デジタル後進国日本で進むデジタル格差、リーダーの姿勢が格差を生む
2021.01.12 UP

連載 | DIGITABLE LIFE〜ニューノーマル時代の生き方〜 | 11 デジタル後進国日本で進むデジタル格差、リーダーの姿勢が格差を生む

DIVERSITY

DIGITABLE LIFE〜ニューノーマル時代の生き方〜 ソトコトオンラインとMADUROオンラインの隔週クロス連載。Forbes JAPANウェブでもこの連載が読めます。
コロナウィルスの感染拡大は、私たちの生活を変え、経済・社会にも大きな影響を与えています。私たちは「新しい日常」を模索し続け、リモートワークやワーケーション、ネットショッピングの利用など、デジタルを活用することを一つの解決策として生活に取り入れ始めています。第11回目である今回は、日本がデジタル化後進国だということについて解説していきます。

日本はデジタル化後進国

 多くの日本人は、日本は先進国であり、デジタル化においても先進国だと思っていた人が多かったと思います。確かに、世界でも有数の富める国であり、基礎技術分野においては世界でもいまだにトップクラスです。しかし、デジタル化においては、残念ながら後進国となってしまっています。コロナが、それは表面化させました。

 デジタル化により様々な壁を超えた情報共有や効率化がもたらされます。しかし、コロナ禍における地方自治体と省庁間の情報混乱し様々な給付金の支給は遅れ、企業でもコロナ禍のリモートワーク推進もスムーズに進まない状況が続きました。長年、日本の生産性の低さは指摘されてきましたが、デジタル化の遅れが大きな要因であったことを証明することになりました。

 政府も大きな課題ととらえ、菅政権では、デジタル庁の創設、脱ハンコなどに動き出しています。企業も、デジタル変革に力を入れる会社が急速に増えてきています。これからは、社会全体のデジタル化が進み、それに伴いデジタル変革された新しい社会となっていくことでしょう。

デジタル化後進国

デジタル格差が広がる

 社会のデジタル変革が進む中、個人レベルで考えてみると、デジタル化に積極的な人々とデジタル化に消極的な人々の差が開いてきています。デジタル化に積極的な人は、主にIT系の仕事をしている人からはじまり、コロナ禍にリモートワークを経験したオフィスワーカー層の若い世代を中心に増えてきています。逆にデジタル化に消極的な人は、あまり普段からITを活用しない仕事をしている人や仕事の変化を嫌う中高年世代に多いようです。この差は時間の経過とともに広がり、仕事や生活においても近い将来には大きな格差を生んでいくことが予想されます。

 デジタル変革は、デジタル化により社会や企業を変革させ、人々がより豊かな生活の形を実現することです。

デジタル化に積極的な人は新しい時代に対応できると思いますが、デジタル化に消極的な人は新しい時代に対応できない可能性が高くなります。将来、デジタル化に対応できた企業が富めるデジタル企業・個人となり、デジタル化に対応できない企業が貧するアナログ企業・個人の構図となる可能性が高いと思います。

 私は、そのような世の中は不健全だと思います。社会全体のデジタル変革が進むとともに、人々が等しくデジタル変革の恩恵を得られる世の中に近づいていくべきだと思っています。そのためには、今の時点から社会全体でデジタル格差を無くす行動をするべきだと考えています。

デジタル格差

日本はデジタル格差が進みやすい

 日本は、世界の中でも格差の少ない国とされていますが、デジタル化においては、大きな格差が広がる可能性が高いと思います。理由は、日本独特の制度である年功序列・人材流動化の低さにあります。

年功序列制度は高度成長期には日本企業の成長の原動力になりましたが、今後は足枷になっていきます。新しいものは常に若い人が積極的に取り入れていきます。企業においても、デジタル化で考えるならば、経営・マネージメント層に若い人が多い方がデジタル化に積極的になり、逆に経営・マネージメント層に高齢の方が多い場合はデジタル化に消極的になる傾向があります。企業のデジタル活用を促進してデジタル変革を起こしていく場合には若い人の抜擢が有効な手段なのですが、年功序列制度がそれを阻んでしまっています。

 人材流動化の低さもまた高度成長期には日本企業の成長の原動力でしたが、今後は年功序列制度以上に足枷になってきます。環境は国、地域、業界、企業、部署などの特定の集団の中に育まれていきます。デジタルをよく活用する集団に属していたならばデジタル活用を積極的になり、デジタルをあまり活用しない集団に属したならば消極的になります。人材流動化が高ければ、人材が集団を行き来してノウハウの平準化が進むのですが、日本の人材流動化の低さがそれを阻んでいます。

 今後は、多くの日本企業が抱える年功序列制度・人材流動化の低さを乗り越えて、人々が等しくデジタル変革の機会に恵まれ、少なからず恩恵が得られる世の中に近づけるべきだと思います。

日本はデジタル格差が進みやすい

リーダーの姿勢がデジタル格差を生む

 デジタル格差は何によって生まれるのでしょうか。私は、環境と習慣によって格差が生まれると考えています。人間は環境によって左右されるものです。都会に住めば都会の暮らしに順応し、離島に住めば自然豊かな暮らしに順応していきます。同様に、デジタル環境に囲まれていればデジタル化に積極的になるでしょうし、アナログ環境に囲まれていればデジタル化には消極的になるものです。習慣についても毎日SNSで発信することが習慣になれば様々な工夫をしていくでしょうし、スマホを持たなければSNSを見ることさえしないでしょう。

 では、この環境と習慣は誰が作っていくのでしょうか。その集団のリーダーが環境と習慣をつくりあげていくのです。国ならば大統領や首相、企業ならば経営者、学校ならば学校長、個人ならばもちろん自分自身です。環境と習慣はリーダーの姿勢によるところが大きいのです。

 デジタル格差で考えてみますと、欧米企業の経営者と日本企業の経営者のデジタル資質を比較してみると差は歴然です。欧米の経営者は、プロ経営者でデジタルを学んだ人がその座についていることが多く、日本の経営者は、叩き上げで経営者になりデジタルを苦手にしている人が多いのです。その結果が、世界におけるデジタル後進国と言われる現在につながってしまったのだと思います。

 これからは既存の経営者が猛然とデジタルスキルを習得する努力をするか、デジタル資質を持った人材に経営者を任せるか選択を迫られる時代になると思います。そしてデジタル資質を持つ経営者が率いる企業とデジタル資質を持たない経営者が率いる企業との格差は大きなものになるでしょう。その判断を早急に行い、迅速に行動していく企業が成長しその差を広げていくのです。

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鈴木 康弘

すずき・やすひろ
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に従事。99年イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)設立、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブ設立、同社代表取締役社長就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任。