Shirokumaカエルの婚約指輪
2020.09.04 UP

母や祖母の指輪を「今」使えるデザインに。福岡「Shirokuma」のジュエリー・リフォーム

SUSTAINABILITY

輝くダイヤモンドを隣でそっと見守るカエル。とある男性がプロポーズのためにオーダーしたエンゲージリングで、男性が母から譲り受けた婚約指輪をリフォームしたものだ。手がけたのは、福岡市の結婚・婚約指輪、ジュエリー・リフォームの専門店「Shirokuma」。親や祖父母がつけていた古い指輪や家に眠っていたジュエリーを、いま身につけてもセンスよく映えるものにリデザインしている。「そもそも宝石は受け継いでいくものなんですよね」と話す「Shirokuma」の宮田 要さん・由紀子さん夫妻を取材した。ジュエリー・リフォームで実現できる、サステナビリティの形とは。

「精緻」と「かわいい」が同居するデザイン

「Shirokuma」が店を構えるのは、福岡市天神の西通り。目の前には老舗百貨店、周辺にも名だたる宝石店が建ち並ぶいわばジュエリー激戦区だが、着実に顧客を掴み、2020年4月でブランド創業10周年を迎えた。
代表でデザイナーの宮田 要さんが手がけるジュエリーは、精巧なつくりの中に“かわいらしさ”が同居する。中でもクマやリス、ハリネズミなどがデザインされた「ミクロ動物園」シリーズは、どれも表情や動きがリアルで愛らしく、思わず話しかけてしまいそうなほどだ。
そのデザイン性と技術力が信頼され、オーダメイドはもちろん、ここ数年はリフォームの依頼も増加。現在は月10件ほどがリフォームで、これまでに手がけた総数は1000を超えるそうだ。

Shirokuma店内
「Shirokuma」のショップ兼アトリエ。(c)Shirokuma

 

受け継がれるジュエリーで家族の想いを形に

リフォームでは、依頼者の家族が持っていた古いジュエリーや、家に仕舞い込んでいたものをベースにし、今の時代に身につけられるものに作り変える。デザインのイメージは依頼者の好きなものや、エピソードを元に形にしたものが多い。
主に由紀子さんが依頼者と話して要望を聞き、技術的な点を要さんと相談しながら、デザインを決めていく。
冒頭の“カエルのエンゲージリング”は「お客様のお母様の指輪をベースに婚約指輪を作りたいと。元の指輪は昔ながらの立爪のダイヤモンドリングでしたが、立爪を削り出して今っぽいフォームに仕上げました。奥様になられる女性の好きなカエルをあしらい、指輪の内側にはお客様が考えられた『同じ家に帰る』という意味のメッセージを彫っています。とても喜ばれて、プロポーズも成功したそうでよかったです」と話す由紀子さん。
結婚20周年を記念した結婚指輪のリフォームでは、野球で結ばれた家族の絆を表現するため、中央に野球ボールを配置した。「お客様からは『この指輪を見るたびに、家族と野球の大切な日々を思い出せます』というお声をいただきました」と要さん。依頼者の想いを形にでき、仕上がりに喜んでくれた時が何より嬉しいと二人は言う。

Shirokuma立て爪婚約指輪
婚約指輪のリフォーム。昔ながらの立て爪のリング枠を削り出して製作。(c)Shirokuma
Shirokumaボール結婚指輪
結婚20周年の節目にリフォームした結婚指輪。家族がひとつになって取組んだ野球のボールが仲間入り。ボールの裏には2人の息子さんのイニシャルが刻まれている。(c)Shirokuma
Shirokuma
婚約指輪のリフォーム。「普段からつけられるように」とカジュアルな雰囲気に仕上げた。(c)Shirokuma

 

要望を叶えるために、可能性の範囲を決めない

「お客様の要望をどうにかして形にしようっていうことは、昔から大事にしています」と要さん。このスタンスは独立前、ジュエリーショップのデザイナーとして働いていた頃から変わらない。独立後、なんとか形にしようと方法を模索する中で独自のやり方を生み出し、技術的な選択肢は増えた。
例えば指輪の場合、宝石だけ元のものから取り出し、リング枠は店頭にあるデザイン枠を新たに見つけてきてリフォームすることが多いが、「Shirokuma」では元のリング枠を生かしたリフォームも行なっている。
「お店のオープン当時、おばあさまの指輪をお持ちになられたお客様で、元の枠も生かして欲しいと言われたんです」と由紀子さん。元の枠を生かしながら今のデザインに作り変えることはとても難しく、時間やコスト面で考えるとなかなか出来ないのだという。「元の形があるから、削れる範囲が決まってしまっている。その中でどうデザインするか。削りすぎてしまってもいけないし」と、要さんも技術面の難しさを語る。
このリング枠を生かしたリフォームを始めたことで、提案の幅が広がり受注も増えたのだとか。「できる範囲を自分で決めない。やったことがないことでもやってみて、要望を叶えられることが一番のやりがいですね」と要さん。

 

写真:Shirokuma
文:西 紀子

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