まるみ農園
2020.12.12 UP

「田舎に住みたい!」と大阪から天草へ。移住した夫婦が地域に溶け込んだ秘訣とは

PEOPLE

広々とした畑で農作業を手伝う2人の少年。大阪から熊本県天草市へ移住した、三田村博さん・恵美さんの長男・頼人くんと次男・悠平くんだ。「田舎暮らしがしたい」と2010年に夫婦で天草にやってきて、すぐに頼人くんが生まれた。天草での新生活で就農に挑戦し、現在は自然栽培や有機無農薬野菜を作る「まるみ農園」を経営。知り合いの全くいない場所での暮らしで、どう地域と関わり、溶けこんでいったのか。三田村夫妻に話を聞いた。

まるみ農園
三田村博さん・恵美さん:2010年に夫婦で大阪から熊本県・天草市へ移住。就農研修を経て2012年に農家としての生活を始める。2013年から自然栽培・有機無農薬栽培での野菜作りをスタート。2017年に「まるみ農園」に屋号を変更、ネット販売も開始。現在に至る。天草移住後に長男・頼人くんと次男・悠平くんが生まれ、現在4人家族。(c)まるみ農園(絵/山川さゆり)

結婚前から夢みた田舎暮らし。下調べを兼ね各地へ旅行も

滋賀県出身の博さんと愛知県出身の恵美さんが出会ったのは、旅好きの二人がそれぞれで訪れた沖縄。恵美さんは派遣社員、博さんは建築関係の仕事をしながら、働いては資金を貯めて各地へ旅に出るというライフスタイルが似ていた。「いつかは田舎で暮らしたい」という思いも結婚前からよく話していて、結婚して大阪で暮らしていた頃からは「5年以内には移住したい」と具体的な目標を立て、その資金も少しずつ貯金していたという。

恵美さん「私は大阪がちょっと苦手だったのと、その前に東京にも10年くらい住んでいたことがあって。都会はもういいかなと思い始めていました。移住を取り上げるテレビ番組の影響もあって、漠然と田舎への憧れがありましたね」
博さん「私は滋賀の田舎で育ったので、もともと人込みが苦手だったんです」

近い将来の移住を見据え、結婚後も年に1~2回は下調べを兼ねて北海道や島根、鹿児島の種子島など、各地を旅行した。

恵美さん「寒いのが苦手な私は南の海、夫は北の川の近くを希望していて、まったく正反対でした(笑)」

三田村夫妻
移住先の下見も兼ねて旅していた頃。写真は北海道・摩周湖にて。(c)まるみ農園

移住体験プログラムで天草の海が見える家にひと目惚れ

結婚して4年ほど経ち「そろそろ本気で移住先を探そう」と話していた頃、たまたまネットで見つけたのが天草市の移住体験プログラム。恵美さんの希望に近い"南の海の近く"だったが、その時は天草が九州のどこにあるのかも知らないくらいだったという。

恵美さん「当時は私が仕事をしていたこともあって、夫だけで体験プログラムに参加してもらうことになりました」

2009年の10月から2カ月半のプログラムに参加した博さん、そこで紹介された空き家に心が大きく動かされる。

博さん「高台に建っていて海が一望できるんです。この眺めを見て『住みたい!』と思いました」

恵美さん「結果的に私の意見が勝ちましたね(笑)」

天草
博さんがひと目で「住みたい!」と思った、家のすぐ下にあるみかん山からの風景。後にこのみかん山の世話を引き継ぐことになる。(c)まるみ農園

家を借りるため、とりあえず就農研修へ 

2009年末、移住体験プログラムの終了が近づく。住みたい家は見つかったが、当時の博さんは無職。恵美さんも大阪の仕事は退職して移住することを決めており、「無職では家が借りられない」と、博さんが急いで天草市で求職活動をすることに。

博さん「ハローワークで探したりしているとき、天草市が行っている新規就農研修があるのを知って、これだと。天草市の信用もありそうだし、家も貸してもらえるかなと思いました」
恵美さん「もうほんとに軽い気持ちで流れに乗った感じです、計画性もなく(笑)」

こうして図らずもまったくの初心者から農業を始めることに。希望していた家も無事に借りることができ、2010年2月には恵美さんも天草入りした。しかし、この時点では天草に定住することを決めたわけではなかったという。

博さん「最初は『とにかくしばらく住んでみるか』くらいの気持ちで。体験プログラムが秋から冬にかけてだったので、夏場の天草はどんな感じかな、最低でもそこまでは住んでみないと分からないな、と」

移住資金は以前から貯めていた預金のほか、移住者向けの補助金制度も活用。借家は市の"空き家バンク"に登録されている物件だったので、補修費用などの補助も利用できたという。

博さん「こういう情報は移住体験プログラムで市の担当の方から教えてもらったりしたので、参加してよかったです」

移住直後の第一子妊娠。「ここで育てる」と定住を決意

「田舎に住みたい!」という憧れから、"流れに乗るように"天草へ住まいを移した三田村夫妻。しかし住み始めた当初は、憧れだけではどうにもならない苦労の連続だった。そもそも「とりあえず夏までは住んでみよう」というお試し移住のつもりだったが、予想外の出来事が二人の気持ちを変える。

恵美さん「結婚して5年できなかったのに、天草に移住した次の月に妊娠したんです。これはもう、天草にご縁があったんだと思いましたね」
博さん「しっかり腰を据えて『ここで子育てしていこう』と定住を決めました」

とはいえ、誰一人知り合いがいない土地で、初めての妊娠・出産。育児の準備を始めるも、近所には子育て世代がおらずなかなか情報が得られないため、心配は尽きなかったという。転勤族で他県に住み子育てする恵美さんの姉にアドバイスしてもらったりしながら、なんとか無事に天草市内の産院で長男の頼人くんを出産。この頃に経験した不安や心細さが数年後、出産育児に関するコミュニティを運営することにつながっていく。

まるみ農園
2012年、畑でジャガイモを掘る博さん。この頃、長男・頼人君はまだ1歳。(c)まるみ農園

写真:まるみ農園、天草お産路
絵:山川さゆり
文:西紀子

  • 1/2