Sally広村理沙さん
2020.08.18 UP

人のぬくもり、人生の物語を縫いつなぐ。洋服のリフォーム・リメイク「Sally」広村理沙さん

PEOPLE

サステナブルの意識の高まりや、コロナ禍による外出自粛で家財整理をする人が増え、利用者が増加しているという洋服のリフォーム・リメイク。10数年の縫製技術を生かし、福岡市のベッドタウンで「Sally」を営むのが広村理沙さんだ。レトロスクーターの専門店「バイクショップサワヤカ」の一角に設けたショップ兼アトリエに並ぶのは、色とりどりの糸や着せ付け用のトルソー、業務用ミシンなど。「一時たりとも針を刺す手を止めたくない」と話す広村さんに話を聞いた。

再生の喜びを、自分の手で届けたい

ハンドメイド雑貨のショップ経営、その後、地元大手リフォーム会社での勤務を経て、「Sally」で洋服のリフォーム・リメイクを始めたのが2018年。もともと、ハンドメイドや手作りのものが好きだったこともあるが、リメイクやリフォームの魅力に出会ったのは、前職のリフォーム会社だったという。「全然違うものにもできる面白さ。技術が上がっていく達成感。そして何より、お客様の喜ぶ顔ですね。大事にしていたものがまた使える、新しく生まれかわった姿に喜ぶ笑顔を見るのが楽しい」と話す広村さん。
しかし会社員時代には、楽しさの反面、組織の一員として作業することに気持ちの限界を感じたという。
「リフォームやリメイクは楽しいけど難しい。作業だけでなく、お客様との打ち合わせやデザインの提案。いつのまにか数に追われてロボットのように作業する自分がいて、クリエイティブな提案が難しくなっていったんです」。膨大な作業と提案力が必要だが、仕事量に反して手にできる収入の低さも独立を決めた理由の一つだった。「すごく誇りに思える仕事だからこそ適正な収入が得られるべきだし、それなら自分でやろうと」
 

Sallyリメイク製品スカート
依頼主が祖母から譲ってもらったという着物2着を使ってタックスカートにリメイク。(c)Sally

 

人と地域に洋服のリフォームやリメイクができること

「Sally」で洋服のリフォーム・リメイクを始めてから、人や地域との繋がりを以前より感じるようになったと話す広村さん。以前、近所にチラシを配布したところ、足の不自由なおばあさんから依頼が来たことがあった。内容は、スウェットパンツのゴムを入れ替えて欲しいというもの。「入院用のスウェットで、何年も着ていて着心地がいいからゴムを入れ替えて病院に持って行きたいと。次の日仕上げて届けてあげたら、すごく喜ばれたんです」と広村さん。
年を重ねると体が小さくなり、ずっと着ていたものが着られなくなる。でも、気に入っているからまだ着続けたい。洋服のリメイクというとトレンドに合ったデザインにしたり個性的なフォームに作り替えたりと、見ためのことがクローズアップされがちだが、広村さんはこのおばあさんの話のような、その人の暮らしや人生に寄り添ったリフォームの提案、性別や世代も超えて使い続けられる仕立て直しを心がけているという。
「だから話を聞くことがすごく大事なんです。しっかり話をすることで、洋服のリフォーム・リメイクを超えた繋がりも持てますし」
リフォームの依頼に訪れた近所の人と話しているうちに、その人の家の蛍光灯が切れているという話になり、夫と手伝いに行ったこともあるという。「今は少なくなった、ご近所付き合いみたいな人と人との関係性を、この仕事を通して再生できたらと思っています」

Sallyリメイク製品ポーチ
パンツ1本からポーチ4種類にリメイク。全く違うものに生まれ変わった。(c)Sally

photographs by Satoru Hiromura,Risa Hiromura
text by Noriko Nishi

  • 1/2