MIA MIA 街角にあるコミュニティのためのシェルター。
2021.04.19 UP

連載 | SUSTAINABLE DESIGN MIA MIA 街角にあるコミュニティのためのシェルター。

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MIA MIA 街角にあるコミュニティのためのシェルター。

 私は歩くことが大好きで、知らない街をよく散策する。散策の最大の楽しみは、街角のカフェを探すことである。そこに座って街を観察すると、街の出来事がいろいろと目に入ってくる。古来、日本では交差点に市が立ち、人が集まり、街になっていった。街角カフェとは、その街の歴史を凝縮して味わう最良の観客席でもあるのだ。

MIA MIA』は、最近出合った中で一番のお気に入りだ。店の名前はオーストラリアの先住民の言葉で「家族や友人、通りかかった人などが集うシェルターとして建てられた小屋」という意味だという。コミュニティのためのシェルター、なんと素敵なコンセプトなのだろうか。店主のヴォーンさんの明るく優しいホスピタリティは店先まで行き届いている。空間デザインは、奥さんの理恵さんが手がけているが、ショーケースや窓枠や段差などは元の空間のままうまく生かしている。看板がついていた部分は赤くペイントして潰して、新しく小さい看板をそっと付けるなど、空間自体を愛おしみながらていねいに手を入れている。店舗であり住宅であるような感覚の設計だ。理恵さんは実力派の若手建築家だが、子育てをしながら建築を続けていくために、バリバリ働いていた共同主宰の事務所を離れ、自分のペースで仕事をする道を選んだ。理恵さんの設計スタッフが時々カフェを手伝っていたり、ヴォーンさんの知り合いのアーティストの作品がショーケースに展示されていたりと、二人の人生のおもしろさがこの場所にギュッと詰まっている。

 

「カフェは知識を吸収する場であり、文化を交換する空間、そして社会の多様性を無視せず、育み、醸造する地域のシェルターです」、そんなコンセプトに興味を持ったなら一度ぜひ訪ねてみてほしい。文化の交差点が醸し出す特別な“グルーヴ感”を、間違いなく味わえるはずである。

『MIA MIA』

住所:東京都豊島区長崎4丁目10-1
施工年: 2020年

記事は雑誌ソトコト2021年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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藤原徹平

ふじわら・てっぺい
建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。