ハーブに誘われ、あちこちへ。「ハーバルライフスタイリスト」村田美沙さん。
2021.01.12 UP

ハーブに誘われ、あちこちへ。「ハーバルライフスタイリスト」村田美沙さん。

WORK

聞き慣れない肩書なのは、村田美沙さん自身がつけたものだから。そこには、ときには薬として古くから活用されてきたハーブ(薬草)を“衣食住”に生かしたいという思いが込められている。

自然に笑顔が生まれる。

 9月の、とある土曜日。村田美沙さんは、東京都渋谷区代官山にいた。ハーブや植物をテーマにしたワークショップを行うためだ。緊張した面持ちで集まってきたのは子どもたち。ハーブに触ったり、香りを嗅いだりするうちに、緊張がほぐれ、自然と笑顔が広がる。「大人向けのワークショップでも同じなんです。それがハーブ、ひいては植物の力、エネルギーだと感じています」と話す村田さん自身も、笑顔を見せる。

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『代官山ティーンズ・クリエイティブ』のワークショップで、ハーブ畑の話をする村田さん。

 村田さんは「ハーバルライフスタイリスト」として2019年から活動している。主な仕事は、ハーブの魅力を伝えるワークショップやハーバルドリンクの製造販売、ハーブを通した企業とのコラボなど。「衣食住にハーブを生かす暮らし方を、たくさんの人に伝えたいと、肩書を考えました」。

ハーブの本場・欧州へ。

 村田さんがハーブと出合ったのは、社会人4年目。体温と外気温のバランスが取りにくい一括管理のオフィスの空調で、体調を崩した。それをなんとか克服しようと運動やヨガをやってみたり、漢方を試したり……。「そのなかでいちばん自分の生活に合って、楽しかったのが植物療法でした。とくにハーブティーは、飲んだり香りを嗅いだりすることで気持ちが落ち着き、自分がコントロールできると自信にもなりました」

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ローズ、ミント、レモンバームなどハーブごとのお茶。

「もっとハーブを知りたい」。村田さんはハーブが暮らしに根付くヨーロッパへ。「5か月ほど滞在して、フランスを中心にハーブのお店や市場を巡ったり、ハーブ農家に滞在したりしました。不思議だったのは、旅行中、植物療法士さんにおすすめしてもらったハーブティーを飲んでいたら、人生ではじめて生理の周期が安定したんです!」とそのときの驚きを話す村田さん。ハーブの力を実感し、ますますそのになっていった。

 帰国後村田さんは、自分が感じたハーブの魅力や力を日本で伝えたいと考えた。「フランスで見たハーブは、どれもその土地で育ち、土地の力が宿っている強さがありました。日本でハーブのよさを伝えたいのなら、日本の土壌で育ったハーブを使いたい」、そう考えた村田さんは、日本各地のハーブ農家を訪ねていくことになる。

日本では日本のハーブを。

 10月の、とある日曜日。村田さんは、岐阜県飛騨市にいた。森本悠己さん・恵美さん夫妻が営む『ソヤ畦畑』を訪れるためだ。畑は、飛騨在来の豆類や50品種ほどの野菜を育てている。その一画で育つミントやエディブルフラワーが村田さんのお目当てだ。「日本の土地でどんなハーブが育ち、どんな方が作っているのか、それを知りたくていろいろな農家さんを訪ねています」と村田さん。初めて訪れた『ソヤ畦畑』では、農薬や肥料をまったく使わず、自然の営みに沿って作っていること、クロモジは崖に自生しているものを採ってくることなど、森本さんの話を熱心に聞いていた。「こうして畑を訪ねると、『あそこのハーブはいいよ』とほかのハーブ農家さんの情報も聞くことができ、いろいろと刺激になります」。

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無農薬無肥料で除草除草剤を使っていない『ソヤ畦畑』の畑。さまざまな植物がいっせいに育っているという感じがする。

 村田さんが初めて日本のハーブ農家を訪ねたのは、ヨーロッパから帰国してからのことだ。東京・渋谷区で週末に開かれる「青山ファーマーズマーケット」で知り合った栃木県・那須高原の農家さんに畑を見学させてもらった。「訪れたのが冬でハーブはなかったんですが(笑)、土に触らせてもらって、土壌の良さを体感しました。冬でも土には微生物がいて、あたたかくて。行かないとわからないことが、沢山あったんです」。

 ハーブは単価が安く、野菜ほどに需要がないうえに、栽培に手間がかかり商売として成り立つという確かな実感も弱いそうだ。それでも栽培する農家さんは、ハーブへの愛情や思い入れを持っていた。「そういう話を聞いて、農家さんと一緒にものづくりをしていきたいと考えるようになりました」。こうして村田さんが訪れた農家は、全国におよぶ。

ハーブとともに生きる。

 2020年5月、村田さんは各地の農家が育てた国産ハーブを使ったハーバルドリンクの販売をスタートさせた。ハーブティーと言わないのは、お茶だけでなく、シロップやお酒に漬け込んだりと、そんなハーブの楽しみ方をもっと広げて伝えたいから。袋を開けると複数のハーブが入り混じった複雑な香りがふわっと漂ってくる。「茶葉は粉末にしたり、ティーバッグに入れたりせずに、加工されたときの、ほぼそのままで提供しています。そのほうがハーブをより感じてもらえますし、よりおいしいんですよ」。ほかにもハーブ農家のファームツアーを企画したり、洋服の新作発表会でハーブティーのケータリングをしたり、ノベルティのハーブティーをブレンドしたり……。ハーブを通して、さまざまな人と出会い、多様な活動を行ってきた。

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村田さんが国産ハーブをブレンドしてつくっているハーバルドリングのパッケージ。右が夜をイメージした「Kureru」、左が朝をイメージした「Akeru」。

「東京に来て2年、今は出身地である愛知県常滑市でのまちづくりにも関わりたいなと思っています。高校生のときから興味があったのですが、ハーブを通して自然の大切さを知った今だから、伝えたいことがあります」と話す村田さん。ハーブに出合い、知識を深めていくなかで、やりたいことを実現させてきた。この先もハーブと共に、自然と共に生きていく村田さんの姿が見える。

photographs by Mao Yamamoto text by Reiko Hisashima

記事は雑誌ソトコト2021年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。