ワインや食材への情熱がそのまま、サステナブルなものの価値を伝えるライフワークに。
2020.08.27 UP

連載 | みんなのサス活 ワインや食材への情熱がそのまま、サステナブルなものの価値を伝えるライフワークに。

SUSTAINABILITY

オンライン化でも人気加速?ナチュラルワインへのこだわり

EM 腰塚:エッセンティアでは、なぜ「ナチュラルワイン」を重視されるのでしょうか。

ユキトさん:そもそも自分でワインを買って飲んでいて、ある時気づいたらナチュラルワインが多くなっていたのがきっかけですが、自分でお店を始める時、扱う商材として真っ先に思いついたのが、ナチュラルワインでした。

ワインが出来るまでには、大きく分けると栽培と醸造、2つの工程があります。栽培では、畑で農薬や化学肥料を使うかどうかの違いが。醸造では、発酵のための酵母が、ブドウの皮についていた天然のものなのか、あるいは人工的に培養されたものなのかの違いが主な論点です。栽培と醸造、いずれもその土地固有の微生物や酵母菌を活かすかどうかの違いがあり、これがナチュラルワインとコンベンショナルワイン(※)の分かれ道です。

EM 腰塚:畑と醸造工程の違い。わかりやすく整理されました。

ユキトさん:もうひとつ付け加えるならば、酸化防止剤や、その他の添加物の有無や量でしょうか。ナチュラルワインは酸化防止剤の量がぐっと少ないか、あるいは無添加です。

EM 腰塚:健康文脈で、最近飲んでいる人が増えているという説もありますが、それだけではないのでしょか。

ユキトさん:実際ワインの世界では、世界的にナチュラルワインが盛り上がってきてるんですよ。さらに、インターネット上のいろんなツールを使って拡散していくという動きもあって。ワイン界の一部では、ナチュラルワイン好きなモデルさんがインスタグラムでワインを紹介して、それが爆発的に売れて欠品になることもあったりします。ナチュラルワインは、コンベンショナルワインほど大量生産されるものではないので、毎年日本へ入荷する量はある程度限られていて、売り切れるのは当然なんですけどね。
世の中には「一年中同じものを手に入れたい」と思う人もいる。特に、私たち日本人の多くは物質的には恵まれた環境に暮らしていて、自分のお気に入りのものがいつもあるのが常となっています。自然界からの恩恵を受けて暮らしている限り、年中同じものが手に入るのは、どちらかというと不自然なのですが。

EM 小田部:農産物もワインも一緒で、一年中同じものが手に入るわけではない。共感できます。

ユキトさん:ちなみに、エッセンティアで扱う魚介類で一番人気はホタルイカなんですが、捕れる時期が限られてますから「いつもあるわけではないんです」とお伝えしています。でも、季節物や、量が限られているものを販売することや伝えることでも、消費者の意識って徐々に変わっていくと思うんです。

食に恵まれた店の立地・サステナビリティに妥協なしの店づくり

ユキトさん:学芸大学に住み始めて、まだエッセンティアのことなど思いつきもしていなかった頃から、ナチュラルワインが飲める飲食店さんや自然栽培・有機栽培の野菜や果物が買えるお店、そして業界でも有名なオーガニックレストランがあるのを見てきました。今ではそうした志向を持つお店がさらに増えてきていて、特にナチュラルワインを扱い種類も豊富なお店の密集度はすごいと言え(僕の見解ですが)、学芸大学は、東京で一番、いや世界で一番かもしれません。イタリア現地でもここまでナチュラルワインが飲めるお店は密集していませんから(笑)。この界隈で親しくしているお店がいろいろあるので、ご興味があれば、案内できますよ。

EM 腰塚:それはすごい!知りませんでした!

EM 小田部:その時は、お店でのワイン選びの振る舞いを見せていただかなければ。

EM 腰塚:最後に、お店で気づいた包装材のサステナビリティにも触れさせてください。最近は自分のためはもちろんお渡しする先への過剰包装にも気を使うから、純粋にギフトにも使いたいです。

ユキトさん:この風呂敷と新聞紙ですね。風呂敷は問屋さんで記事を買ってきて、それを母がミシンで仕上げてくれました。新聞紙は、集めてくれるお客様のご協力を仰いでいます。読み終えた新聞紙を持ち込んでもらう取り組みはオープン時からずっとそのままで、新しい包装紙は使っていません。

新聞紙やクラフト紙袋で魅力的に魅せる包装材に工夫
新聞紙やクラフト紙袋で魅力的に魅せる包装材に工夫

EM 腰塚:お店の木づくりの空間も自然素材にこだわり、思い入れがあるとお聞きしましたが。

ユキトさん:レジカウンターはヒノキ、ワインセラーの木材はスギを使っていて、いずれも低温乾燥の無垢材です。「住宅をメインとして自然素材で」という工務店さんはいますが「飲食店・小売店の施工を自然素材で」という僕のこだわりに見合う、経験豊富な工務店さんはまずありません。
住宅と店舗はまた違ったセンスや経験が必要になるので、店舗デザインで経験豊富な設計事務所がいいなと、自然素材での施工のプロと店舗デザインのプロ、それぞれを僕が見つけてきて、組んでいただきました。本来は、それぞれの会社で設計から施工まで一気通貫してお願いするものですが、いずれも妥協したくなかったので。

EM 小田部:最初お店を始める時にワークショップが念頭にあったことや、おもてなしが好きという話を聞いていたら、ユキトさんは本当にコミュニケーションが好きなんだなと思いました。自然に商品のサステナビリティまでを語るエバンジェリストになっていて、それがライフワークになっているという感じですね。

ユキトさん:店頭に立ってずっと接客していたいほど、コミュニケーションするのが楽しくて仕方がないです(笑)。人との対話とかコミュニケーションで、購買行動が変わるきっかけを作れたらいいなという気持ちが、コアにあるのだと思っています。あるものを買いに来た人が、結局別のものを買っていくこともあるんですよ。「思考の転換」「選択肢の広がり」「自分の本当の好みに気づく」といったことに興味があり、人の購買行動に影響を与えられたらと思いました。

取材・聞き手:EARTH MALL編集部 小田部巧/腰塚安菜

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学芸大学「essentia」オーナー/ユキト

日本海に面した漁港と市場まで徒歩3分の、漁師の家に生まれ育つ。大学生になってから、料理を作って人に食べてもらう楽しさに目覚める。就職を機に関東で暮らし始め、東京や横浜でイタリア郷土料理を食べ歩く。
2014年、ヨガの食事療法での学びをきっかけに本質的な衣食住とは何かを考えるようになり、消費者の購買行動を起点に社会が変わるきっかけを作りたい!という想いから、地域社会に密着したナチュラルワインとオーガニック食材の店舗を思い描く。2016年、essentia(エッセンティア)を東横線・学芸大学駅前にオープン。店舗奥のイベントスペースでは、ワイン会や読書会を頻繁に開催。
https://essentia.shop/ 
instagram:@essentia_gakudai

EARTH MALL 編集部

「EARTH MALL」は、SDGsを実現する未来へのアクションを創りだす有識者のプラットフォーム「OPEN 2030 PROJECT」(代表・蟹江憲史 慶應義塾大学政策・メディア研究科教授)から生まれ、「博報堂SDGs プロジェクト」が社会実装を担っているプログラムです。

生活者にとって身近なアクションである「買い物」から未来を変えていくことを目指して、企業、NPO、アカデミア、行政など様々なステークホルダーと共に、持続可能な生産と消費について学べる教育プログラムの開発や、事業開発支援などを行っています。
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