山形ローカルのおいしいラーメン「吾妻軒」
2021.03.07 UP

山形ローカルのおいしいラーメン「吾妻軒」

FOOD

米沢のラーメンは冬の職人さんへのおもてなし

今年の山形県は大雪で、大蔵村肘折では1月の積雪が330センチを超えて、ここ5年で最大を記録し、2月の積雪でも2018年に次ぐ大雪となった。

米沢では屋根の雪下ろしを農家や大工さんが冬の仕事として請け負うことも多く、作業のお昼時には職人さんに出前のラーメンがふるまわれることもしばしば。

「今日は職人さんも来ているから中華そばを頼もう。」

そんな風に米沢の冬はラーメンの出前が忙しくなる。出前で食べるラーメンは、ちょっとワクワクするごちそうだ。

雪深い白布温泉の一軒そば屋「そば処 吾妻軒」

「そば処 吾妻軒」は米沢市の南部、白布温泉の温泉街にある。白布温泉は1312年(正和元年)に鎌倉幕府の御家人が僧としての修行の途上で発見したといわれ、開湯から700年を超える。築約200年になる茅葺き屋根の宿もあり、ゴールデンウィーク頃まで滑られる天元台スキー場もすぐ傍にある豪雪地帯。

ここ数年、山形県は "雪上のサーフィン" と呼ばれる「雪板」のメッカになりつつあり、天元台スキー場はパウダースノーで長い距離を滑られるため、地元の雪板シェイパーは「コンディションが良いと人生でも1番、2番の思い出が残せる素敵な場所」だと言う。

冬限定 土鍋で食べる鶏塩味の「白布ラーメン」

そんな雪深い白布温泉で食べられる、冬だけの逸品が「白布ラーメン」だ。

白布ラーメン

ツルツルと喉ごしの良い多加水麺は米沢の麺としては幾分太めで、少しとろみのある鶏塩味のスープがよく絡む。

口いっぱいになるほどの鶏肉がゴロゴロと入って食べ応えがあるが、やわらかくて食べやすい。 白いメンマがコリコリと歯ごたえが良くアクセントになっている。

ラーメンを食べ終えると残ったスープにおじやを作ってくれる。 このために鶏肉をひとつ残しておきたい。

白布ラーメンおじや

お好みで入れるラー油がとうがらしの風味濃厚で鶏塩味のスープによく合い、体の芯から温まる。額に汗がにじみ、一枚セーターを脱がずにはいられないほど。

「氷点下の世界から帰って来るスキーのお客さんに、体の中から温まって欲しい。」

そんな想いで作られたのが、この土鍋で食べる冬限定の「白布ラーメン」だ。

吾妻山麓の伏流水で打つ自家製麺

白布ラーメンとお店について店主ご夫妻に伺った。

そば処 吾妻軒

吾妻軒は昭和30年に、元は旅館で料理を作ったり番頭をしたりしていた祖父が温泉街に飲食店がないからと開業したのが始まりだそうで、現在の店主で3代目になる。

生けすでニジマスを養殖したり、豆腐作りをしたり、キノコの栽培、炭焼きなど、色んなことを手掛けたバイタリティ溢れるおじいさんだったそうだ。

ラーメンの他、蕎麦やうどんもあり、それぞれに白布の自然や季節感を感じていただきたいと季節限定のメニューがある。春は採れたての山菜、夏は農家から提供してもらう夏野菜、秋はキノコや大根、冬は自家製の餅といった具合。

「できるだけ季節のものを提供したいし、できるだけ地産地消にしたいんです。」と言う。

「白布ラーメン」は鍋焼きうどんの土鍋と、とりそばのゴロゴロとした鶏肉を使って考案したそうだ。 なるほど土鍋なら白布の冬でも冷めにくく、具材の豪快さには野趣を感じる。 鶏のコラーゲンで少しとろみの出たスープもまた体を温めてくれる。

麺は自家製で、手もみの縮れ麺。 麺を打つ時の水も、茹でるお湯も、スープにも吾妻山の伏流水を使っているのがこだわり。

「自分たちの好みで作っているだけなんですけどね。」とご夫妻は笑う。

お客さんは観光客が多く、夏は避暑や登山、秋は紅葉を見に訪れるお客さんを、温泉やスキー場と一体となって迎える。 そんなお客さんに、田舎ならではの都会にないものを味わってもらいたいと店主は言う。

西吾妻山一帯の観光地再生プロジェクト

現在、この地域では、「西吾妻山×天元台高原×白布温泉エリア リボーンプロジェクト」という西吾妻山一帯の観光地としての再生プロジェクトが進んでいる。

旅行やウィンタスポーツの多様化など様々な要因から変化が求められるなか、白布温泉や天元台高原の地元の方を中心に、この地域の関係人口、ファンづくりをしていく取り組みだ。

まだ始まったばかりで、この地域の5年後、30年後、100年後をイメージして、残したいものや、どうしていきたいかを話し合い、みんなが同じ方向を向けるように学び合っている段階だという。

地元の僕らにとっても子供の頃から登山やスキーで慣れ親しんだこの場所が、自然の中で遊び、その雄大さを感じ、そして癒される場所として続いて欲しい。今後、どう生まれ変わっていくか注目していきたい。

そば処 吾妻軒

文・写真:山田 茂義