廃棄される生花「ロスフラワー」に、命を吹き込む。フラワーサイクリスト・河島春佳さん。
2019.09.16 UP

廃棄される生花「ロスフラワー」に、命を吹き込む。フラワーサイクリスト・河島春佳さん。

DIVERSITY

花屋では、3割から5割の生花が廃棄されているという。
河島さんは「ロスフラワー」を再利用して新たな輝きを生み、再び世の中に送り出す、花のアップサイクルに取り組んでいる。

エネルギーは、「もったいない」×「つくりたい」。

 4年前、ドライフラワーのフローリストとして活動を始めた河島春佳さん。現在は廃棄される花を引き取り、ドライにして花束やディスプレイ作品、アクセサリーといった新たな商品を作っている。ドライフラワーは、回収した生花を逆さまに吊るし乾燥させ、日の当たらない場所に置いておくと、最も乾燥する冬場は2~3日で出来上がる。通年作ることも可能だが、湿気が多い季節は2~3週間程度の時間を要することもある。花の綺麗な色みを残すために、短時間で乾燥できる環境が出来を左右する、繊細な花だ。

 以前から、自宅で花を生けたり、趣味の山登りでは高山植物の写真を撮りためたり、河島さんにとって花や植物は非常に身近な存在であったという。「いつも『もったいない』という気持ちが強かったですね。だから、自分でドライフラワーにして捨てずにいました」と河島さんは振り返る。

 2年ほど前、縁あって花屋で働く機会があった。そこで売れ残った花が大量に廃棄され、次のイベントやシーズン用の花に入れ替わっていくのを目の当たりにして、胸が痛くなったという。花屋も決して、捨てたいというわけではなく、新鮮な花を優先するために時間が経った花を廃棄するという選択をせざるを得ない状況に陥る。「本当にショックでした。私はフローリストとして活動をしていたし、廃棄される花を回収して価値を生み出せたら、また花をマーケットに出してあげられるのではないかと思いました」。

「ロスフラワー」は、さまざまな花屋から譲り受けている。
「ロスフラワー」は、さまざまな花屋から譲り受けている。

 幼い頃は、ファッションデザイナーになることが夢だったという河島さん。東京家政大学で服飾を学び、卒業後は玩具メーカーへ就職したのち、大学職員やファッション雑誌の撮影アシスタントをした経歴を持つ。さまざまな職種を経験する中で、常に根底にあったのは「ものづくりで仕事をしたい」という想いだったという。それが今につながっている。「廃棄されるもので、クリエイティブななにかをつくると考えるだけで、ワクワクするんです」と話す河島さんは、どんなものもひと手間加えるだけで、また違った輝きを見出せる点にものづくりの魅力を感じている。「もったいない」と「つくりたい」という想いが、河島さんにとって次への行動となっていく。

花たちを見ながら、創作意欲が湧いてくる。ワクワクする心が止まらない。
花たちを見ながら、創作意欲が湧いてくる。ワクワクする心が止まらない。

フラワーサイクリストとして、覚悟を持ったとき。

 食品の廃棄物に対して世の関心は高まっているが、廃棄される花に注目して取り組んでいる人はいない。大好きな花の生涯を全うさせることができたら、自分も楽しいしうれしい。好きなことに関わろうと決心して、廃棄される花を「ロスフラワー」と名づけ、フラワーサイクリストとして本格的な活動をスタートさせた。

 最初は、友人たちを自宅に招いて小さなワークショップを開き、「ロスフラワー」を減らす活動の一歩を踏み出した。そのうち知人のカフェを貸し切って開催したり、出張ワークショップも行うようになった。河島さんはワークショップを通して、花に興味を持つきっかけを作っている実感、そして自分の想いや作品を伝えることの楽しみを覚えていったという。小さなワークショップが、わずか1年でファッションビルの『ルミネ』で行うまでに成長した。好きでやっていることが、誰かのきっかけを生み出せている実感は、自分の自信につながっていった。

ドライフラワーにするには難しい花を引き取っても、染め花用の花として活用して、再び花を再利用する。作業場は、現在入居する東京都台東区入谷のシェアアトリエ「reboot」。
ドライフラワーにするには難しい花を引き取っても、染め花用の花として活用して、再び花を再利用する。作業場は、現在入居する東京都台東区入谷のシェアアトリエ「reboot」。

 そして、またひとつ河島さんが行動力を発揮する。人の縁もあり、パリへ花のアレンジを学びに行くことを決意し、クラウドファンディングで活動資金を募った。周囲のサポートや事例を参考に、自らホームページを立ち上げ、フェイスブックのみで告知をして、結果的に目標の20万円より多い、50万円の資金を集めた。この経験で「好きなことで生きていく覚悟が決まった」と河島さんは話す。「お花に対する私の本気度を多くの人に伝えることができましたし、全く知らない人が私を応援してお金を出してくれる経験をしたことがなかったので、お金を使う責任を持つ機会になりました」。実績もなかった自分に対して、想いに共感し行動力を評価してくれた人たちの後押しによって、改めて自分の仕事への覚悟が決まった。

 パリからの帰国後は、クラウドファンディングのリターンに入れていた「生け込み」が、のちの定期装花(定期的に花の飾り付けを行う)の仕事につながり収入源のひとつになった。三越伊勢丹とPB商品を開発するなど多方面から注目を集め、活躍の場が広がっていった。

ウェルカムリース。プレートも端材を使用している。
ウェルカムリース。プレートも端材を使用している。
折れにくいプリザーブド・フラワーを使用したヘアコーム(白)は同系色で統一感がある。
折れにくいプリザーブド・フラワーを使用したヘアコーム(白)は同系色で統一感がある。

花の一生を、見届けていきたい。

 定期装花や作品制作以外にも活動をしている。東京都渋谷区の国連大学広場前で開催されている「Famer’s Market」にも出店して、訪れる人たちに直接「ロスフラワー」の現状を伝えている。それぞれの花をていねいに説明している姿が印象的で、花へのやさしい愛情、一つひとつ命であるということを実感させてくれる。

「Famer’s Market」に出店して、自分の言葉で「ロスフラワー」の現状を伝えている。
「Famer’s Market」に出店して、自分の言葉で「ロスフラワー」の現状を伝えている。

 河島さんは以前アトリエで作業していた際に、吊るしていたドライフラワーから「ありがとう」と言われたような気がするという体験をしたそうだ。好きなことに楽しみながら向き合い、没頭するからこその体験なのかもしれない。好きなことを追求しようと、ひとつまたひとつと行動をしてみることで世界が広がっていく河島さんのストーリーは、可能性を信じることや行動する勇気を与えてくれる。

販売しているアイテムの価格は、出品場所や使用する「ロスフラワー」の買取価格によって変動する。
販売しているアイテムの価格は、出品場所や使用する「ロスフラワー」の買取価格によって変動する。 

 近く「廃棄のない花屋をつくりたい」と河島さんはいう。店舗に並ぶすべての生花は、売れ残っても再利用して販売できるようにする。2~3坪あれば間借りスタイルで店舗を展開することも可能と考えている。将来的には、個人店としてではなく、全国的に花のロスを生まない花屋を展開していきたいという目標も話してくれた。

一人でも多く、花に触れるきっかけをつくりたいと出店している。
一人でも多く、花に触れるきっかけをつくりたいと出店している。

 彼女は生花として、あるいはドライフラワーとしてのみの役割を果たすような、最初から未来の決められた生かし方をしたいわけではない。どんな花でも、そこで見せる魅力を引き出していくことで、”花の一生“を見届けられるようにしていきたいという。河島さんは大好きな花を楽しみながら、強い想いを持って花業界に変化の風を起こし、花の未来をつくっている。

photographs by Mao Yamamoto
text by Asuka Kusano

記事は雑誌ソトコト2019年10月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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