労働人口が減少する中、デジタル変革により生産性向上の取組みが始まった
2020.11.04 UP

連載 | DIGITABLE LIFE〜ニューノーマル時代の生き方〜 | 7 労働人口が減少する中、デジタル変革により生産性向上の取組みが始まった

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DIGITABLE LIFE〜ニューノーマル時代の生き方〜 ソトコトオンラインとMADUROオンラインの隔週クロス連載。Forbes JAPANウェブでもこの連載が読めます。
コロナウィルスの感染拡大は、私たちの生活を変え、経済・社会にも大きな影響を与えています。私たちは「新しい日常」を模索し続け、リモートワークやワーケーション、ネットショッピングの利用など、デジタルを活用することを一つの解決策として生活に取り入れ始めています。第7回目である今回は、労働人口が減少する中でのデジタル変革による生産性向上について解説していきます。

将来、労働人口は必ず不足する 

今、注目されているのがデジタル変革(DX)による生産性向上の取り組みです。その背景として、少子高齢化による労働人口減少の問題があります。 

 2030年の労働市場の未来推計をみると、労働需要は7073万人に対し、労働供給は6429万人と、2030年時点で人手は644万人不足することが予測されています。対策として官民ともに対策を取り続け、女性の就労を高めるために様々な支援を充実させ、シニアの就労を高めるため定年延長により就業機会を増やし、外国人の就労を増やす様々な制度改正等に取り組んでいます。 

しかし、これらの対策を打ったとしても、不足する644万人の半分程度しか労働力を確保できないと予測されており、半分弱の298万の労働力が不足すると予測されています。足りない労働力を埋めるために、今、デジタル変革による生産性を向上が期待されています。 

労働人口減少

デジタル変革による生産性向上への期待 

 デジタル変革による生産性の向上はなぜこれほど期待されているのでしょうか。それは、従来の生産性向上とデジタル変革による生産性向上の違いを知ると理解できます。 

従来の生産性向上は、業務効率化は、既存の仕事のプロセスを大きく変えずに、無駄を無くしてコストを下げる手法でした。基本的に作業の時間、人の動き、物の在庫量などを適正にコントロールすることにより実現してきました。加えると日本はこれらの改善活動は世界でも指折りに得意としてきました。 

対してデジタル変革による生産性向上とは、デジタルを活用し、抜本的に業務を見直し、ビジネスモデルを改革していくことです。デジタルの活用は、従来成し得なかった人間の仕事を肩代わりすることが可能になります。デジタル化のアプローチは大きく3つあります。 

 一つ目は、コミュニケーションのデジタル化です。これはリモートワークに代表されるように、コミュニケーションをデジタル化することで、場所や時間に囚われずに仕事を進めるアプローチです。 

 二つ目は、定型作業の省力化です。これはRPA(Robotic Process Automation)に代表されるように、定型化された単純作業を、ソフトウェア型のロボットが代行・自動化するアプローチです。 

 三つ目は、複雑な作業の省力化です。これはAIなどに代表されるように、人間が行うには複雑で、複数の答えがある場合などに、何億ものパターンをシミュレーションし最適な解を導き出すアプローチです。 

 これらのアプローチを良く理解し、組み合わせてデジタル化していくことで、人の仕事のプロセスを劇的に変化させることができ、単なる業務効率化とは違う大きな効果が期待できるのです。 

デジタル変革

生産性向上を阻む人間の習慣 

 私たちの会社でも、積極的にデジタル変革に取り組み生産性向上を日々目指しています。その中でもコミュニケーションのデジタル化は大きな効果を実感しています。コロナによる緊急事態宣言後の半年間、私たちの会社では完全リモートワーク生活を続けました。最初は、不自由に感じたことが多くありましたが、続けていれば何かが見えてくると信じ継続してみました。そして、半年もそれを続けていくと、私たちは、リモートとリアルを上手く使い分けて、社内外のコミュニケーションを倍以上の生産性にすることができました。社内会議やクライアントへの報告会議などはリモートで実施し、ディスカッションが伴う会議はリアルで実施するといった具合です。振り返ってみると半年という期間、私たちは、不都合なことはなんとか解決しようと努力を重ね、新しい仕事の仕方に転換させ、やがてそれが習慣化されたことにより実現できたのだと思います。 

 逆に習慣化するまで我慢しないと、生産性を落としてしまうこともあります。ある会社の経営者が、「リモートは駄目ですね。社員達からも不満がでたので、来週から全社員出勤させることにしました」と導入したリモートワークを撤回しすぐに元に戻してしまいました。どれくらいの期間、リモートワークをしたかと聞いてみると、なんと1週間でした。理由を聞いてみると、その経営者や現場担当者は良かったのですが、中間管理職がやることが無くなり、その中間管理職の直訴によりリモートワークを断念したそうです。結果として、仕事を元に戻してもリモートワーク環境の準備コストもあり返って生産性を落としてしまいました。 

 人は、自分の慣れ親しんだ習慣を変えることを嫌います。今後、デジタルシフトが進んだとしても、一番のブレーキになるのは、人の固定概念であり、慣れ親しんだ習慣です。特に成功体験を持ったベテラン社員は、染みついた習慣を変えることが出来ずに、デジタル変革を極端に恐れる傾向があるようです。デジタル変革をするときには、こういった抵抗も予測した上で、不退転の覚悟で継続し、習慣化するまで続けることが大切です。 

慣習

デジタル変革により労働力も増える 

 私たちの会社は生産性が高まったこともあり、お蔭さまで仕事の引き合いをいただくことが多くなりました。しかし、それでも人手が足らず採用活動を強化し気づくことがありました。リモートとリアルを上手く組み合わせた仕事に転換した仕事は、働き方に自由度が増していたのです。 

 時間や場所にこだわらずに仕事ができることで、自分のペースで仕事がしやすくなっていました。時間・場所にこだわらない仕事が可能となり、自分の生活のリズムに合わせて働くことを可能にしました。時間的制約がありなかなか思うように働けない人や距離的制約により働けない人にとり働きやすい環境になっていたのです。 

 この環境の変化は、企業の採用に自由度を充てるばかりでなく、出産や子育てによる制約のある人も働けるようになり、年齢を重ねて体力に衰えを感じるようになった人も働けるようになります。結果として、潜在的な労働力もうまく活用することが可能となり、全体的な労働力を増やすことにつながるのです。 

デジタル変革は、生産性をたかめるばかりではなく、潜在している労働力をも増やす効果があるのです。 

 これからはデジタル変革により生産性向上の取組みが本格化してくるでしょう。特に日本において労働力人口が減少することを避けることはできません。これからは、積極的にデジタル変革による生産性向上に積極的に取り組む企業・個人こそが、時代を先導していくとになるでしょう。 

キーワード

鈴木 康弘

すずき・やすひろ
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に従事。99年イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)設立、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブ設立、同社代表取締役社長就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任。