平日は畳屋、休日はラッパー!? 老舗畳店4代目の仕事。
2021.01.20 UP

平日は畳屋、休日はラッパー!? 老舗畳店4代目の仕事。

WORK

畳業界、藺草産地への危機感から、「九州畳万博」を開催する夢へ。

 家業を手伝いながら、畳に関する技能をさらに高めようと福岡畳高等職業訓練校に3年間通い、国家資格「畳製作技能士」も取得。現在は徳田畳襖店の専務取締役であり4代目「後継者」として活躍する。相乗効果も起きた。MC TATAMIとしての活動も徐々に広まり、「朝倉におもしろい畳屋がある!」「歌う畳屋がいる!」などと、メディアで取り上げられ、実家の畳店への注文も増えた。しかし、徳田さんが目指した「未来のカタチ」はそこではない。

「衰退する畳業界を盛り上げたい。福岡の中心・天神とかを歩いてて、信号待ちしとったら不動産情報が目に入る。そこで見る間取りに畳の部屋はほぼない。畳屋になってから新築の家に行くと畳の間がなかったりする。危機感が身近にありました。そして九州は畳の原料となる、藺草の産地。とくに熊本県八代市は日本の98パーセントを生産してるんですが、生産農家はこの30年で10分の1以下にまでなっている。全国の畳店、藺草の産地など含め、業界全体を盛り上げていきたい」

 その想いは、あの吉本興業に通じることになる。2019年3月、九州の新たな才能を発掘するという目的で「九州エンタメBIGオーディション」が開催された。「ラップを1分間、あとの4分はパソコンを使ったプレゼンをしたんです。提案したのは『九州畳万博を博多駅で開催したい!』というもの。ステージも畳、客席も畳。マルシェでは食用藺草を使ったパンケーキやコーヒーを出してもらって」。優勝者不在ではあったが、徳田さんは唯一、吉本興業とのマネジメント契約を勝ち得た。折しも同社は、地域課題を解決するビジネスを推進する『ユヌスよしもと』を2019年に立ち上げたタイミング。「地域課題をSDGs視点で解決していくことは、ずっと自分もやりたかったこと。同じ視点を持つ会社とご一緒できるのは、とてもありがたいです」。

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『徳田畳襖店』の店内に掲げられた色紙の数々。地元放送局をはじめ、全国メディアなど、多くの取材が行われた。活動の楽しさと、徳田さんの人柄が人を惹きつけるのだろう。

 徳田さんに、今後の活動について聞いてみた。「吉本興業のクラウドファンディングサイト『SILKHAT』でも、『畳を広めたい』というプロジェクトで、畳パーカーやTシャツの販売のほか、藺草産地への体験ツアーを企画しています。あとは、SDGs視点での取り組みをもっともっと深めていきたい。畳を作る工程で出る端材を靴のインソールにしてみたり、藺草の廃材をオーガニックの土づくりをする企業に持ち込み相談したり。食べられる藺草もあるので、それらを使った麺やクラフトビールなんかもできないか、日々模索しています!」。

 いつか本当に博多駅で「九州畳万博」をやるために、一歩一歩。最後に、現在の活動スタイルのきっかけになったという畳ソング、「愛され畳」の歌詞を引用したい。

「最近どこの家も和室が少ないな。それでは少し、悲しんだな。いいものを残したくって。畳は素晴らしいんだってことを伝えたくて、今ここでオレ歌うよ」

 活動の原点は、きっと“畳愛”。

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工房で作業をする徳田さん。ちなみに仕事中は、集中するために音楽を一切かけないという。

 

photographs & text by Yuki Inui

記事は雑誌ソトコト2021年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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