FAMシネマテーク
2021.02.04 UP

美術館で観た映画が人生を変えるかもしれない。福岡「FAMシネマテーク」仕掛人の挑戦

LOCAL

2020年夏、福岡市美術館のミュージアムホールで始まった「FAM(ファム)シネマテーク」。毎月さまざまな特集テーマをかかげ、福岡未上映の作品を中心に上映している。全国的にもミニシアターが減りシネコンでのドル箱タイトルばかりに人が集まる昨今、あえて美術館で映画をやる理由を、仕掛人の木下竜さんに聞いた。

木下竜さん
FAMシネマテーク」運営 木下竜さん:福岡市のコンテンツ企画制作会社・株式会社利助オフィス所属のプロデューサー。かつては映画の輸入会社に勤務したこともある映画愛好家。2014年には福岡に「爆音映画祭」を持ち込み、以降博多の映画ファンにはおなじみのイベントに。2020年8月、福岡アートミュージアムパートナーズ株式会社と株式会社利助オフィスの主催で「FAMシネマテーク」をスタート。

実は中止イベントの代替案だった

「FAMシネマテーク」を運営するコンテンツ企画制作会社・株式会社利助オフィス(福岡市)の木下竜さんは、上映する作品の選定や特集の企画から、音響の手配、広報・宣伝までを担う。コロナ禍という状況にありながら、映画を美術館で毎月上映、しかも福岡未上映の作品だけを特集。このチャレンジングな企画がスタートした背景を伺うと、意外な答えが返ってきた。

木下さん「実は元々、別の企画を提案していました。2020年春から浪曲公演のシリーズを隔月でやるはずだったんですが、コロナで見通しが立たなくなってしまい、代替案として提案したのが『FAMシネマテーク』でした」

福岡市美術館
福岡市中央区、大濠公園の敷地内にある「福岡市美術館」。写真提供:福岡市美術館(撮影:株式会社エスエス上田新一郎)

2019年春にリニューアルした「福岡市美術館」では、より幅広い層に美術館へ来館してもらうために多彩なイベントを行ってきたが、コロナで様々なイベントの中止を余儀なくされてしまった。そんな中で新たに「FAMシネマテーク」のプロジェクトを立ち上げられたのは、映画愛好家としても知られる木下さんだからこそだった。 

木下さん 「昔映画関係の仕事をしていたり、2018年まで『爆音映画祭in福岡』を企画運営していて、映画なら多少は勝手知ったるところなので。実は福岡市美術館のホールでは、昔アンディ・ウォーホールの実験映画などアーティスティックな作品が定期的に上映されていたんです。僕もロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督の作品を初めて観たのは美術館のホールでした。ところが、その後何故かあまりそうした作品が上映されなくなってしまって寂しい気持ちがしていたので、これはやる意味があると思いました」

FAMシネマテーク
2020年11月に実施された「台湾映画特集」の客席。(c)FAMシネマテーク

福岡未上映作品というこだわり

上映されるタイトルは、シネコンはもとより福岡のミニシアターでもかからなかった“福岡未上映作品”ばかり。毎月さまざまなテーマで特集が組まれている。

「FAMシネマテーク」上映ラインナップ

  • vol.1 真夏のカルトホラー合戦(2020年8月)
  • vol.2 フレデリック•ワイズマン監督特集(2020年9月)
  • vol.3 宮崎大祐監督特集(2020年10月)
  • vol.4 台湾映画特集(2020年11月)
  • vol.5 『典座 -TENZO-』特別上映会(2020年12月)
  • vol.6 『VIDEOPHOBIA』特別上映会(2021年1月)
  • vol.7 香港映画特集(2021年3月27日〈土〉上映予定)

木下さん 「いま全国的にミニシアターが衰退してますよね。福岡市は150万都市でスクリーン数で言えば全国でも有数ですが、去年やっと新しい小屋が出来ても、ミニシアターと呼べるのはたったの2館です。上映しなくてはいけない作品本数が多すぎるので、細切れで上映期間も短くせざるを得ず、観るきっかけやタイミングがつかめない。きちんと作品の色づけをしたり作家の特集を組んだりという機会が失われています。そこを埋め合わせ出来ればいいなという思いが強いです」

しかも単発の上映イベントや何ヵ月かに1回ではなく、同じ場所で定期的に行われているという事が大切だと木下さんは言う。

木下さん 「とはいえ、独りよがりなプログラムになってもいけないので、バランスを取りながら選んでいるつもりです」

FAMシネマテーク
上映されるミュージアムホール入口には作品ポスターの展示や、タイトルによってはパンフレットなどの物販もある。(c)FAMシネマテーク

写真提供:福岡市美術館、FAMシネマテーク
写真•文:西紀子

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