SOSが出せない福祉現場を、そして社会を変える。新たな福祉世界を描くヘラルボニーの挑戦。
2020.08.17 UP

SOSが出せない福祉現場を、そして社会を変える。新たな福祉世界を描くヘラルボニーの挑戦。

SOCIAL

「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、“福祉”や“知的障害”に染み付いたイメージを鮮やかに打ち崩していく、ヘラルボニー。今年4月から取り組んでいた「#福祉現場にもマスクを」プロジェクトを中心に、コロナ禍における福祉現場で感じていたことについて、株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長の松田崇弥さんに話を訊いた。医療崩壊が叫ばれる中、福祉の現場でも“福祉崩壊”とも呼べる危機に直面していた。その中で福祉現場に感じていた危機感、そして現在スタートした新たな取り組みとは。

福祉現場のSOSを発信する、「#福祉現場にもマスクを」。

 ヘラルボニーは、マスクや医療品の不足が深刻な問題になっていた4月下旬、一般社団法人 障害攻略課、一般社団法人Get in touch、NPO法人D-SHiPS32の3つの福祉団体とともに、「#福祉現場にもマスクを」というプロジェクトを発足させた。

ヘラルボニー_#福祉現場にもマスクを

 「#福祉現場にもマスクを」は、マスクを必要とする福祉施設へ1か所でも多く届けるため、マスクや寄付を募り福祉現場へ届けるプロジェクト。松田さんの元には、当時複数の福祉施設から、マスク不足や施設運営の苦しい状況に助けを求める連絡が届いていた。しかし、SNSやメディアなどでは、福祉現場のSOSが世間に発信されていない。この状況に、危機感を抱いたという。

松田さん「当時、福祉施設から私にも『マスクが足りない』という連絡が来ていましたし、他の団体にも個別で連絡が来ていました。でも、SNSとかには全然そういう情報が上がっていなくて。福祉の現場って、身内に頼るということにはすごく慣れているんですけど、外部の人たちに発信できないことが多い。今回も日本の人たちに、こんなにヤバイんだよっていうのを発信できていないことが、まずヤバイってなって。それで他の団体と一緒に、福祉施設へマスクを届けながら、しっかり福祉現場の状況が社会に伝わる体制を作りましょう、ということで立ち上げたんです」

 介助が必要な障害のある本人やその家族にとっては、福祉施設はなくてはならない生活インフラのひとつ。しかしその現場は、マスク不足や緊急事態宣言下の人手不足によって「福祉崩壊」とも言える危機に面していた。さらには、さまざまな理由によって三密を避けられなかったり、ソーシャルディスタンスの確保が難しいところも多い。そうした厳しい環境にありながらもSOSが出せず、精神をすり減らしながら踏ん張ろうとする福祉現場の現状を改善するため、立ち上がったのだった。

SOSを出せない福祉現場の改善を目指して。

 しかし、そうした厳しい状況にあっても、福祉現場からSOSを出すことができないのは、なぜなのだろうか。

松田さん「やっぱり、みんな遠慮してるっていうのが非常にあると思います。当時、医療現場の逼迫した状況が複数のメディアで報じられていましたが、福祉現場の支援員や介護職は、医師や医療従事者ほど尊敬されるような職業ではないと自分たち自身の中で思ってしまっていて、声を大にして『助けてください』って言いたくても言えない、というのが心の根本にあると感じています」

 プロジェクトの中では、福祉施設がそれぞれ個別に自らSOSを発信できるよう、「#福祉現場にもマスクを」のメインビジュアルに各施設の名前を入れて使用できるグラフィックデータも用意された。それでもSNSなどで使用されている数はまだ少ない印象だが、「自分たちから発信していく」という発想や習慣を持ってもらうことが大事なのだ。

ヘラルボニー_#福祉現場にもマスクを
「#福祉現場にもマスクを」のビジュアルに、自由に名前や問合せ先が入れられるデータを配布。施設が自らSOSを発信することを促した。

 4月の発足以降、これまで65万枚を超えるマスクを1,491施設へ届けてきた。現在ではマスクの供給状況も徐々に改善されつつあるが、まだまだ充分な量のマスクが行き渡る状況にはなっていないとして、引き続き活動は続いていく。

Miho Aizaki

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