鹿児島市 森満誠也 | 13 | NEXTスーパー公務員
2019.06.05 UP

鹿児島市 森満誠也 | 13 | NEXTスーパー公務員

WORK

鹿児島市建設局建築部建築指導課指導係で、違反建築物の指導や道路の位置指定を担当する建築技師。職務の枠組みを超えて、公共建築物の利活用に取り組んでいる。鹿児島市出身、鹿児島市育ち。1988年生まれ。趣味は、鹿児島県内の家族風呂巡り。

公共施設の“お医者さん”として鹿児島市で建築技師を務める森満さん。
建物が人に使われる仕組みを自ら生み出し、コミュニティを育てている取り組みを紹介します!

公共施設の“お医者さん”として、
人に使われる場づくりに挑戦。
小さな一歩を自ら踏み出すことで
まちに新しいコミュニティを生み出す。

 2019年4月、鹿児島県を象徴する桜島が目の前に広がる、鹿児島県庁の18階展望ロビーで、一つの企画が生まれました。今年J3からJ2に昇格したサッカーチーム・鹿児島ユナイテッドFCの試合のパブリックビューイングです。そこには、家族でくつろげるように、子ども向けのキッズスペースがあったり、バルーンアートをつくってくれる人がいたりしていて、家族の笑顔であふれていました。その仕掛け人が、今回紹介させていただく、鹿児島市役所の森満誠也さんです。森満さんは、公共施設を建設したり維持補修する、いわば公共施設の“お医者さん”のような建築技師。その森満さんが、なぜパブリックビューイングを仕掛けたのか、その取り組みを通じて、建築技師という仕事の可能性や、何かを始めるときに一歩踏み出すコツについてお伝えできればと思います。

建物が人に使われるために
建築技師は何ができるか。
ワークショップで知った
自ら動くことの大切さ。

 森満さんは、2012年に鹿児島市役所に建築技師として入庁。1、2年目は、建築課に配属され、公衆トイレの新築や公民館改修工事の設計など、公共施設の建築や設計を担当。3、4年目は同じ建築課で、公共施設をどうやって維持保全するか、その計画づくりを担当しました。市が持っている公共施設の全体を眺めながら、今ある施設をどう維持していくか、どう財政的負担を少なくしていくかを考えていく中で、森満さんは、あることに気づきます。「建物は人に使われるために建てられているのだとしたら、僕ら建築技師もどう維持していくかだけではなく、活用のあり方も含めて考えていかなければいけないんじゃないか」。そう考えて、職場内でもさまざまな活用の提案をしていましたが、なかなか実現には至りませんでした。そんな時、まちの空き家を活用する事業プランをつくるワークショップ『リノベーションスクール』を福岡県北九州市で展開していた徳田光弘さんと出会い、スクールに参加。そこで、実際に動いている全国の公務員や事業者の方々と出会い、多くの事例や課題、そして何よりも動いてみることの大切さを知りました。

朝会を通じて知った
人の集まる場のつくり方。
人を巻き込みながら
力まず一歩踏み出すこと。

 いざ自分で動こうとすると、いろんなものが違って見えてきました。まずは一歩踏み出すことを考え、できるだけハードルが低くチャレンジできる場所を探すことに。ニーズはあるかと聞かれることもあるけれど、大事なのは、自分がやりたいこと、やれることを探すこと。そういう視点で見た時に目に留まったのが、毎日何気なく見ていた市役所の前の長屋でした。木造長屋の密集地帯で、権利関係が複雑なため開発は手付かずのままでした。13人の仲間と一緒に借り、その地域に住んでいるおじいさんおばあさんたちの集まる場所をつくれないかと、朝会を立ち上げました。朝会では、集まってくれるみなさんにコーヒーを振る舞います。毎週金曜日、朝7時15分から1時間。コーヒー代をもらうのではなく、みんなで何かを持ち寄る仕組みに。鍋いっぱいの豚汁に、タッパーいっぱいのサンドイッチ。おすすめの本や演奏会のチケット、血圧を測ってくれるコミュニティナースまで。お金の関係じゃないからこそ、どうしたら来ている人たちが喜んでくれるか、参加者自身が考えてくれる温かい場所が生まれました。今では、毎週30人近くの方が集まってくれるようになり、初めたときはまったく想定していなかった人がつながる場が生まれています。やりたいこと、やれることを、力まず一歩踏み出してやることが大事だと改めて感じた瞬間でした。
 朝会の開催以外にも、もともとやりたかった公共施設でも何かを試してみたい。森満さんがそんな時に出合ったのが、鹿児島県庁の展望ロビーでした。このロビーを、例えば自分が好きなサッカーの試合をみんなで観戦できる場所にできたら、おもしろいんじゃないか。でも県庁の誰に話せばいいのかまったくわからない。できる方法はと考え、Facebookの投稿で呼びかけてみると、「あの人なら紹介できるよ!」といったメッセージが次々と届きました。結果、紹介をされた担当者と話してみると、スポーツの力で地域の活性化を図ろうとしている鹿児島県のニーズと合致することがわかり、鹿児島ユナイテッドFCの試合のパブリックビューイングを開催できました。自分たち公務員がまず実践することで、もっといろんな活用方法を考えてくれる市民の方々が増えていくんじゃないか。森満さんはその可能性を感じています。
 森満さんは、この春、また新たな一歩を踏み出しました。鹿児島市が推進する育休を1か月取得。きっかけは、「お前がすごいんじゃなくて、お前の奥さんがすごいんだからな」という周りの言葉。そういえば奥さんが家事をやってくれているけど、どれだけ大変かわかっていない。それならと実践し、育児がいかに大変かを身をもって感じていると言います。奥さんへの感謝とともに、もっと奥さんにも優しく家族で楽しめる場所をまちに増やしていかないと。そう考えています。
 何事も力まずに、やってみることが大事。そして、できることをやろうとすれば、ハードルは意外と低く、一歩踏み出すだけで景色が変わります。決してすごいビジョンと、圧倒的な行動力が世界を変えていくのではなく、小さな、けれど確実な一歩が世界を少しだけよくしていく。その一歩がとっても大事だなと思える取材でした。ぜひ、皆さんも力まず、小さな一歩を。

\市長は見た/
新たな試みにチャレンジし続け、
地域の発展に欠かせない存在に。

鹿児島市 森 博幸市長

 鹿児島市は今年、市制施行130周年という大きな節目の年に当たり、本年を「“選ばれる都市”創造元年」と位置づけ、市民や国内外の多くの人々から選ばれる都市の創造に積極果敢に取り組むこととしております。
 森満さんのように、市民と気軽に交流できるイベントを企画し、そのつながりからさらなる一歩を踏み出し、新たな試みに挑戦し続ける職員は、地域の発展に、ひいては“選ばれる都市”の創造に欠かせない存在だと思います。これからもチャレンジし続け、本市の発展に貢献することを期待しています。
 また、私自身も「イクボス」となることを宣言しており、男性職員にも積極的に子育てにかかわってもらいたいと思っております。職員が育児にも全力投球できるよう、仕事と育児の両立できる環境づくりを推進してまいります。

text by Masaaki Waki
illustration by Masaki Takahashi

本記事は雑誌ソトコト2019年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

キーワード

脇 雅昭

わき・まさあき
1982年生まれ、宮崎県出身。2008年に総務省に入省。神奈川県庁に出向し、現在は観光部長と政策推進担当部長を兼任。 47都道府県の地方自治体職員と国家公務員が集まる「よんなな会」を主宰。「47都道府県の大人たちを仲間に」をコンゼプトに、民間企業の経営層はじめ国、自治体の公務員など「誰かのために何かできる」セクターを超えた仲間づくりを進めている。http://47kai.com