心を掴まれた初めての山登り
今年のお盆休みは地元へ帰るのを諦めた。コロナの影響もあり、遠方への移動と人混みを避けたいという気持ちが大きかったということもあるが、実は数日前にアウトドアが趣味の友人から山登りのお誘いを受けたのだ。
恥ずかしながら、キャンプくらいでしか山に足を運んだことがない私。急いでトレッキングシューズを買いに走り、ドキドキとワクワク、そして不安が入り混じる心で当日を迎えた。
今回選んだのは小学生でも登れる片道1時間半ほどのコース。途中、体力的にきつさを感じる部分はもちろんあったが、もともと自然好きな性格ということもあり、初めての山登りは最初から最後まで感動の連続だった。
登るにつれて変わっていく体感温度。風も強くなり、真夏にも関わらず肌寒さを感じる。
街中では絶対に見れないような生き生きした植物の姿や、澄みきった空気、何よりも頂上から眺める圧巻の景色には思わず言葉を失うほど感動した。
こうして、私はすっかり山登りに心を掴まれてしまったのだった。
「大切なものを守りたい」その気持ちが行動を変える
終始、ひたすら感動した山登りだったのだが、一つだけ残念なことがあった。
下山する途中の道端で落ちているゴミを見つけたことだ。
幸いにもゴミが落ちていたのはここだけではあったのだが、こんなに美しい自然の中になぜゴミを捨てていくんだろうと非常に悲しい気持ちになった。
もしかすると持ち帰るのを忘れてしまっただけなのかもしれない。何か事情があって、ここに残さざるを得なかったのかもしれない…
しかし、どんな事情があっても山の環境を汚し、生態系を壊すことに変わりはないのだ。
私も友人も、自然と足を止めてゴミを拾い始めた。
普段、街中に落ちているゴミを見かけても拾ったりはしないのだが、この時はなんの躊躇もなく手が動いてしまったのだ。
「こんなにも心を掴まれた美しい自然を絶対に汚したくない」
あとあと冷静になって考えると、とにかくその一心で手が動いたように思う。山登りの魅力を教えてくれたこの山は、私にとって掛け替えのない大切な場所になっていた。
文章:白水梨恵