移住先で育児と仕事を両立。BE THE VOICE和田さんの困難を乗り切る考え方とは?
2021.04.17 UP

移住先で育児と仕事を両立。BE THE VOICE和田さんの困難を乗り切る考え方とは?

PEOPLE

自己完結ではない“ギブファースト”の価値観

福岡で新しい人間関係を築いていく中で、和田さんが心掛けるようになったのは“ギブファースト”の姿勢だという。

和田さん「福岡には代々の土地だったり、自分の庭や畑で採れたものだったり、何かしらその人にまつわるストーリーがあるような豊かな恵みが近くにあると思いますし、その恵みをみんなで共有し合いながら繋がっているような気がして。それは人々のあり方も同じで、すごくありがたいと思います。だから、つい私の自己完結的なやり方が出そうになると『逆に甘えさせてもらおう』と気をつけたり、私にできることは歌うことくらいだけど、せめてそういう気持ちで出来ることで返したいと思っています」

グリーンピース
おすそ分けしてもらった採れたてのグリーンピース。写真提供:和田純子さん

移住後に始めた新しいプロジェクト

移住してからの10年で、仕事のスタイルも大きく変わった。BE THE VOICEは楽曲制作やライブだけでなく、CMや広告などの音楽も数多く手がけていて、そのほとんどは東京で依頼される仕事ばかりだった。

和田さん「移住当初は東京に通ってなんとか出来ることはやっていましたが、自分たちでもクライアントを作ればいいと思い、2015年からは『名入れソング』というプロジェクトも始めたんです」

「名入れソング」とは、「生まれてきてくれてありがとう」という気持ちを綴った曲の中に子どもの名前や生年月日、声やメッセージなどを織り込み、世界にひとつの曲を作れるサービスだ。申込んだユーザーとBE THE VOICEが直接やり取りしながら制作し、ラッピングや発送も自身で行っている。

和田さん「私たちも子育てを経験してそれをテーマにした曲も作ったりしていたので、お父さんお母さんの気持ちを歌で代弁できたらいいなと」

「良い曲だから聴いてください」と一方通行で伝えるだけでなく、音楽が持っている力を生かして聞く人と相互にコミュニケーションし、さらに仕事として成立させる。東京から離れたからこそ生まれたプロジェクトだ。

和田さん「東京にいた頃みたいにCMなどの仕事がたくさんあるわけではないし、そういう意味ではドロップアウトしちゃったのかなーと思っていた時もあったんですが、『名入れソング』で遠隔で依頼を受けて制作する方法は確立できましたし、実は最先端だったんじゃないかと(笑)」

コロナ禍で音楽業界も様変わりした今、遠隔での楽曲制作依頼も増えているという。

名入れソング
『名入れソング』は九州各地の百貨店の催事などにも出店。写真は2018年10月、鹿児島「山形屋」にて。写真提供:和田純子さん

森に通うことでネガティブな感情から解き放たれた

BE THE VOICEのファミリーは2016年、福岡県久留米市から福岡市の郊外、油山の麓に引っ越した。現在も住んでいる自宅からは、歩いて行ける距離に森がある。

和田さん「子どもを送り出した後、よく森に行くようになりました。毎日木々と向かい合って深呼吸していると、だんだん木がキャラクターに見えて、話しかけてくれてるような気がしてきて。木とエネルギーを交換しているというか。そうすると、自分が自然の一部なんだなということを実感できたんです」

森に通い始めて心地よい毎日を過ごすうちに、和田さんの心に大きな変化が訪れたという。

和田さん「社会に対する怒りとかがずっとあってちょっと疲れていたんですけど、そこから解き放たれて広い目線で見れるようになったんです。もちろん社会の問題自体はずっと考えていかないといけないことけど、それも全部、自分を含めた地球っていう大きな細胞の中で起きていることなんだな、と」

Forest
自宅近くの森は子ども達にとっても一番の遊び場。写真提供:和田純子さん

自分は地球の一部だと思い出すこと

森に通うことで感じた気持ちから、新しい曲も誕生した。

和田さん「『猿の時代 -monkey era』という曲です。自分たちは地球の一部として生まれてきただけなんだと、そのことを思い出すことで、少し前向きになれるんじゃないかなと思っています。社会のいろいろな問題に疲れた人たちへポジティブなメッセージとして届いたら嬉しいですね」

「猿の時代 - monkey era」Song and words 和田純子 (c)BE THE VOICE  

移住後の10年で変わった自分と社会の価値観

BE THE VOICEのファミリーが福岡県に移住して10年。人との関わりや仕事の変化、森との出会いは、和田さんの人生観に大きな影響をもたらした。

和田さん「経済や社会の中で生きていかざるを得ないのは変わらないけれど、自分も社会も、価値観の優先順位が変わってきている気がして。よりシンプルに、たとえば良い空気を吸って生きるとか、余裕を持って暮らすとか。やっと、それが形として自分自身も腑に落ちたし、世の中も変わってきた10年だったように思います」

頼れる人のいない移住先での暮らしは、スムーズに進むことばかりではないかもしれない。しかし、日々起こることをネガティブに捉えず、シンプルに自分の気持ちに向き合うことで、新しい人生に出会えるかもしれない。

 

BE THE VOICE 公式サイト
和田純子さん Instagram公式アカウント

文:西紀子

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