山をまるごと貸し切ってあそぶ! 宮崎・日南の元地域おこし協力隊がつくる、新しいあそび場
2020.11.01 UP

山をまるごと貸し切ってあそぶ! 宮崎・日南の元地域おこし協力隊がつくる、新しいあそび場

LOCAL

 「山であそぶ」というと、どんなことを思い浮かべるだろう? ハイキングやキャンプ、BBQ、虫とり、木のぼりなど、きっと思いつくものは人それぞれ。近年のキャンプブームや山を買うという選択肢が話題になるなかで、思い描いた山あそびがすべて叶う場所が、宮崎にある。山をまるごと貸し切って自由にあそぶ――東京出身の外山泰祐さんは、そんな夢のような場所づくりに挑んでいる。

山を独り占めして、あそぼう。

 宮崎県の南部、太平洋に面して位置する日南市は、多くのサーファーに愛される青 く美しい海と、飫肥杉の山々に囲まれた自然が豊かなまち。この日南市で今年8月にオープンした「Rental Mountain YAMA」は、山をまるごと貸し切ることができる新しいあそび場だ。宮崎空港から車で50分ほどの場所にある山の上には一軒のコテージがあり、その周辺にある広大な土地とともに貸し切ってあそぶことができる。バーベキュー台のある見晴らしの良いデッキをはじめ、ピザ窯やバーカウンター、五右衛門風呂などもあり、利用する人にあわせてさまざまなあそび方ができる。

ピザ窯

日南で、人がいないセブ島を作りたい。

 「Rental Mountain YAMA」を運営する外山さんは、2019年2月に移住し、宮崎県日南市へやってきた。きっかけは、2年前に友人をたずねて初めて日南市を訪れたときのこと。もともとフィリピンのセブ島が好きだったという外山さんは、日南の美しい海をはじめとする豊かな自然に心を惹かれた。

外山さん「日南はセブ島にも負けてないのに、正直なところ観光が全然盛り上がってないように感じて。僕は人混みが苦手で『人がいないセブ島があったらいいのに』と思ってたんです。日南ならそれを実現できるんじゃないかと思いました。それで、じゃあ自分がやろうかなと思ったんです」

 もともと旅行好きだったこともあり、観光業で起業したいという思いを持っていた外山さんは、そうした思いから宮崎での起業を思い描くようになる。

日南の海

 当時、会社員として埼玉で働いていた外山さん。帰ったあとも、やはり宮崎のことが心に残っていた。自分のなかでうっすらと起業のイメージができあがりつつあったとき、会社から転勤の知らせが届く。「このタイミングしかない」そう思った外山さんは、これをきっかけに会社を辞め、宮崎で会社を起こすことを決意。突然のことに驚きながらも、以前から「起業したい」という思いを知っていた家族も宮崎への移住を理解してくれた。

 外山さんのこうした決断を後押ししたのは、日南市から起業サポートの話があったことも大きい。もともと県外からの移住や起業にも積極的な日南市。実際に相談に行くと、歓迎されているのを肌で感じた。さらに、地域おこし協力隊の制度で1年間サポートするという話もしてもらえた。

外山さん「僕としても、いきなり宮崎に行って起業したところで、地域の人にはなかなか理解してもらえないと思っていたので、1年間ちゃんと行政の顔を持って信用を得ることができるのは大きかったです。その後押しがあったから、行けるかなと思えました」

外山さん_海
移住後、息子さんと一緒に行った初めての海。

地元からの期待にギャップを感じたことも。

 実際に移住してからは、地域おこし協力隊として市内の観光業に携わりながら、徐々に地域に馴染んでいくことができた。日南市には県外からの移住者も多く、地域のなかでも「よそ者」という感覚はないと感じているという。とはいえ、地域に関わり始めた最初のうちは、やはり大変なこともあったと振り返る。

外山さん「僕がもともと大きい会社で珍しい仕事をしていたのもあって、地元の方からいろんな期待をされていたんです。その期待と僕がやろうとしていることでギャップがあったりして、少しギクシャクした時期もありました。でもそれは、根気よくコミュニケーションをとることで解決できたので、それからはまったく問題ないんですけどね。こういうことは、きっとみんなあるんだろうなと思います。最初の3ヶ月くらいは、ほかの移住者の方もやっぱり苦労するところはあるみたいです」

 外山さん自身、移住をして地域おこし協力隊になったのも、起業という目的があったからこそ。貴重な人材に地元の期待やイメージも膨らんだが、しっかりと自分の考えを話すことで、地元の人の理解や信頼を得られた。さらに、地域のなかでつながりを作るのには、協力隊の任期中に地元のNPO法人へ出向になったことも大きかった、と話す。

地域おこし協力隊
もともと国内のメーカーで、海外子会社の経営統括をしていた外山さん(写真左)。地域おこし協力隊の着任後は、地元の観光ガイドとして、海外からの旅行客に日南の観光地を案内をしていた。

外山さん「僕がラッキーだったのは、地域おこし協力隊のときに地元のNPO法人に出向になって、そこの人たちがいろんな人を紹介してくださったんです。やっぱり地域活動とかからつながろうと思うと、けっこう大変で。地元の人脈が広い、ハブとなっている方と仲良くなってからは一気に広がりましたね」

 そんな外山さんの姿からは、本来の自分を抑え、無理をして地域に入っていく必要はないということがよくわかる。丁寧なコミュニケーションを取っていれば、自然と関係性はできていくもの。手当りしだい地域活動に参加するよりも、一人ひとりとの関係性をしっかりとつくることで、また新しい人を紹介してもらえた。地域のつながりは、そんな積み重ねでできているのだろう。

ほかの移住者との交流も。

 また、移住者の多い日南市では、何かしらイベントに行けばほかの移住者とも知り合えた。日常的に移住者同士の交流もあり、知り合いを増やすのにはまったく困らなかったそう。サーフィンを目的に移住してくる人が多く、外山さんもまわりに教えてもらいながら、最近は仕事前のサーフィンを楽しんでいるとか。

 そうしたライフスタイルの変化もあってか、関東で会社員として働いていたころよりも、気持ちに余裕が持てるようになったと感じている。まわりの人も時間に追われて過ごしている人は少ない。ゆったりとした南国らしい空気のなかで過ごすうちに、自分自身の考え方もより楽観的になったと感じるそうだ。

海
仕事の合間には海で休憩も。わずかな時間でもリフレッシュできる。

山のオーナーとの出会い。

 そんな外山さんが「Rental Mountain YAMA」をオープンさせたきっかけは、日南市からこの山のオーナーを紹介してもらったこと。1年間の地域おこし協力隊の活動も後半に突入していたころ、市から「山を売りたい、貸したいというオーナーがいる」と相談を受けた。もともと、旅行会社を立ち上げ、日本の自然を生かしたあそび場を作りたいと考えていた外山さん。起業に向け、一度は日南以外の場所も見てみようかと検討していたときに、この山に出会った。

Rental Mountain YAMA

外山さん「たしかに日南は海も山もキレイだけど、日本ならそういう場所はいっぱいある。結局決め手になるものがなくて、旅行会社を作っても本当に宮崎に人が呼べるのかと悩んでいました。そしたら、その山の話が来て。見てみたらすごく良い山だったので、なにかできないかと考えたときに『ひと山まるごと貸す』っていうコンセプトを思いついたんです。これだったらいけるかもと思って、『やっぱりここだな』と思い直しました」

 そんなご縁に導かれ、この場所からスタートすることを決意。地域おこし協力隊の活動と並行して少しずつ動き出し、任期が終了した今年4月から正式に会社を立ち上げ、コテージや山の整備など本格的な準備が始まった。

文:Miho Aizaki

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