいては、先進国でも群を抜く、極限レベルの環境を手にしているぼくら日本人。

 それにもかかわらず、「幸福度」は驚くほど低い(2016年。世界157か国中53位)。その原因は、❶❷❸の優先順位を下げて生きているから、というのがぼくの見解だ。

 さらに言うと、❶❷❸をしっかり手にしたうえで最低限の❹を確保できていれば、どんな過酷な社会でも自分らしく働き、しなやかに生き抜くことができる、とぼくは信じている。つまり安心して険しく長い登山道を歩き続けることができる、ということだ。

 そこに「❻レクリエーション・趣味」と「❼自然とのつながり」が加わることで、人の幸福度はより増すことになる。❻は「タイムマネジメント」という言葉に置き換えられるだろう。時間と心に余裕がある人でないと、❻の優先順位を上げることはできない。

 ぼくらには、肉体の使用期限という寿命がある。つまり「時間=命」であり、「何に時間を使うか=何に命を使うか」ということになる。心から楽しいと思えることに「命」を費やす行為は素晴らしいことであり、ぼくら人間はそのために生まれてきたはずなのだから。

写真・文●四角大輔

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四角大輔

よすみ・だいすけ
ニュージーランドの湖で半自給自足の持続可能な、森の生活を営む執筆家。フライフィッシング冒険、世界でのオーガニックジャーニー、アーティスト育成をライフワークとし、会員制コミュニティ『Lifestyle Design Camp』学長、複数の企業の役員やブランドアドバイザーを務める。レコード会社プロデューサー時代に7度のミリオンヒットを創出。好評発売中の新刊『人生やらなくていいリスト』では、ストレス社会となった日本で、自分自身を守り抜き、軽やかに働き、自分らしく生きるために必須の「ミニマム仕事術」と世界一簡単な「人生デザイン学」を公開している。増刷を重ね、現在4刷。