くらすクラス(東京都稲城市)ー ソーシャル系大学案内 第42回
2019.06.03 UP

ソーシャル系大学案内 くらすクラス(東京都稲城市)ー ソーシャル系大学案内 第42回

SOCIAL

ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。今回はJR南武線稲城長沼駅の高架下で、JR東日本と地元のキーパーソンがつながり、2016年に始まった、みんなのための、みんなでつくる多世代交流の場『くらすクラス』を取り上げる。
訪れたのは、月に1回自分の好きな食べ物を1品持ち寄り、食卓を囲む「もちつもたれつ食堂(=もちもち)」。理事の岡雅代さん、小林攻洋さんほか、賑やかで楽しいメンバーが迎えてくれた。

人と人とをつなげる、多世代交流の拠点。

くらすクラス

『くらすクラス』は、川崎と立川の間を多摩川沿いに走る南武線の南多摩駅から矢野口駅間の高架化事業がきっかけに始まった。まちの中心となる稲城長沼駅前と高架下の空間を、どのようにすれば地域の人に活用してもらえるか。当時のJR東日本八王子支社担当は、構想段階から地域の方々とともに企画を考えることで、地域に根づく場となると考え、まずはまちのキーパーソンたちを訪ねるところから始めたという。古民家カフェを営む鈴木萌さん、鈴木さんのお母さんと共に文庫の会を運営していた岡雅代さん、鈴木さんが強く推薦する『コレクティブハウス聖蹟』オーナーで元・市役所職員の小林攻洋さん。行政サイドとも、駅前に賑わいをもたらすための拠点として一緒にまちを盛り上げていく方針で一致し、「いなぎ発進基地ペアテラス」を設置することが決まり、学びをきっかけに多世代が集まれる場、というアイデアが3年前、現実のものとなった。現在、『くらすクラス』は、親子ヨガ、和菓子づくり、味噌造り、演劇、デジカメ教室など、まちの先生がまちの人に教えるプログラムを主宰し、子どもたちが雨の日も安全に遊べる「くらす広場」を中心に、多世代が自然と集まる場所として多摩地区に知られる存在となっている。

この日開催された「もちつもたれつ食堂」も、「くらす広場」で井戸端会議をしたいと考えた岡さんが企画した。参加した子育て中のお母さんが、「久しぶりに大人と話をしました。人と話をするのってこんなに楽しいんですね」と涙を流して話す様子を目の当たりにし、定期的に開催しなければ、と思ったという。3月末の夜、集まったのは大人13名と子ども2名。テーブルには手作りの漬物や卵焼き、旬のグリーンピース入りポテトサラダなどが並ぶ。仕事帰りに閉店間際のパン屋さんから残りを全部買ってきた人、前日から仕込んだ生地で本格的なキッシュを毎月焼いてくる常連の男性もいる。ほぼ欠かさず参加している小学4年生の女の子は、熱が出た日も「もちもち」に行きたいと言い親を困らせたという。「食べることとしゃべることが一番いい」と、理事の小林さん。引っ越してきたばかりで地域とのつながりを求めている人、地元育ちだけど新しい人に出会いたいという人、親父の会のネットワークをつくり出してきた地域の有名人などが、駅でポスターを目にしたり、噂を聞きつけたりして集まってくる。

この日もおしゃべりがいつの間にか企画会議となり、この日がいいとか、あの人がいいと話がどんどん広がっていった。一度来ると、誰かの知り合いが自分の知り合いになっていく。人と人とをつなげる場所として、『くらすクラス』は多世代交流の拠点となっている。

一般社団法人いなぎくらすクラス 

東京都稲城市東長沼2-516-2
HP:www.kurasu-class.me

 

illustration by Verve Iwashita

本記事は雑誌ソトコト2019年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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坂口 緑

さかぐち・みどり
明治学院大学社会学部教授。2000年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。研究領域は生涯学習論。共著に『ポストリベラリズム』、共訳書にアーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド』など。