東南アジアの扉を叩く。−前編− ー田中佑典の現在、アジア微住中vol.9
2019.08.25 UP

田中佑典の現在、アジア微住中 東南アジアの扉を叩く。−前編− ー田中佑典の現在、アジア微住中vol.9

LOCAL

シンガポール、軸足なき国のオリジナルを探す。 

建国わずか50年余りの国・シンガポール共和国。面積は東京23区と同じくらいで、端から端まで車だと1時間30分ほどで行けちゃう大きさだ。

今回、微住の拠点となったのは、シンガポール駐在中の日本人の友人宅。

彼のような外国人の駐在員は高級集合住宅(コンドミニアム)に住むことが多く、彼の家もジムとプール付きの高級マンションだ。これもシンガポールならではの体験。感謝、感謝。

国民の80パーセント以上は「HDB」と呼ばれる公営団地に住んでいるそうだ。食事は基本、外食。キッチンもシンク1つある程度。

ホーカーも台湾の夜市のように、場所によっては観光化しているところも多いが、住んでいたダコタ近くの『オールドエアポートホーカー』は地元の人が多く、雰囲気も最高だ。お気に入りは毎日のように食べた「ホッケンミー(福建麵)」。

「ホーカー(hawker)」とは英語で「行商」を意味する。第1章で話してきた“移動や変化”を意味する、アジアが持つ「行」の考え。ここシンガポールでも見つけられた。

本日の相席はおじさまたちのホーカー宴会。
本日の相席はおじさまたちのホーカー宴会。

シンガポール人が考える「わが国とは」。

まだまだ友達がいない僕は、言語交流会に参加することにした。

最初は日本語編。参加者は現地で日本語を勉強しているシンガポール人や、今は台北に住んでいてシンガポール滞在中のアメリカ人など。さらに8か国語話せるシンガポール人まで知り合えた。

別の日の中国語編では、中国語をすごいで話すインド人や、見た目は華人だけどカナダに住んでいたため中国語が苦手な子どもと、またまたいろいろ出会いがあったのだが、その中でまさに華僑、スマートな出で立ちのシンガポール人のおじさまと話をする機会に。

言語交流会の会場は「マーライオン」近くのビルの屋外広場。レベル別に席が分かれている。
言語交流会の会場は「マーライオン」近くのビルの屋外広場。レベル別に席が分かれている。

彼に普段、中国語と英語どっちの言語で考えたりするのか? と聞くと、「私は広東生まれで、生まれた時から英語、広東語、中国語を話してきた。すべてが母語。何がメインで、何がサブという感じはなく、すべてがメインだ」という。

彼の頭の中のように、シンガポールではどの人種がメインでサブかというような感じを受けない。

香港も同じく、さまざまな人種がごった返した感があったが、それでも香港人がメイン。しかし、シンガポールは中華系、マレー系、インド系の3つともがメイン。HDBも、棟ごとに入居者の人種の配分が国で決まっているそうだ。

 「シンガポール人」といっても、イメージがつかめない感じがするのはその理由からか。いい意味で、軸足が決まっていない感じか。

続けて「シンガポールとはどんな国か?」と尋ねると、「シンガポールには天然の資源がない。でもそれを持ち込み、活かす『人』はいる」と軽やかに、でも力強い声で語る。

そう、「シンガポールオリジナル」というものはなに一つない。これがシンガポールの原力なのだ。この話は次号の後編で詳しく記す。

華麗なる「プラナカン」の世界へ引きずり込まれる。

回の微住で一番のお気に入りの街ができた。「カトン」という街で、家から毎朝20分ほどかけて散歩するのが日課となった。お決まりのカフェに行き、シンガポールの朝ご飯の定番である「カヤトースト」と「コピ」を頼む。

カヤトーストは温泉卵付き。黒酢を少しかけて食べても、パンをディップしてもよし。
カヤトーストは温泉卵付き。黒酢を少しかけて食べても、パンをディップしてもよし。

このカトン地区は現在、地下鉄がなくあまり交通の便はよくないが、今後シンガポール政府はこの街の観光強化を考え、地下鉄も開通予定だ。

カトン地区のプラナカン建築。
カトン地区のプラナカン建築。

その理由として、この地区に関係の深い「プラナカン」の存在は大きいはずだ。「カトン」と、ネットで調べるとカラフルな建造物の画像がいっぱい出てきて、いかにもインスタ映えスポットだなと思っていた。たしかにこの地域の壁や建物はいちいちかわいい。まさかこの建物との出合いがこのシンガポール微住での最大の出合いになるとは……。

さあ、次回は東南アジアの謎の民と呼ばれる「プラナカン」についてお伝えしていく。

文・写真 田中佑典

本記事は雑誌ソトコト2019年9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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田中佑典

たなか・ゆうすけ
1986年生まれ。福井市出身。アウトサイダーの視点で、台湾と日本をつなぐ「台日系カルチャー」の発信を続けてきたが、その足場をアジア全体に拡大。自ら提唱する「微住(びじゅう)」とは一つの場所で2週間以上滞在してみること。観光以上、移住未満でアジアを俯瞰する。