KABA.ちゃん、おめでとう。ー ゲイの僕にも、星はキレイで肉はウマイ VOL.8
2019.06.14 UP

KABA.ちゃん、おめでとう。ー ゲイの僕にも、星はキレイで肉はウマイ VOL.8

DIVERSITY

もう結構前になってしまうが、タレントのKABA.ちゃんが声帯を手術して女性的な声にしたこと、みんなどう思っているんだろうか。

このニュースがメディアをにぎわせていた時、ホリエモンがTwitterで「マジか……」とコメントをつけて記事をシェアしていた。心配なのか、それとももしかして嫌悪なのか、どういう意味なんだろうと思ったが、とにかく僕は「いや、マジだよ(真顔)」と言いたい。

KABA.ちゃんは“オネエ”タレントである前にトランスジェンダーの女性だ。正確には性同一性障害。男性の体で生まれてきたけれど心が女性で、MtF(エムティーエフ─Male to Femaleの略。その逆はFtM)と表現される。僕はMtFの当事者ではないので何かを代弁することは全くできないが、友人にはたくさんいるので話を聞く機会は多い。先日、あるMtFの友人に性別適合手術を終えた後の感想は? と聞いた時「やっと元に戻れたと感じた」と言われたが、正直自分の想像の範疇をこえていて、面食らってしまった。最近ジムにハマッている僕は、“男のからだ”が磨かれていくことに楽しさを感じることができる。でも、それがつらくて仕方がない人がいるのだ。そんな人生、ほんと「マジだよ(真顔)」って話でしかない。KABA.ちゃんがどれだけネタをテレビで披露しても、彼女と彼女のセクシュアリティがネタなわけではない、ということは強く言っておきたい。

とはいっても、たしかに、声=音が人の認識に与える影響は大きいのは事実だと思う。これまで“オネエ”プレイヤーとして商売を続けてきた人の声の女性化というのは、仕事に影響する可能性が大きいだろうし、その意味での心配はきっと彼女もあったと思う。はるな愛ちゃんの、低い声で怒鳴り声をあげた後に「けんじ(男性だった時の名前)が出ちゃった♡」という芸は象徴的だと思うが、声は“オネエ”としてパフォーマンスするうえでのキーなのだと思う。だからこそKABA.ちゃんの挑戦は「商売の武器を失ってでもやりたかったこと」と言えると思うし、世の中への大きなメッセージになったと僕は思う。

そんなわけで、とにかくKABA.ちゃんは無知の氾濫するテレビにどんな形で復帰するのだろうと気になっていたが、観た限りでは和気あいあいとしたやり取りが流れる番組ばかりで、少しホッとした。とりわけ彼女が帰国して初めて出た番組、バナナマンの設楽統さんが司会をつとめる『ノンストップ!』はすごく素敵で、「設楽さんにランジェリーをプレゼントしてとお願いしてたんです!」と楽しそうに彼女が話し、設楽さんも「ちゃんと買ってきたよ〜!」と笑顔でう。本当に「最高かよ!」と声が出てしまった。僕は大のバナナマンファンなので、なんだか誇らしくさえ思えた。

正直メディアが、ニコニコと彼女を迎え入れていることの裏の本音がどうかなんて分からないが、それでも「KABA.ちゃんを肯定しよう」という空気が復帰直後のテレビの中にあったことは、僕は希望ととっていいんじゃないかと思った。少しでも前進しているなら、僕は喜びたいと思う。

ということで、本当にKABA.ちゃんには「ありがとう」と言いたい。これからもし“オネエ”としての仕事が減ったとしても「自分らしくいられる」ことより重要なことなんて世の中にそんなにないと思うから、心配するよりまた新たな活躍を期待し続けたい。KABA.ちゃん、おめでとう! ありがとう! これからも応援してます(空に向かってエールを送りました)。

文・太田尚樹 イラスト・井上 涼

本記事は雑誌ソトコト2017年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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太田尚樹

おおた・なおき
1988年大阪生まれのゲイ。バレーボールが死ぬほど好き。編集者・ライター。神戸大学を卒業後、リクルートに入社。その後退社し『やる気あり美』を発足。「世の中とLGBTのグッとくる接点」となるようなアート、エンタメコンテンツの企画、制作を行っている。