サスティナブル・ブックガイド 介護・ケア×秋本可愛さん
2020.11.20 UP

サスティナブル・ブックガイド 介護・ケア×秋本可愛さん

SUSTAINABILITY

 新型コロナウィルスの影響で社会が大きく揺さぶられ、さまざまな分野で大きな変化が起ころうとしています。これからの未来はどうなっていくのでしょうか? 不安定な社会で暮らし、生きていくためのヒントをくれる、そんな“未来をつくる本”を紹介します。

介護・ケア×秋本可愛さん

 介護事業者向けの採用・育成支援事業を展開する『Blanket』の代表・秋本可愛さん。介護に携わる人や興味のある人におすすめするのは、新しい介護のあり方をつくるための本。共感して笑顔になれるものから学術的な硬派なものまで、読めば日常のエネルギーに!

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左/社会的処方─孤立という病を地域のつながりで治す方法(西 智弘編・著、学芸出版社刊)。右/介護男子スタディーズ(阿部真大ほか著、高木康行写真、介護男子スタディーズプロジェクト刊)

「介護」という言葉からは、高齢者の食事や入浴、排泄などをお世話する大変な仕事というイメージが浮かびがちですが、高齢者と笑顔で交わす何げないふれ合いもたくさんあります。庭で洗濯物を干したり、手を取って散歩に出かけたり。そんな穏やかな日常の介護風景を撮影して紹介しているのが『介護男子スタディーズ』です。登場する介護職員は男性だけ。でも、介護界のイケメン男性の写真集ではありませんよ(笑)。

 表紙の写真も素敵です。ベッドから移動するおじいさんを介護職員がサポートしていますが、肩から回したおじいさんの腕に力が入っていないのがわかります。それは、職員を信頼している証し。そんな介護する人、される人の関係性も想像できる一瞬を切り取った写真がたくさん掲載されています。

 文章は14名の著名人がさまざまなテーマで書いています。建築やまちづくり、映画、アート、テクノロジー、食、コミュニケーション、介護民俗学など、介護を多方面の分野から見つめた文章です。とかく、介護はネガティブなイメージで捉えられがちですが、この本を読んでみるとクリエイティブな仕事だと思えるかもしれません。

『社会的処方』の冒頭には、医療機関に持ち込まれる問題の2、3割は社会的な問題だと書かれています。つまりそれは、治療や薬ではなく、地域の人との「つながり」によって治せる病気があるということ。そのための取り組みが、社会的処方です。そしてこの本には、社会的処方のユニークな事例が紹介されています。弊社『Blanket』が運営する、次世代リーダーのコミュニティ『KAIGO LEADERS』の元・運営メンバーで参加者でもある総合診療医の守本陽一さんが行う「モバイル屋台de健康カフェ」もその一つ。屋台を引いて、まちで出会った人たちにコーヒーを振る舞い、世間話や、時には健康の話をして時間を過ごす活動です。医師と患者の関係から抜け、偶然に出会った人とオープンでフラットな対話が楽しめることに意義があるようです。

 介護事業所の事例もあります。1階に駄菓子屋があるサービス付き高齢者住宅を新型コロナウィルス感染拡大前に訪ねましたが、入居者より子どもたちのほうが多いほど賑わっていました。駄菓子屋の切り盛りは入居者が行いますが、お菓子を売り、子どもたちの世話をするという役割があることで、張り合いのある時間を過ごされているようでした。そんなふうに、つながりを持つことで、より人々が健康に、より豊かになることを願う本です。

秋本さんおすすめの5冊

●社会的処方─孤立という病を地域のつながりで治す方法(西 智弘編・著、学芸出版社刊)
今、注目されている「社会的処方」は、薬を処方するように、社会との「つながり」を処方するという考え方。イギリスのリンクワーカーというつながりをつくる専門家の役割となるものが日本にも必要だと提起されています。

●介護男子スタディーズ(阿部真大ほか著、高木康行写真、介護男子スタディーズプロジェクト刊)
20の社会福祉法人が行う「介護男子スタディーズプロジェクト」から生まれました。厳しいとされる介護の現場ですが、「これも介護?」と思えるほど幅広く捉えられていて驚かされます。介護の世界を楽しく知ってもらえる本です。

●地域医療と暮らしのゆくえ─超高齢社会をともに生きる(高山義浩著、医学書院刊)
日本人の約8割の人が病院で亡くなりますが、2040年には約49万人の看取り場所が不足すると言われています。延命的な医療が常態化する時代に、本人や家族は死ぬこととどう向き合うのか。介護に携わるものとして深く考えさせられます。

●メンタル・クエスト─心のHPが0になりそうな自分をラクにする本(鈴木裕介著、大和出版刊)
新型コロナウィルスの影響で介護の現場は今まで以上に感染症対策に心を配ったり、人員不足をカバーしあうなど、自分の気持ちを後回しにして従事する方が大勢おられます。そんな時だからこそ、自分の心とのつき合い方を学ぶことは大切です。

●親の介護がツラクなる前に知っておきたいこと(島影真奈美著、WAVE出版刊)
まだまだ介護は家庭内だけで行うものという認識が強く、介護を頑張っている家族も多いのが現状です。そんな家族に向けて、「頑張りすぎなくてもいいよ」と味方になってくれる本。介護に関する悩み相談に答えるかたちで課題を乗り越えます。

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左/地域医療と暮らしのゆくえ─超高齢社会をともに生きる(高山義浩著、医学書院刊)。中/メンタル・クエスト─心のHPが0になりそうな自分をラクにする本(鈴木裕介著、大和出版刊)。右/親の介護がツラクなる前に知っておきたいこと(島影真奈美著、WAVE出版刊)

 

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秋本 可愛

あきもと・かあい
1990年生まれ。大学時代に認知症予防をテーマにしたフリーペーパー『孫心』を発行。卒業後、2013年に『Join for Kaigo』(2020年に『Blanket』に社名変更)を設立し、介護事業者の採用・育成支援や、日本最大級の介護に関心を持つ1人ひとりの力でより良い社会を目指すコミュニティ『KAIGO LEADERS』を運営。