世界で取り組むSDGsを地域サイズ、自分サイズで考える。
2021.03.31 UP

世界で取り組むSDGsを地域サイズ、自分サイズで考える。

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世界的な取り組みとして浸透してきたSDGs、言葉自体は知られてきたものの、少し規模が大きくてなかなか自分ごととして入ってこない、といった声も耳にします。
そんな中、環境省の提唱する「ローカル SDGs(地域循環共生圏)」では、視点を自分ごとにフォーカス。地域内の循環と地域同士の交流を通じて環境・経済・社会の課題解決を目指し、脱炭素社会の実現、循環経済の構築、分散型社会の形成の実現に取り組んでいます。
その活動の一つとして、ローカルでサスティナブル(持続可能な)な地域づくりを実践している全国9か所のゲストと共に、「未来をつくる SDGs マガジン『ソトコト』」の指出一正編集長がオンラインで対談。地域の課題解決や関係人口の創出など、未来づくりに取り組む生の声に耳を傾け、みんなで一緒に考える「SDGsローカルツアー」を昨年に引き続き今年も開催しました。
SDGsは世界や企業のことじゃない、もっと身近なところから地域の未来づくりを一緒に考えましょう!

さて、SDGsローカルツアー第一回目となる会場は徳島県の上勝町ゼロ・ウェイストセンター「WHY(ワイ)」。ゴミとは何かを社会に問う、世界に類をみない施設です。サスティナブルな取り組みにアンテナを張っている方はご存じ上勝町のお話も、このイベント内で深堀していきます。

まずは環境省から「オンラインの可能性」と「とにかく楽しく気軽にSDGsに触れて、みんなで考えていきましょう」との言葉をいただき、開幕です。

ゼロ・ウェイストセンター外観
現在は45分別を行っているゼロ・ウェイストセンター。「はてな」のかたち。(写真:会場提供)

四国一小さな上勝町から広がるゼロ・ウェイスト

株式会社BIG EYE COMPANY  CEO大塚桃奈さん

大塚さんと田村さん
ゼロ・ウェイストセンター内、不用品交換所「くるくるショップ」の大塚さんと田村さん。

なぜ今ゼロ・ウェイスト?

ゼロ・ウェイストセンター内の不用品の無料交換所「くるくるショップ」に伺うと、奥からなんとも良いにおい。聞くと「わたしのおやつのお芋なんです」と、少し恥ずかしそうな女性。そんなあどけなさも残る可愛らしい印象の彼女が、CEO(Chef Environmental Officer)の大塚桃奈さんでした。
会場では緊張していると言いつつ、はっきりとした口調でスライドがはじまります。

イベントの様子
今年はオンライン中心の会場。

このまま同じ生活を続けると地球環境は持続可能ではない

今のゴミと向き合うライフスタイルのきっかけとなったのは、元々目指していたファッション業界だという大塚さん。服に溢れる社会での服作りに疑問を持ち、現在はローカルから世界のゴミを変える担い手になりたいという強い思いを持って、日々上勝町でゴミゼロを目指した取り組みを行っているそうです。

(大塚さん)今の生活が消費社会の上に成り立っている以上、ウェイスト(=ゴミ・無駄・浪費の意)に溢れているっていうことがあるのではないでしょうか。どういう風にそれが処理されているか、それらがどういう資源を使って作られているか、出口と入り口を考える必要があります。

とにかく今、地球はゴミであふれている。できることは出たゴミをどう処理するかではなく、ゴミを出さない事だと、大塚さんは語ります。小さな上勝町でもできるゼロ・ウェイストの活動を世界に発信する、持続可能な未来を見据える熱意を感じました。

(大塚さん)実は上勝はゴミだらけの町でした。今わたしがいるこのエリアももともとは、穴を掘って何でもかんでもここに持ってきて燃やして処分をしていた背景があります。なんとかゴミを燃やさずになるべくコストをかけずに、どうしたらごみを処理できるかっていうことで生まれたのが、ゴミをしっかりと分別して資源にするという取り組みでした。

大塚さんのスライド

今でこそゼロ・ウェイストの取り組みで有名な上勝町も、1970年代にはゴミを埋め、燃やし、どうしようもなくなるといった問題に直面した過去があったといいます。集落の人口減少に歯止めがかからない2003年、ゴミを作らないという根本的な解決法に真っ向からぶつかる宣言をし、なかなか世界でも類を見ない取り組みであると話題になりました。

(大塚さん)ゴミ収集車が一般的な自治体と異なって走っていません。生ゴミはこのゴミステーションでは回収されないということも収集車が走らなくて大丈夫なひとつの理由で、生ゴミ以外をこのゴミステーションに持ってきて45分別を行っています。

分別案内
分別後の行先や処理するための料金など繋がりが可視化されている。

各家庭に町から自動生ごみ処理機が配布されることでゴミ収集車が走らない、それだけで脱炭素の活動にもつながります。

(大塚さん)なるべくパッケージフリーの買い物を推進して、そういった取り組みをした地域住民には「ちりつもポイント」というものが付与されポイントが貯まると環境にやさしい日用品とか地域の中で使える商品券などに交換できます。

くるくるショップガイド
くるくるショップ。町の人が不要になったものも誰かにとっては必要なものかもしれない。

 (大塚さん)上勝町ではリサイクル率8割まで進んできたんですが、2割のどうしても燃やさなければならない、どうしても埋めなければならないゴミが課題ですね。
これらは同時に解決に向けたチャンスでもあると、わたしたちは捉えています。

新しい機能であるラボラトリーとホテルに課題のヒントが隠れている、と大塚さん。ホテルでは町民と同じゴミ分別の体験をすることで、課題や気づき、コラボレーションの機会創出となる可能性があります。これは立派な関係人口の創出。
環境とビジネス、豊かな暮らしの3軸の同時達成を目指すプラットフォームになりたい、という大塚さんの言葉には力があり希望に満ちていました。

人や情報、楽しみが集まる日常に欠かせない場所が、ゼロ・ウェイスト継続の肝

日常の中でSDGsを意識して取り組んでるアクション、ありますか?

(大塚さん)簡単なことだと、マイボトル、マイカトラリー、最近は仲間と味噌作りに行きました。物がどこからどこへ行くのかの興味と、健康にも気を遣いはじめ、日用品や服、食事など、自分で作る選択も。

(指出編集長)企業任せにしていたことを、どれだけ自分でできることがあるだろうって意識を向けることも大切。上勝に行ったときにコンビニの弁当も何分割もする必要があるんだなあと気づいて、そもそもゴミを出さない生活を考えた方がめんどくさくない。そう考えると「環境教育=上勝」にますますなっていくんじゃないですかね。

 

仲間やプロジェクトの作り方、若い発想で教えてください。

(大塚さん)指出さんの話に「弱さの交換」ってありましたよね。それは一つのヒントだと思いました。上勝町のゴミ分別も完璧ではなくて実は高齢者には負担で、そういった弱い部分を提示することで、それを意見交換し続けたら芽が出るんじゃないかと。

(指出編集長)みんな「地域の魅力」という強みを基にして地域づくりをしたがりますが、お互いの強みの交換には値踏みが始まるので、コミュニティや仲間探しは「弱さの交換」から始まったらいいんじゃないかと僕は思います。

(大塚さん)非常に勉強になります。

上勝はなぜ、ローカルプロジェクトを生み出せるの?

(大塚さん)歴史的な背景を見ると、林業が材木の自由化で衰退して、その後農業(柑橘類)が寒波で駄目になって。その経験から町民で地域の課題を解決するという、自治に近い土壌ができたと考えられているそうです。それとゴミステーションは上勝町唯一の、みんなが来て顔の見える関係性がある、これもキーワードだとわたしは考えます。

(指出編集長)とてもわかりました。常に人が滞留してたぶんみんなが元気だということが好感できる場所なんですね。

 

このローカルSDGsツアー参加者にメッセージを!

(大塚さん)まずは一度上勝町に来て、一緒におしゃべりをしながら、どうしたらゼロ・ウェイストを自分の町や生活でも取り組めるのかな、って考えてみんなで心地いい社会を作っていきたいと、上勝町のメンバーは思っているので、是非遊びに来てください!

(指出編集長)ぜひ、みなさん遊びに行きましょう。

さらに近い未来について具体的には、行政と様々な立場の町民が施策を検討する「ゼロ・ウェイスト推進協議会」で、環境を学べる学校を作りたい、そして将来的には協力し合いみんながユニバーサルに取り組める、お金にとらわれていないやさしい社会になったら、と大塚さんは語ってくださいました。

会場からも、ゼロ・ウェイストの活動に関する「課題」「宣言」「自分ごと化」「建築」…さまざまな角度からの関心の言葉、また設立の計画を始めた上勝の学校づくりへの興味の声などが寄せられました。

2時間にわたるSDGsローカルツアー第1回、思いのほか冷え込んだ上勝町ゼロ・ウェイストセンター会場でしたが、あたたかい雰囲気とやさしい人々に囲まれ、自分ごと化の実践につながる時間となりました。

写真・文:ハレとケデザイン舎

環境省ローカルSDGs ー地域循環共生圏づくりプラットフォームーに掲載された記事を転載しています。

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大塚 桃奈

おおつか・ももな●1997年生まれ、湘南育ち。「トビタテ!留学JAPAN」のファッション留学で渡英したことをきっかけに、服を取り巻く社会問題に課題意識を持ち、長く続く服作りとは何か見つめ直すようになる。
国際基督教大学卒業後、徳島県・上勝町へ移住し、2020年5月にオープンした「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」に就職。現在、山あいにある人口1,500人ほどの小さな町で暮らし、ごみ問題を通じて循環型社会の実現を目指して同施設の運営に携わる。
併設するHOTEL WHYでは、宿泊を通じて上勝での暮らしを体験でき、チェックイン時にはスタディツアーを開催している。

指出一正

『ソトコト』編集長。1969年群馬県生まれ。島根県「しまコトアカデミー」メイン講師、静岡県「『地域のお店』デザイン表彰」審査委員長、奈良県「SUSTAINABLE DESIGN SCHOOL」メイン講師、和歌山県田辺市「たなコトアカデミー」メイン講師、秋田県湯沢市「ゆざわローカルアカデミー」メイン講師、福島県郡山市「こおりやま街の学校」学校長など、地域のプロジェクトに多く携わる。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「わくわく地方生活実現会議」、「人材組織の育成・関係人口に関する検討会」委員。内閣官房「水循環の推進に関する有識者会議」委員。環境省「SDGs人材育成研修事業検討委員会」委員。経済産業省「2025年大阪・関西万博日本館」クリエイター。著書に『ぼくらは地方で幸せを見つける』(ポプラ新書)。趣味はフライフィッシング。