下川町の豊かで持続可能な暮らし! ーSDGs未来都市、北海道・下川町が決めた7つのゴール。(2)
2019.06.03 UP

下川町の豊かで持続可能な暮らし! ーSDGs未来都市、北海道・下川町が決めた7つのゴール。(2)

LOCAL

SDGsに取り組む自治体が増えてきているが、その好事例として紹介したいのが、北海道上川郡下川町。
下川町のローカルプレイヤーの取り組みを見てみよう!

下川町のみなさんの豊かで持続可能な暮らし!

■斎藤丈寛さん

下川町役場 森林商工振興課 主査(森林づくり専門員)
www.town.shimokawa.hokkaido.jp

FSC®認証を浸透させ、原木の価値をアップ!
下川町が北海道で初めてFSC認証を取得したのは2003年。FSC認証とは、森林管理協議会が認定する国際認証で、森林環境を適切に保全しながら、地域社会の利益となり、経済的にも持続可能なかたちで生産された木材に与えられ、下川町はすべての町有林、私有林の約8割、町が管理する国有林の一部で取得している。FSC認証は、下川町が進めるSDGsの取り組みの原点とも言えるものだが、「認証を維持して16年が経ちますが、認知度はまだまだ。FSC認証商品を買ってくださる方が増え、原木の価格が上がるよう頑張ります」と、斎藤さんは未来を見据える。

上/切り出したカラマツの前に立つ斎藤さん。右上/FSC認証の森から切り出された木が積まれた土場。木は、町内8社・9工場の木材加工施設へ運ばれる。右下/FSC認証のカラマツ。緑のスプレーが認証の印。「54」という数字は、木の中心を通る直径の最短の長さを示す。
左/切り出したカラマツの前に立つ斎藤さん。
右上/FSC認証の森から切り出された木が積まれた土場。木は、町内8社・9工場の木材加工施設へ運ばれる。右下/FSC認証のカラマツ。緑のスプレーが認証の印。「54」という数字は、木の中心を通る直径の最短の長さを示す。 

Q. SDGsを無理なく続けていくために必要なことは?
A. 下川町の森づくりを知ってもらうこと!

■麻生 翼さん

『森の生活』代表理事・『下川フォレストファミリー』管理営業マネージャー
www.morinoseikatsu.org

「顔が見える木材」の流通を実践しています!
『森の生活』で、下川町産の広葉樹の普及に努める麻生さん。「広葉樹が山で数本採れても、そのためにトラックで遠くまで運搬するのは非効率。ある程度ストックしてから下川町内へ運び出し、製材すれば、広葉樹も流通させられるのでは」と、広葉樹を乾燥させる低温乾燥機を購入し、木材加工工場『下川フォレストファミリー』や木工作家に販売している。麻生さんは、「SDGs未来都市部会」の部会長も務めた。今後は「7つのゴール」を具体的な行動に移していくが、「目標ごとに住民と行政が協力してプロジェクトを進められるようにしていきたい」と意気込む。

左/木材を加工する『下川フォレストファミリー』の委託社員でもある麻生さん。写真はボルダリングのホールド。右上/中学校の技術家庭の教材に、下川町の木を使った本棚キットを提案。右下/板材が立て掛けられた低温乾燥機。広葉樹を低温で1か月間ほどかけて乾燥させる。その板材の価値に惹かれ、数人の木工作家が移住した。
左/木材を加工する『下川フォレストファミリー』の委託社員でもある麻生さん。写真はボルダリングのホールド。右上/中学校の技術家庭の教材に、下川町の木を使った本棚キットを提案。右下/板材が立て掛けられた低温乾燥機。広葉樹を低温で1か月間ほどかけて乾燥させる。その板材の価値に惹かれ、数人の木工作家が移住した。

Q. SDGsを無理なく続けていくために必要なことは?
A. 「7つのゴール」について気軽に話し合うこと!


■臼田健二さん

『クラフト蒼』代表
www.craft-so.com


森のある暮らしと仕事を楽しんでいます。
 『森の生活』の麻生さんに誘われ、下川町に移住した木工作家の臼田さん。「以前はデザイン重視のものづくりで、海外の木も平気で使っていましたが、次第に、『日本にはこんなに木がある。使わないと』と思うようになりました。遠い国から燃料を使い、CO₂を排出して木を運んでくることにも抵抗感を覚え、地元の木を使ったものづくりができる下川町へ15年に移住しました」と笑顔で話す。
 翌年には、森林組合の斡旋で森を購入。ツリーデッキや散歩道をつくり、その過程で出る間伐材を材料にして作品をつくるなど、森のある暮らしを楽しんでいる。

左/下川町木工芸センターを借りた工房で作品をつくる臼田さん。右上/2階のギャラリー。右下/森林組合から50万円で購入した1.6ヘクタールの森。山菜採りやツリーデッキでバーベキューをしたり。
左/下川町木工芸センターを借りた工房で作品をつくる臼田さん。
右上/2階のギャラリー。右下/森林組合から50万円で購入した1.6ヘクタールの森。山菜採りやツリーデッキでバーベキューをしたり。

Q. SDGsを無理なく続けていくために必要なことは?
A.「つくる責任」を意識すること。


■田邊真理恵さん

『フプの森』代表
www.fupunomori.net

北海道モミのエッセンシャルオイルを!
『フプの森』の北海道モミのエッセンシャルオイルづくりは、林内の雪が解ける頃から始まる。町内の林業者によって伐採されたトドマツの葉を譲り受け、持ち帰る。蒸留釜で蒸し、水蒸気を冷却すると、芳香蒸留水ができ、水面に浮くごく少量のオイルを採取できる。それが、持続可能な森から生まれたFSC認証のエッセンシャルオイルだ。
 「ただ、FSC認証を前面に推してはいません。説教じみちゃうから(笑)。森の素晴らしさや商品の魅力に興味を持っていただき、心も体も気持ちよくなれるエッセンシャルオイルとして楽しんでもらいたいです」と田邊さんは微笑む。

左/代表の田邊さん(左)とスタッフの安松谷千世さん。購入した森で。右上/北海道モミのアロマミストやアロマウォーター、エッセンシャルオイルなど。右下/できるだけ北海道産、国産の素材でつくる「NALUQ」シリーズ。
左/代表の田邊さん(左)とスタッフの安松谷千世さん。購入した森で。
右上/北海道モミのアロマミストやアロマウォーター、エッセンシャルオイルなど。右下/できるだけ北海道産、国産の素材でつくる「NALUQ」シリーズ。

Q.SDGsを無理なく続けていくために必要なことは?
A.まずは、森を好きになって!


■平野優憲さん

『下川町特用林産物栽培研究所』所長
www.town.shimokawa.hokkaido.jp

木質バイオマスの暖房で育ったシイタケです!
 下川町一の橋地区は人口約130人、高齢化率が50パーセントを超える小さな集落。地域コミュニティの維持や地域雇用の創出を目的に、2013年から「一の橋バイオビレッジ構想」がスタートした。地域おこし協力隊隊員が運営する『駅カフェ イチノハシ』や26戸の集住化住宅が建てられ、シイタケ栽培も始められた。町役場職員の平野さんが担当に指名されて5年が経つが、「ようやくシイタケ栽培のコツがわかってきました」と笑顔で話す。努力の結果、年間92トンのシイタケを生産するまでに。道北のスーパーや町内の五味温泉やスーパー、飲食店に卸している。

左/下川産シイタケを栽培する平野さん。右上/森から出た林地残材をチップにして燃焼する木質バイオマスボイラー。シイタケ栽培のハウス、集住化住宅、福祉施設、コミュニティセンターなどの暖房を賄う。右下/シイタケは90日間で4回収穫。役目を終えた菌床は堆肥になる。
左/下川産シイタケを栽培する平野さん。右上/森から出た林地残材をチップにして燃焼する木質バイオマスボイラー。シイタケ栽培のハウス、集住化住宅、福祉施設、コミュニティセンターなどの暖房を賄う。右下/シイタケは90日間で4回収穫。役目を終えた菌床は堆肥になる。

Q. SDGsを無理なく続けていくために必要なことは?
A. 働き手を確保すること。

 

■山田香織さん

『SORRY KOUBOU』代表
http://sorrykoubou.jp

防腐剤フリーのハーブ化粧品を手作りで!
 『SORRY KOUBOU』代表の山田さんと小松佐知子さん。東日本大震災を機に衣食住の自給自足を目指し、また、化粧品づくりを始めるために、環境未来都市でエネルギー自給に取り組んでいた下川町へ移住した。17年に起業し、自分たちの畑で栽培したハーブを使い、化粧水のためのハーブチンキを製造・販売している。「一般の化粧水の9割以上は水。流通させるには防腐剤が必要です。だったら、水はお客様にご用意いただき、ハーブチンキだけを販売すれば防腐剤は不要になります」と新しい方法で化粧水を販売。共感を呼び、多くのリピーターを獲得している。

左/学生時代から友人だった、福島県出身の山田さん(左)と岩手県出身の小松佐知子さん(右)。地域おこし協力隊隊員を経て起業。手づくりの店舗で、手づくりのハーブ化粧品を販売する。右上/広さ6畳の店舗。右下/ハーブチンキは8種類。
左/学生時代から友人だった、福島県出身の山田さん(左)と岩手県出身の小松佐知子さん(右)。地域おこし協力隊隊員を経て起業。手づくりの店舗で、手づくりのハーブ化粧品を販売する。
右上/広さ6畳の店舗。右下/ハーブチンキは8種類。

Q.SDGsを無理なく続けていくために必要なことは?
A.人のことを思える心のゆとり。

 

■河野文孝さん

『森のキツネ』代表
http://morino-kitune.com

見向きもされない木から森の魅力を伝える。
 下川町に移住し、家具やカトラリーをつくっている『森のキツネ』代表の河野さん。「下川町はつくり手と森の距離が近いので、森に足を運び、木を見る機会が増えました。すると、新たに見えてくるものがあるのです。例えば、バクテリアによって美しく変色した木とか。そんな、市場では見向きもされないけど気になる素材から木工品をつくり、皆さんに下川の森の魅力を伝えたいです」。
 6月には、壊れた家具を修理したり、手入れ方法を教える「家具乃診療所」も開設予定だ。「脚が折れても『直してほしい』という気持ちを大事にしたいから」と話す。

左/埼玉県出身で、東京で指物づくりを、北海道の職業訓練校で家具づくりを学び、修業を経て下川町へ。右上/家具を磨くための油を搾る下川のクルミ。右下/樹皮など、自然のかたちが残るデザインを追求する。
左/埼玉県出身で、東京で指物づくりを、北海道の職業訓練校で家具づくりを学び、修業を経て下川町へ。
右上/家具を磨くための油を搾る下川のクルミ。右下/樹皮など、自然のかたちが残るデザインを追求する。

Q.SDGsを無理なく続けていくために必要なことは?
A.効率を度外視した人間関係。

 

■立花祐美子さん

下川町産業活性化支援機構 タウンプロモーション推進部 移住定住コーディネーター
www.shimokawa-life.info

住民のつながりを生む「タノシモカフェ」!
 『下川町産業活性化支援機構』は地域課題に取り組む任意団体で、その取り組みを実践するのが、「タウンプロモーション推進部」だ。移住促進や起業、地域総合商社、人材バンクなどの機能を果たすなか、力を入れている企画のひとつが、「タノシモカフェ」。下川町への移住者、地元住民や下川町への移住を検討する人たち、下川町のファンなど40人ほどが参加する、月に1回のポットラック形式の飲み会だ。「ジンギスカンパーティやヤマメ釣り、女子会など参加者の投票で行う特別編も用意して、楽しく交流できる工夫をしています!」と、立花祐美子さんは笑顔で話す。

 左/まちおこしセンター『コモレビ』の地場産品コーナーを案内してくれる立花さん。<br />
右上/「タノシモカフェ」の様子。「下川の仲間になってください。背中を押しますよ!」と一見さん大歓迎。右下/『コモレビ』には「下川人財バンク」の求人票も。
左/まちおこしセンター『コモレビ』の地場産品コーナーを案内してくれる立花さん。
右上/「タノシモカフェ」の様子。「下川の仲間になってください。背中を押しますよ!」と一見さん大歓迎。右下/『コモレビ』には「下川人財バンク」の求人票も。

Q.SDGsを無理なく続けていくために必要なことは?
A.町内外の人がつながること!

 

■立花実咲さん

下川町産業活性化支援機構 タウンプロモーション推進部 広報・編集者
www.shimokawa-life.info

やりたいことを実現する「森の寺子屋」!
 立花実咲さんが運営を担当する「森の寺子屋」は、自分がやりたいことをメンバーや住民に発表し、共有しながら、実現に向けて動き出したり、応援しあったりするプロジェクト。「畑を借りて野菜を育てている女性と、町内の食料自給率を高めたいと考えている女性が出会ってマルシェを開催したり。仲間同士の連携が生まれつつあります」と立花さんは喜ぶ。
 また、下川町の資源を生かして新しいナリワイをつくる起業家を地域おこし協力隊として募集し、就業をサポートする「シモカワベアーズ」は3年目を迎え、事業化に向けて活動が進められている。

左/「森の寺子屋」を運営する立花さん。「シモカワベアーズ」のキャラクターは、ヒグマ!右上/月に1回、半年間かけて開催される「森の寺子屋」。左中/「シモカワベアーズ」1期生の山田泰生さんは、エゾシカ肉の利活用に挑戦中。左下/2期生の山口駿人さんは、下川産の木材を使った出張DIYを実践中。
左/「森の寺子屋」を運営する立花さん。「シモカワベアーズ」のキャラクターは、ヒグマ!
右上/月に1回、半年間かけて開催される「森の寺子屋」。左中/「シモカワベアーズ」1期生の山田泰生さんは、エゾシカ肉の利活用に挑戦中。左下/2期生の山口駿人さんは、下川産の木材を使った出張DIYを実践中。

Q.SDGsを無理なく続けていくために必要なことは?
A.自分もワクワクすること!

photographs by Hiroshi Takaoka
text by Kentaro Matsui

本記事は雑誌ソトコト2019年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。