油原さんの呼びかけに急遽集まってくれたみなさん。
2020.07.31 UP

「ひさしぶり」「ありがとう」「おかげさまで」が飛び交う町。柏には顔の見えるジモト感がありました!

LOCAL

※本記事は雑誌ソトコト2018年2月号の内容を掲載しています。記載されている内容は発刊当時の情報です。本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

東京駅から上野東京ラインに乗って30分強。千葉県柏市は、訪れる人が次々とコミュニティの一員になっていく不思議なまちだ。その秘密を探るべく、『EDGE HAUS』油原祐貴さんに柏の関係案内所を紹介してもらった。

地域をおもしろくするおせっかい。

”ウラカシ“という言葉をご存じだろうか。1980年代から90年代にかけて、柏駅周辺の裏通りには古着屋を中心に個性的な店が立ち並び、「東の渋谷」と呼ばれるほど隆盛を極めた。その勢いは時代と共に少しずつ衰えていったが、いま、柏は再び注目を集めはじめている。火付け役の一翼を担うのが合同会社『EDGE HAUS』。柏で人と人がつながる場やイベントを企画・運営する会社だ。

 代表の油原祐貴さんは茨城県龍ケ崎市出身。高校生の頃からウラカシに通っていて、外から来る人を懐深く受け入れる風土に魅力を感じていたという。大学卒業後はリクルートに入社し、『ホットペッパー柏』編集部の立ち上げを担当。しかし、そこで葛藤を抱くことになる。「クーポン誌ができたことで、それまでクチコミで人が入っていたお店が安さで選ばれるようになっていったんです。自分が好きだった柏の文化を壊してしまったように感じて、顔が見える関係性を紡ぐ新たな仕組みを模索しはじめました」。

 油原さんが最終的に辿り着いたのは、メディアの役割を果たす場をつくることだった。2012年、日によって店長が替わるコミュニティカフェ『YOL Cafe Frosch』(以下、『フロッシュ』)をオープン。その1年後、仲間と共に『EDGE HAUS』を設立した。「”おかげさまサイズ“のジモトを醸す」が企業理念。「全国の酒蔵には特有の菌がいて、杜氏が混ぜたり温めたりすることでその土地独自の地酒ができます。僕らも同じように、柏ならではの人や文化を交ぜてまちを発酵させたいと思っています。じゃあどんな風に醸すかというと、キーワードは『おかげさま』。『ありがとう、おかげさまで』といった言葉が飛び交うようなまちにしていきたいんです」。そのために大事にしているのは、積極的におせっかいをすること。たとえば、フロッシュに来たお客さん同士をつなげたり、ギターを買った知人のために音楽祭を開くことにしたり。そういったおせっかいによって、地域外の人もいつの間にかコミュニティの一員となり、関係人口の階段を上っていく。

クリエイターや起業家が集まるコワーキングスペース。

『EDGE HAUS』代表の油原祐貴さん(左)とゼネラルスタッフの行政翔平さん(右)。
『EDGE HAUS』代表の油原祐貴さん(左)とゼネラルスタッフの行政翔平さん(右)。

 では、その階段の入り口はどこにあるのだろう? 油原さんが最初に案内してくれたのは、『EDGE HAUS』が運営するコワーキングスペース『Nobless Oblige』、通称NOB。柏界隈のクリエイターや起業家の活動拠点だ。ドロップインでの利用も可能で、登録者の半数は柏市外の人だという。行政がNOBのメンバーに仕事を依頼したり、メンバー同士で周辺の店に飲みに行ったり、といった流れも生まれている。「初めての利用者に、『とんかつのうまい店があるから絶対そこへ行ってください』と強く勧めることもあります。そうすると、『NOBでおすすめされて来ました』とお店の人に話しかけやすくなりますよね。NOBの利用者であることが、地域の人と交流するときの名刺代わりになるんです」。ここでも、油原さんのおせっかいがいい具合に作用しているようだ。

ウラカシのDNAを継ぐ、ファッション・コミュニティ。

左から2番目が店長の田中庸介さん。田中さんの左がスタッフの吉村健さん、右が佐野新吾さんと岡純平さん。
左から2番目が店長の田中庸介さん。田中さんの左がスタッフの吉村健さん、右が佐野新吾さんと岡純平さん。

 続いて、柏を代表するセレクトショップ『iii3(アイスリー)』へ。この店を経営する田中庸介さんも最盛期のウラカシに遊びに来ていて、買い手から売り手へとシフトした一人だ。店の壁をギャラリーにしてアーティストの作品を展示したり、駐車場で餅つき大会を開いたりと、枠にとらわれない活動を展開する。遠方から服を買いに来た人が地元客と仲良くなって一緒に飲みに行く、なんてこともたびたびあるそうだ。

 2017年11月、田中さんは「柏をもう一度ファッションのまちとして盛り上げていこう」という志を同じくする仲間と共に、「ウラカシ百年会」を立ち上げた。エリアをまたいだ新しい商店会で、約30店舗が加盟する。柏に興味・関心のある個人も会員として参加可能だ。『オモシロイことを企む自由の総合商人』のようなものです。これからどんどん企画を仕掛けていきますよ」と田中さん。休日になると路地を人が埋め尽くしていたかつてのウラカシの風景が戻ってくる日も、そう遠くないかもしれない。

photographs by Hiroshi Takaoka text by Emiko Hida

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