黄金湯 銭湯による、まちの暮らし方革命。
2020.10.14 UP

連載 | SUSTAINABLE DESIGN 黄金湯 銭湯による、まちの暮らし方革命。

SUSTAINABILITY

  東京の銭湯は、すごいスピードで減っていて、今やピーク時の2割しか残っていない。内風呂の普及率は90パーセント以上という高水準なので、このままだと近い将来に銭湯は絶滅する。一方で、銭湯ファンは多いが、彼らは日常的に銭湯に通っているわけではない。つまり、銭湯を再生するということは、国民の公衆衛生を支える場を維持することであり、同時に銭湯に日常の中で皆が通い出すような新しい試みが必要ということでもある。

 今回紹介するのは、『黄金湯』という東京墨田区の錦糸町駅近くでリニューアルされた老舗の銭湯である。デザイナーの高橋や建築家・長坂らの手による空間やグラフィックが最高に格好よい。実際に入浴してみると、滑りにくさや身体に触れる部分の清潔感にこだわったつくりの優しさが随所に感じられてくる。そうした入浴体験の質の高さだけでなく、立ち飲みができるバーや簡易宿所を兼業するなど、運営のビジョンも挑戦的である。そうした挑戦のおもしろさが集約して現れているのが、「ナカソト番台」とでも呼ぶべき番台の在り方で、銭湯の受付、ショップ、カウンター・ビアバー、レコードDJブース、簡易宿所の宿泊受付の5役を兼ねている。一番の収益源であるはずの浴室ゾーンを縮め、「ナカソト番台」を実現したことからも店主の意気込みが伝わってくる。

 内風呂があるのに毎日のように銭湯に行く。朝サウナに行ってから仕事をする。イベントのついでに風呂に入る。風呂が混んでいるからカウンターでビールを飲んで待つ。レコードのDJプレイを聞きながらゆっくりとサウナに入る。

 まちの暮らし方を、楽しく、静かに革命していく、そんな前衛的な銭湯である。東京の未来のビジョンを示す“新名所”になることは、間違いなさそうだ。

kobganeyu
©yurika kono

『黄金湯』
住所:東京都墨田区太平4丁目14-6 金澤マンション 1F
改修年: 2020年(施工年1932年)

©yurika kono

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藤原徹平

ふじわら・てっぺい
建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。