公民館と「オンライン公民館」(全国)
2020.10.17 UP

公民館と「オンライン公民館」(全国)

SOCIAL

 ソーシャルでエシカルな関心をもつ人を惹きつける、街の中に広がる学びの場「ソーシャル系大学」。新型コロナウィルス感染拡大による「新しい生活様式」の提案は、学びの世界にも変化をもたらしている。第二次世界大戦終戦直後から、地域で大切に維持されてきた学びと集いの場「公民館」も例外ではない。今回は、公民館という社会教育施設の成り立ちと、各地で始まった「オンライン公民館」の取り組みを紹介する。

地域住民に最も身近な公的施設と、地域と人を結びつける、オルタナティブな方法。

 公民館とは、地域の住民同士が学習し、交流するための社会教育施設である。社会教育法第20条には公民館の目的として、「市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与すること」と記されている。全国に約1万4000館あり(2015年)、地域住民に最も身近な公的施設として親しまれている。

公民館

 日本の村々には昔から寄り合い所があり、青年たちの教育が課題となっていた1930年代には各地の寄り合い所を「社会教育館」にするとの構想が議論された時期もあったが、実現しなかった。第二次世界大戦後、当時の文部省の中で初めて公民館構想について検討が始まる。地域住民が生活や仕事について話し合い、町村民の民主的な話し合いと自主的な運営の場として必要だとの判断があったためである。

公民館

 1946、年文部次官通牒により「公民館の設置運営」の促進が奨励される。1949年に社会教育法が施行されたころには、全国にすでに約1万館の公民館が設置されていた。近年では、地域住民が学び、集う場としてだけではなく、地域の住民や団体同士をつなげ、学校・家庭・地域の連携を促進するなど、人々のネットワークを形成する役割も担っている。

公民館

公民館

 2020年春、新型コロナウィルスの流行・拡大で、町の公共施設が休館となった。4月中旬に全国に対して緊急事態宣言が発令されると、各地で人が集まるイベントは軒並み中止となり、会議も交流も延期された。このような町の機能不全をきっかけに、地域をつなげようと立ち上がったプロジェクトがある。5月初旬にいち早くスタートした、福岡県久留米市の「くるめオンライン公民館」である。

オンライン公民館

 『まちびと会社 ビジョナリアル』が主催するこのプロジェクトは、9月の現在も、毎週日曜日、オンライン会議アプリZoomを用いて開催されている。朝9時45分の開会式から夜7時まで、参加者は好きな時間にアクセスをして、お寺から届けられるお経のライブ放送、本好きの企画者が読書の魅力を語るプログラム、ダンスや料理教室などに参加することができる。

 この形式はほかの地域にも広がり、5月17日には愛知県豊田市のまちなか広場「とよしば」で「とよたオンライン公民館」が、5月31日には兵庫県尼崎市の「みんなの尼崎大学」による「尼崎オンライン公民館」が、さらに6月14日には福岡県福津市の有志による「オンライン公民館@福津」が開催され、現在も続くプロジェクトとなっている。

 社会教育施設としての公民館が、規模を縮小しながら人々の活動を支える一方で、社会教育法に規定されない「オンライン公民館」は、オルタナティブな方法で地域と人を結びつけている。
 

キーワード

坂口 緑

さかぐち・みどり
明治学院大学社会学部教授。2000年、東京大学大学院博士課程単位取得退学。研究領域は生涯学習論。共著に『ポストリベラリズム』、共訳書にアーリー・ラッセル・ホックシールド『タイム・バインド』など。