古紙や水草から、新しいリサイクルを生み出す『サンウエスパ』。
2019.05.29 UP

古紙や水草から、新しいリサイクルを生み出す『サンウエスパ』。

SUSTAINABILITY

岐阜県からカンボジア・トンレサップ湖へ。
「リサイクル・レボリューション」を掲げ、いらないもの、未利用なものに価値を見つけて、持続可能に循環させている岐阜県の企業『サンウエスパ』。
カンボジアでは水草のホテイアオイを資源化し、地域にいい循環を生み出そうとしています。

厄介者のホテイアオイを、バイオエタノールに。

サンウエスパ敷地内
岐阜市にある『サンウエスパ』の敷地内。同社では、家庭や企業、地域団体などから出る有用な古紙を回収し、製紙原料として製紙メーカーに卸すことが本業。古着やアルミ缶なども資源として回収する。

カンボジアにある東南アジア最大の湖・トンレサップ湖。約100万人の水上生活者が暮らすというこの湖には、外来植物のホテイアオイという水草が、湖面の多くの場所で繁茂している。空間的な制限がない場合、7か月で200万倍になるといわれるほどの繁殖力をもつホテイアオイは、ボートの行く手を阻んだり、エンジンにからまったりと、漁や水上交通の妨げになるほか、水鳥や魚などの生態系にも影響を及ぼすと問題になっている。

エコファミリー・シュレッダー出すと・ホテイアオイ
左・カンボジアのトンレサップ湖に繁茂するホテイアオイ。
中央・難再生古紙といわれるシュレッダーダスト。エタノールの原料とする新しい事業化を目指す。
右・古着など家庭の「都市資源」をリサイクルするための「エコファミリー」。

このホテイアオイからバイオエタノールをつくり、資源を地域で循環させていくための事業を構想する企業がある。岐阜県岐阜市に本社がある、再生資源卸売業の『サンウエスパ』だ。同社が描く未来はこうだ。水上生活者にホテイアオイの回収を委託して雇用を生み、そこで製造されたバイオエタノールを彼らの足であるボートのエネルギーとする。また、日本で不用になった農機具をカンボジアへ輸出してバイオエタノールを利用して動かし、さらにはバイオエタノール製造で出た残渣を堆肥化させて作物をつくるというビジョンだ。

それにしても、岐阜県の再生資源卸売業者が、どのような経緯で、カンボジアでのエネルギー事業を進めようとしているのだろう? 

循環型の未来を目指し、
エネルギーを生み出す、再生資源卸売業へ。

回収した古紙、古着、ダンボールなど、種類ごとに分けて、それぞれ必要とする再生業者へ卸す。古着は東南アジアへ輸出される。
回収した古紙、古着、ダンボールなど、種類ごとに分けて、それぞれ必要とする再生業者へ卸す。古着は東南アジアへ輸出される。

『サンウエスパ』は古紙をはじめとする資源回収を主力事業とする、社員約50人の企業だ。企業や行政からの古紙回収のほか、アルミ缶などの資源回収、家庭からの古紙や古着などを24時間いつでも持ち込みできるスポット「エコファミリー」を東海地区72か所に設置。効率化のためのIoTも導入して、リサイクルの新しい入口をつくっている。

本社を訪ねると、代表取締役・原有匡さんの社長室には、「リサイクル・レボリューション」という同社のビジョンが掲げられ、壁一面のホワイトボードには、びっしりと今後の構想が描かれていた。

ダンボールや牛乳パック。圧縮してまとめる。
ダンボールや牛乳パック。圧縮してまとめる。

原さんは3代目の社長に当たる。大叔父にあたる創業者から「会社を継いでほしい」と頼まれたが、当初、古紙業界に未来はあるのかと考え、一度は断ったという経緯がある。

2011年の入社後、「どうすればおもしろくなるのか」「どうすればモチベーションが上がるか」を考えながらリサイクルを学ぶと、目を向けるべきは「海外」ではないかという考えに行き着いた。

「“いらないもの”を“必要とする人”のところへと運ぶのがリサイクル。だとしたら、日本で必要とされなくなったものを、今、必要としているところへ運べばいい。それは途上国なのではないか」と、原さんは考えた。そして12年頃から東南アジア、とりわけまだ日本の大企業が進出していなかったカンボジアへと通うようになった。

左上・「エコファミリー」は24時間、無料で利用可能。右上・2018年に改築された『サンウエスパ』のオフィス棟。ロゴは地元デザイナーに依頼。<br />
左下・開放感のある社内。右下・デザインにこだわった資源回収車。
左上・「エコファミリー」は24時間、無料で利用可能。右上・2018年に改築された『サンウエスパ』のオフィス棟。ロゴは地元デザイナーに依頼。
左下・開放感のある社内。右下・デザインにこだわった資源回収車。
 

こうした海外での事業構想と並行して、『サンウエスパ』では国内でのエネルギー事業も展開していた。難再生古紙であるシュレッダーダストの植物繊維に含まれる細胞壁(セルロース)を酵素で糖化させ、発酵、蒸留させることでエタノールを抽出し、再利用するという計画だ。シュレッダーダストは繊維が短くなるため再生紙の原料には向かず、国内ではほぼ一般廃棄物として処理されているのだ。

エネルギー事業を始めるきっかけになったのが、12年、ある新聞に掲載された 「マリアナ海溝の水深約1万メートルに棲息するエビから、おがくずや紙を効率よく分解する酵素が発見された」という記事を目にしたこと。「これを読み、『古紙再生業者がエネルギー事業に進出する未来って、あるんじゃないか』というビジョンが描けたのです。ただ、実は私が知らなかっただけで、エビの酵素を用いなくても、紙をエタノールに変える技術は昔からあったのですが(笑)」と原さんは振り返る。

その後、原さんは「紙からエタノールをつくれるのであれば、ホテイアオイからでもつくれるのではないか」と思い至る。それまで「リサイクル」にこだわって事業展開をしていたが、見方を変えればリサイクルとは「未利用なものに付加価値をつける」ということだ。

ここで「カンボジア」と「エネルギー」、そして「リサイクル」が結びつき、構想したホテイアオイの事業が17年、JICAによる案件化調査の採択事業となり、約1年間、ホテイアオイからバイオエタノールを抽出する実証実験を行った。

新しい価値を考え続け、
互いに「利」がある未来を。

再利用の出口は一つじゃなくてもいい。実証実験を経て、原さんはホテイアオイの新たな再利用方法を考えている。

カンボジア政府は、ガソリンに3パーセントのバイオエタノールを混ぜて使用する「E3ガソリン」を普及させる方針は示しているが、実際の法整備は進んでいない。カンボジアでは不純物が混ざった燃料も多く売られており、バイオエタノールをつくり、まともに売ったところで価格面で太刀打ちできない。

それならば、ガソリンに混ぜて使うためにバイオエタノールをつくるのではなく、別の使い方をすればいいのではないか。そこで考えたのが、水上生活者の必需品である小型発電機を動かすこと。最近は、エタノールだけで動かせる発電機もあるという。

繁茂するホテイアオイ。
「価値」を見つけることで、これを「資源」にできる。

東南アジア最大の湖であるカンボジアのトンレサップ湖。ホテイアオイによって、水上生活者の交通や漁、水鳥や魚の生態系にも影響を及ぼしている。
東南アジア最大の湖であるカンボジアのトンレサップ湖。ホテイアオイによって、水上生活者の交通や漁、水鳥や魚の生態系にも影響を及ぼしている。

さらには、ホテイアオイの価値を最大化させるためにはどうしたらいいかを考え、行き着いた答えが「酒を造って、売ること」だった。ホテイアオイを原料にクラフトジンを造って販売すれば、付加価値が100倍になる。

原さんは考える。「リサイクルの本質は『価値』にある。価値があるかぎり、ものは形や場所を替えながら再生し続けます。でも、価値がなくなれば、たちまち循環の連鎖は切れて、ゴミとなる。だから私たちの使命は、『価値』を永らえさせることなんです」。

約100万人が水上生活を送るというトンレサップ湖。湖上には住居だけでなく、学校や商店、ガソリンスタンドまである。住民が使うボートは主にガソリンが燃料。将来的にはバイオエタノールを混ぜたものを使うことができるビジネスプランを構築し、湖上に再生プラントを造ることも視野に入れている。
約100万人が水上生活を送るというトンレサップ湖。湖上には住居だけでなく、学校や商店、ガソリンスタンドまである。住民が使うボートは主にガソリンが燃料。将来的にはバイオエタノールを混ぜたものを使うことができるビジネスプランを構築し、湖上に再生プラントを造ることも視野に入れている。

その考えの根底には「相利共生」の思いがある。「一方だけが得をしても共生はできません。たとえば紙。僕らにとっては商品であって、飯の種でも、捨てる人にとってはゴミ。でも、それだとリサイクルは成り立たないから、利益を還元していかないといけないのです。資源とゴミの違いはそこに『価値』があるかどうかなんです」。

左上・シュレッダーダストやホテイアオイからエタノールを抽出するプラント。左下・エタノールを抽出したホテイアオイの残渣。将来、これを堆肥化して農業利用を考えている。中央下・バイオエタノール抽出のさまざまな実験を行っている。右・入社4年目の川合稜太さんが、バイオエタノール製造担当者。『サンウエスパ』に入社したのは、社長の事業構想に共感したから。「山登りをしたり、自然が大好きなので、環境保護に貢献できる事業に携われることを誇りに思っています」と話す。</figcaption>
左上・シュレッダーダストやホテイアオイからエタノールを抽出するプラント。左下・エタノールを抽出したホテイアオイの残渣。将来、これを堆肥化して農業利用を考えている。中央下・バイオエタノール抽出のさまざまな実験を行っている。右・入社4年目の川合稜太さんが、バイオエタノール製造担当者。『サンウエスパ』に入社したのは、社長の事業構想に共感したから。「山登りをしたり、自然が大好きなので、環境保護に貢献できる事業に携われることを誇りに思っています」と話す。

だからこそ、『サンウエスパ』は、時代が変わって不用になったものや、必要とされない厄介者=未利用なものに、新しい価値がないかと考え、形や場所を替えて再生させようと試みる。「リサイクルって、結果的に人に喜ばれること。生ゴミでも価値のあるものに変わるかもしれない。価値を探求して、チャレンジを続けたいと思います」。

こうした「相利共生」の思いとチャレンジ精神の先に、誰もが取り残されないSDGsの目指す世界があるのかもしれない。

❺カンボジア産スパイスやハーブ、ホテイアオイを原料に造ったクラフトジン。❻ジンの試飲会。今後、商品化を目指す。バイオエタノール事業の土台を築くため、『サンウエスパ』は今年、カンボジアで会社の登記を予定。❼カンボジアで売られている酒類。
左上・ジンの試飲会。今後、商品化を目指す。バイオエタノール事業の土台を築くため、『サンウエスパ』は今年、カンボジアで会社の登記を予定。
左下・カンボジアで売られている酒類。
右・カンボジア産スパイスやハーブ、ホテイアオイを原料に造ったクラフトジン。

 

photographs by Yusuke Abe
text by Kaya Okada

本記事は雑誌ソトコト2019年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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原 有匡

はら・ともただ●『サンウエスパ』代表取締役。2011年の入社以前は、世界中を旅しながら、フリーランスで古美術品を輸出入して販売していた。13年、新規事業として「エコファミリー」や海外への古着輸出をスタート。15年、代表取締役に就任。エタノール製造装置導入や、カンボジアでのホテイアオイの資源化事業などを始めた。