出荷できない規格外野菜を大量救出!チバベジが教えてくれる、自然なおいしさの魅力
2020.09.22 UP

出荷できない規格外野菜を大量救出!チバベジが教えてくれる、自然なおいしさの魅力

LOCAL

 私たちの生活にも身近な「食品ロス」の問題。コンビニやスーパー、家庭といった消費者に近いところでの影響が大きいと思われがちですが、実は農作物などが出荷される前から始まっています。そんな生産段階で大量に発生する食品ロスの削減を目指し、千葉県で地元農家のおいしい規格外野菜の買い取りと販売を中心に活動する「チバベジ」。代表の鳥海孝範さんに、チバベジの取り組みについて、そして今起きている食品ロスの問題についてお話を伺いました。

チバベジ
「チバベジ」を運営する、一般社団法人 野菜がつくる未来のカタチの鳥海孝範さん(右)と、安藤共人さん(左)。

800kgの廃棄梨からスタートした、チバベジ。

 昨年9月、千葉県に大きな被害をもたらした台風15号。この台風の被害に遭った地元農家の支援をきっかけに立ち上がったのが「チバベジ」だ。台風被害の直後から活動を始め、現在も地元農家で出荷できなくなってしまった野菜の買い取り・販売をメインにしつつ、今年4月からはオンラインイベントをスタートするなど、さらに活動の幅を広げている。

 活動のきっかけは、鳥海さんが台風被害で出荷できなくなった梨を800kg買い取ったこと。SNSを通じて出会った梨農家では、猛烈な風で未完熟の実が木から落ちてしまい、約1トンもの梨が廃棄されようとしていた。

 「農家さんは『完熟前なので加工して食べてください』と言ってましたが、生で食べてもとってもおいしい梨だったんです。これはもったいないなと思って、その時はただ普通に買って帰って、知り合いづてで販売しました」と鳥海さんは振り返る。

チバベジ_梨
チバベジの始まりとなった梨農園から、1年ぶりに鳥海さんのもとへ連絡が届き、今年も出荷できない梨を引き取った。

 このままでも充分おいしいのに、本当にこれが捨てられるべきなのか?――そんな疑問と同時に、「もったいない」という率直な気持ちが鳥海さんを動かしていた。そうして、このままでは廃棄されてしまうという梨を800kg購入。自身が千葉県佐倉市で経営するゲストハウス・おもてなしラボで販売すると次々に売れてゆき、2〜3日で完売になった。「お役に立てれば」と購入してくれた地元の人たちも、「おいしい」と喜んでくれた。

 この梨をきっかけに、その後も廃棄になってしまうトマトを買い取り、販売。こうして地元農家と関わり合ううちに、今の農業システムが抱える課題や、野菜の生産過程で発生している食品ロスの問題が見えてきた。このままでは千葉の、そして日本の農業が持たない。活動を続けながら、持続可能な農業の仕組みづくりの必要性を感じていた。

 そうして最初の活動から約1ヶ月後の昨年10月、早くも「一般社団法人 野菜がつくる未来のカタチ」を立ち上げ、チバベジとしての本格的な活動をスタート。継続的に千葉の農業を支えるべく、徐々に仲間を増やしながら、現在も精力的な活動を続けている。

チバベジ_ロゴ

相次ぐ災害や異常気象によって増える、規格外野菜。

 チバベジの活動を始めてから、ちょうど1年が経つ。昨年9月の台風から始まり、年明けからは新型コロナウイルスや度重なる異常気象の影響で、チバベジの活動はこの1年間休まることがなかった。特にここ1〜2ヶ月は、出荷できないという野菜の相談が、毎週のように来ているという。

 チバベジにレスキューの依頼が来る野菜には、大きく分けて3つの理由がある。

  1. 収穫した野菜のうち、買い取りの規格に満たず出荷できないもの
  2. 災害により、傷や虫食いの痕がついたり、完熟する前に木や枝から落ちてしまったもの(例:台風、水害など)
  3. 何らかの社会的な理由により、需要が大きく低下し出荷できなくなってしまったもの(例:新型コロナウイルスの影響による需要減少など)

 通常であれば「1」のように、収穫した中で規格に満たなかった野菜を買い取ることが活動のメインになる。しかしこの1年間は、次々にやって来る台風や梅雨の長雨と豪雨、夏は猛暑が続いたことによる雨不足、さらには新型コロナウイルスの影響で飲食店や学校給食など至るところでの大幅な需要減少……。本当にさまざまな要因によって、出荷できない野菜が大量に発生している。

救出できたのは、わずか全体の10分の1。もっと出口を増やしたい

大根レスキュー

 今年4月には、約300本の大根を買い取った。雨が続いた影響で畑が水没し、表面を虫に食べられ出荷ができなくなってしまった大根だ。大根自体は大きく立派で、皮を厚めに剥いてその表面だけ取り除けば、おいしく食べられる。1本1本が大きく育っていただけに、その運搬も重労働だった。苦労しながらおもてなしラボへ持ち帰ったものの、冬のイメージが強い大根の販売にも苦戦。持ち帰った300本はなんとか完売したが、実際はさらに多くの大根が廃棄されていたのだという。

「本当は、全部で3000〜4000本くらいあったらしいんです。ただ、僕たちが救出できたのは300本程度。僕らが販売するだけじゃなくて、出口がもっときちんとあれば全部ロスすることなくできたはずで。今でも、加工品にするとか、普段キッチンカーで販売しているスムージーの材料にしたりしてますが、そういう出口をどう作っていくかが今の課題です」

チバベジ_キッチンカーでスムージー販売

 野菜がスーパーに並ぶ以前に、生産者の元で廃棄されている野菜は大量にある。このときの大根は、自然災害によるイレギュラーなかたちで出た廃棄野菜ではあるものの、災害の多い日本では日常茶飯事の光景だろう。普段の生産の中でも、全体の約3割は形や大きさなどの面で規格に満たない野菜ができるのだそう。そしてその3割の野菜たちは、「規格に満たないから」「見た目が良くないから」といった理由で出荷できなくなってしまう。

「今出ている食品ロスの数字って、産地でロスされたものは入っていないはずなんです。国としても『流通に乗った食品に対してどれくらいロスしたか』というのは把握しやすいけど、流通前の廃棄を数値化するのは難しい。でも今は天災とかが増えて、産地での廃棄も増えているのが現状です」

 チバベジのSNSを見ていると、日々レスキューされた野菜が写真とともに紹介されている。そこに写る野菜たちは、どれも瑞々しく色鮮やか。そんな写真を眺めながら「こんなにおいしそうな野菜が捨てられてしまうの? しかもこんなに大量に?」と思わず驚いてしまう。そんなふうに私たちからは見えにくい、野菜が店頭に並ぶまでの過程においても、大量の食品ロスは起きているのだ。


規格外の野菜は、おいしくて栄養もたっぷり!

 こうした廃棄の主な原因は、作った野菜が“規格外”になってしまうこと。野菜の流通は、長さや太さ、重さなどさまざまな項目において基準が定められ、それに沿う野菜が出荷される。こうした規格は主に形や見た目の基準が定められているだけで、野菜の持つ栄養価や味は変わらない。むしろ、規格外の野菜のほうがおいしいこともある。

「トマトは店頭に並ぶ瞬間に赤くなるように、農家さんは青いトマトを収穫するんです。それは、『トマトは赤いものだ』っていう僕たちの固定観念に応えるため。でもそれっておいしいわけがなくて。きちんと枝についたまま完熟したほうがしっかり栄養が入るので、甘くておいしいはずなんです。つまり僕たちは、本来のあるべき姿ではない野菜を食べておいしいと言ってる。でも違うんだよっていうことは、きちんと伝えていきたい」

トマト

 そう鳥海さんが語る通り、私たち消費者が抱える勝手なイメージによって、野菜の味や栄養を最大限に引き出せないまま食べていることもしばしば。食品のスムーズな流通を実現しているその裏側には、こんなデメリットもあるのだそう。

Miho Aizaki

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