ぶあいそうな手紙
2020.07.17 UP

人生の一歩を踏み出す力。映画「ぶあいそうな手紙」

DIVERSITY

 ブラジル南部の街・ポルトアレグレに住むエルネストは、若い頃に隣国ウルグアイから移住してきた78歳の独居老人。早くに妻を亡くし、息子ラミロとは離れて住んでいるため、今はアパートで一人暮らしをしている。隣に住むハビエルはアルゼンチン出身で、年齢の近さや移住者という共通点もあり、二人の間には頻繁に交流がある。またポルトガル語が公用語のブラジルでは珍しく、二人はスペイン語を話す。

ぶあいそうな手紙

 ある日エルネストのもとに、ウルグアイに住む友人の妻ルシアからの手紙が届く。彼はスペイン語で書かれたその手紙をどうにかして読もうと試みるが、もう文字を読めるだけの視力がない。また身近にいるスペイン語話者ハビエルとは言い合いをしてしまい、代わりに手紙を読んでくれる人を探していた。すると偶然、犬の散歩のアルバイトをしている23歳のブラジル娘ビアと出会う。訳ありそうな彼女だが、スペイン語が読めることを知り、届いた手紙の代読と返信の代筆を依頼することにした。

ぶあいそうな手紙

 2020年7月公開予定の映画「ぶあいそうな手紙」は、主人公エルネストの変化が印象的な作品だ。これまで自分の想いをうまく表現できなかった彼が、手紙のやりとりを手伝ってくれたビアに影響を受け、次第に自分を表現し始める。青春時代を過ごした故郷ウルグアイのこと、手紙のやりとりを手伝ってくれているビアのこと、父を心配し、一緒に住もうと言ってくれている息子ラミロとのこと、若い頃に思いを寄せていた文通相手ルシアとのこと、そして自分の老後。さまざまな想いを抱えたエルネストは、映画最後に交わす隣人ハビエルとの会話をきっかけにある決断をし、行動に出る。

ぶあいそうな手紙

 何歳からでも、どんな背景をもっていても、人生の一歩を踏み出す力は誰にでもある。自分をうまく表現できず、年齢や視力の不安もあったエルネストが本作中に変わっていく様子は、そんなことを伝えようとしているのかもしれない。

 そして観終わった後に、彼と同じように一歩を踏み出そうとしている人の背中を、優しく押してくれているかのようにも感じられる作品だと思う。

ぶあいそうな手紙

ぶあいそうな手紙

7月18日(土)よりシネスイッチ銀座、7月31日(金)よりシネ・リーブル梅田ほか全国順次ロードショー
公式サイト(http://www.moviola.jp/buaiso/
© CASA DE CINEMA DE PORTO ALEGRE 2019

text by Naoko Yamakawa