モノの“顔”をつくる、『Maniackers Design』のロゴデザイン。
2021.03.21 UP

モノの“顔”をつくる、『Maniackers Design』のロゴデザイン。

WORK

群馬県高崎市に拠点を構え、県など自治体からの制作依頼も多い『Maniackers Design』。代表の佐藤正幸さんは、妻の麻美さんとともに、これまでロゴをはじめとするさまざまなデザインを世に送り出してきました。製品の「顔」になるロゴに佐藤さんが込める、さまざまな「思い」や「しかけ」とは……?

TV、マンガ、街の看板からロゴへの関心が生まれた。

「私にとってのロゴの『原体験』は、子どもの頃見ていたアニメなどのテレビ番組。本編もおもしろいんですが、タイトルロゴもなんて格好いいんだろうと。後になって、その作品の『顔』ともいっていい、世界観を表す言葉は『ロゴ』というのだと知りました」

 そう話すのは『Maniackers Design』代表・佐藤正幸さん。ロゴを始めさまざまなグラフィックデザインを生み出すデザイナーで、アートディレクション、店舗や企業のブランディング、商品開発、ウェブサイトの企画や運営なども行う。妻の麻美さんはイラストレーター、デザイナーで、『Maniackers Design』はこの二人で運営している。

まるでおもちゃ箱のような事務所兼自宅。

 佐藤さんは群馬県沼田市出身。前橋にあったデザイン、アートの専門学校を卒業し、数年間広告代理店に勤めた後、フリーランスのデザイナーとして独立。以降は2000年に引っ越した高崎市を拠点に活動している。

 佐藤さんが請けるデザインの仕事の中には、地元・群馬県の自治体から依頼も多く、佐藤さんはまさに「地デザイナー」といえる存在。群馬県の魅力を伝えるウェブメディア『つぐひ』の編集長も務め、地元の若いクリエイターにも活躍の場を提供している。

ロゴは製品の「顔」になる。その意識を決して忘れない。

 佐藤さんは生まれも育ちも群馬県。現在は県を筆頭に自治体に関わる仕事も多く、生粋の「地デザイナー」といえる。

「群馬県から出て暮らしたことはありませんが、それで不便を感じたり、仕事が少ないと思ったことはありません。私がフリーランスになった2000年頃はインターネットの回線がどんどん補強されていって、打ち合わせもメールで事足りるようになっていったんです。自分のサイトをつくってフォントデザインなどの作品をたくさん公開していたので、そこから声をかけてもらうことも多かったです」と佐藤さんは言う。

 依頼者は、最初は東京など都市圏の会社や人が多かったが、今は群馬県をはじめとする自治体からの依頼とだいたい半々ぐらいの割合になっている。

「制作物を発表していたのもありますが、県内でトークイベントなどのさまざまな文化イベントを行っていたNPO法人『ジョウモウ大学』に関わっていたり、そのときできた人とのつながりから現・メンバーが固まった、地元の信用金庫のまちづくり活動『まちの編集社』に参加していたのが大きいですね。自分“に”声をかけてもらえるようになっただけではなく、自分“が”群馬県内で活動したいクリエイターを見つけるときにも役に立っています。地域に関わるクリエイティブな仕事をしたい人たちが集まりやすいハブになっているんです」

 
群馬県では、県庁の「eスポーツ・新コンテンツ創出課」でも扱っているほどeスポーツが盛ん。「GUNMA eSPORTS」は、県内企業『群馬eスポーツ(糸井ホールディングス)』のコンテンツ。ロゴ制作においては、Gとeの配置にこだわった。

 とくに意識して自治体や県内の人々と協働する仕事を増やしたわけではなかったのだが、増えてみると、「デザインも地産地消」であることのメリットを強く感じた。

「実際に会って話してみることが簡単にできますし、周囲の人からその人がどんな相手なのか聞いて、その人に合った発注や受注の判断をすることもできます。『コスパがいい』という感覚ですね」

「相手をよく知る」ということは、佐藤さんがさまざまなデザインに携わるうえで、とくに心がけていることのひとつ。

「ロゴデザインの場合はとくに、『デザインして終わり』ではなくて、デザインしたものがどうやって運用されるのかまでを含めて大事なんです。せっかくいいロゴをつくっても、現場に意図が浸透していないと、使い方を誤って効果が出ないこともあります」

「ロゴデザインの仕事はロゴをつくることだけではない」、そう強く感じた経験が、25年のデザイナー生活で数え切れないほどあったという。

 できるだけ意図をきちんと伝えたくて、分厚い企画書をつくることも少なくない。そのロゴで表現したいコンセプト、その名前にした理由、ひいてはロゴの「とめ」や「はらい」などといった一画一画に込めた意味まで解説する。

ロゴと一緒に提出する仕様書の1ページ。字の形に込めた意味まで伝えようとする。

「そのうえでさらに、使っていい場所や商品ごとの組み合わせ方など、細かいルールについて説明します。以前は、悪気があるわけではないのですが、デザインしたものに現場の判断で手が加わっていたりなど、伝わってほしいとおりに発信できなかったこともありました。ですが、こうするようになってから、そのような事例は減りました」

 いちばんの理想は、立ち上げの段階から企画に加わることだ。製品やコンテンツが目指したい方向性を発注者とともに練り上げながらデザインに落とし込んでいく。

「経験値が上がるほど、ひとつのデザインをつくるためには高い精度が必要だと感じるようになりました。だから昔よりも仕事量は増えていますね(笑)。ただ、たくさんロゴを提案したときは選ぶほうも大変だし知識が必要なので、こちらからアドバイスをしながら一緒につくっていきましょうという姿勢になります」

 このロゴが商品やコンテンツの顔になる。その顔で勝負していく。そう考え、常に真剣に相手と向き合うようにしている。

良質なアウトプットに同量以上のインプットは不可欠。書庫はさながら図書館だ。

 

photographs by Masaya Tanaka text by Sumika Hayakawa

記事は雑誌ソトコト2021年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。