災害時こそ多様性に目を向けよう。やさしい避難所づくりに必要なコト
2020.09.15 UP

災害時こそ多様性に目を向けよう。やさしい避難所づくりに必要なコト

DIVERSITY

緊急時こそ浮き彫りになる、多様性を尊重できる心

Hinanjo(避難所)Unei(運営)Game」の頭文字を取って、HUG。私は、自分が所属する消防団の研修でHUGを体験した。これはカードを使用したシミュレーションゲームだ。カードには避難してきた人の性別、年齢、国籍やその人特有の事情が書かれている。カードを次々にめくっていきながら、避難所として体育館や教室に見立てた平面図に避難者を適切に配置し、避難所で起こる様々な出来事やハプニングにどう対処するか、チームで議論しながら進行していく。

HUGのカード
大きな紙の上に避難者を配置したり、ホワイトボードを掲示板に見立てたりなど、多数の選択を同時進行しなければならない。

私が経験した設定は、大規模地震が起こり、避難所に住民がどんどんとなだれ込んでくるような事態。てんやわんやになりながらも、自分たちが正しいと信じる判断基準でゲームを進めていった。中には要配慮者と呼ばれる、特別な事情を持った人も現れるため、その度に頭を悩ませたのだった。

しかし、今は現実だ。もちろん状況は異なるし、幸いゲームでやったときのような深刻な事態ではない。とはいえ、一時的にも見知らぬ人たちと共同生活を余儀なくされる。数日間、数週間など、長期的な避難生活を送らなければいけないかもしれない。命が一番大事なのは言うまでもないことだ。だからこそ、「わがまま」とも捉えられそうなことを有事のこの場で発言することは、小心者な私にはできなかった。

もし私に大切な家族であるペットがいて、一緒に避難所には入れないと言われた時、どうしたらいいのだろう?
もし私が難聴者だったら、ラジオの音量を上げてほしい、ラジオの前のスペースを譲ってほしいと言えるだろうか?
もし私が性別不和を抱えていたら、男女別の部屋に分けられたときに事情を話せるだろうか?

ゲームではカードに書かれているが、避難所では自己紹介もしない。お互いのことが分からないのが前提の中で、どこまでお互いを思いやることができるのだろう。社会的なマイノリティを持つ人、生活する上で何らかの支援を必要とする人など、必ず周囲の人の理解と協力が不可欠となる。多様なバックグラウンドを持つ人同士が緩やかに混ざり合う避難所という空間こそ、多様性を尊重できる心持ちが試されるのではないかと思う。ゲームのように白か黒では答えが出せなくとも、グラデーションの選択をできるかどうかが大切だ。

ただでさえ不安な災害時。皆が安心して災害を乗り越えられる“やさしい避難所”をつくるには、気さくに話しかけてくれたおばあちゃんのような少しのお節介と、多様な背景を慮ることのできる想像力が必要なのかもしれない。ダイバーシティな社会を実現するための縮図がここにある気がした。

文:Kyosuke Mori

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