アジア微住、第二章へ。 ー田中佑典の現在、アジア微住中vol.8
2019.09.21 UP

アジア微住、第二章へ。 ー田中佑典の現在、アジア微住中vol.8

LOCAL

「微民」こそ、ポスト・インバウンド時代の主人公。

 アジア微住を始めて、もうすぐ1年が経つ。

 この一年、アジアの中でももともと交流の多い台湾を軸足に、同じ「辺境」の国である韓国と香港に微住してきた。

 その一方で、もともと「微住」という言葉の舞台となった地元・福井でもアジアからの微住者「微民」を増やす活動を同時に進めている。

 インバウンドがある程度定着化、さらにはそのPRや戦略も出尽くした感のある今、これからは「ポスト・インバウンド」を考えていくべきだろう。そこでこれからおもしろいキープレイヤーとなるのが、僕が呼ぶ「微民」である。

台湾・高雄のきゅうり農家の家族。この夏また会いに行こう。
台湾・高雄のきゅうり農家の家族。この夏また会いに行こう。

 観光客と微民の違いはなんだろうか。観光客が大きな意味で現地を「消費」するのに対して、微民は自分たちの能力や技術を元手に、現地での関係性をとおして新しい創造を「生産」していく、まったく逆の存在である。

 先日も福井に新しい微民がやって来た。『in Blooom 印花樂』というテキスタイルブランドのデザイナーで、日本の地方に来るのはこれが初めて。しかもそれは観光としてではなく、微住をしながら自らのテキスタイルデザインを使ったシルクスクリーンのワークショップを開催したり、さまざまな福井の伝統工芸の職人さんと出会ったり、そんななかである人からは老朽化している駅のリニューアル・デザインなんて話まで出てきた。

人と仲良くなれる「カルチャーゴガク」が福井でも開講!語学もポスト・インバウンド時代のおもしろいカルチャーへ。
人と仲良くなれる「カルチャーゴガク」が福井でも開講!語学もポスト・インバウンド時代のおもしろいカルチャーへ。

 旅をしながら小商いをしていく。それは同時に、迎える街にとっては新しい産業のきっかけや地域活性につながる。観光資源が少ない地方が、必死になって自分たちだけで観光商材を考えていく必要はない。微民を受け入れるための生活資源を保つこと、外から来る微民にシェアすることこそ鍵となる。

 今後日本は、移民問題を真剣に考えていかないといけないなか、そう言われても、「移民」と聞くとどうしても重苦しい感じがする。ゆるいつながりでたまにやって来て、おもしろいことを一緒に企む「微民」との関係強化こそ、ポスト・インバウンド時代らしい新たなやり方になるはずだ。

福井微住本「青花魚(サバ)」にも登場した、現地の人でもなかなか食べられない幻の油揚げ屋へ。
福井微住本「青花魚(サバ)」にも登場した、現地の人でもなかなか食べられない幻の油揚げ屋へ。

微住先への訪問。そして東南アジアへ。

 2年目を迎えるアジア微住。まずしたいのはこれまで微住してきた場所への再訪だ。つまり「再微住」。

 微住では「一期三会以上の関係性づくり」を目的にしていて、何度も訪れないとその「関係」とは名ばかりだ。

 なので、自分の再微住と、さらには彼らにも日本に来てもらいたいなと思っている。最終的には国を越えて田中の微住に携わってくれた皆さん同士もつなげていきたいと思っている。

 そしてもう一つ、東南アジアへ行こうと思う。日本人の我々は不思議にも自分たちが「アジア人」だという認識が薄い。そしてほかのアジアの国々のことを「アジア」と呼ぶ。

 日本人にとって「アジア」とは何なのか? それはこれまでこの連載でも述べてきた「行」という考えが関係する。日本人にはない「行」という考え方。

 人も街も関係性も「変化」していくからこそ、そこにズレが生じ、差が生まれる。差があるから「個」が生まれる。

 アジアは広い。でもアジアはきっと多様な「差」を持ったマイノリティーの集合であり、協調の反対には排他的な「縄張り」や「差別」もある。

 東南アジアの国々は民族も宗教もさらにミックスした場所であり、その「差」を認め合うものと認め合わないもの二つがパラレルで在る。

 そんな国々で、「田中」という個はどんな関係づくりができるのか。さあ、田中のアジア微住は第二章へ!

記事は雑誌ソトコト2019年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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田中佑典

たなか・ゆうすけ
1986年生まれ。福井市出身。アウトサイダーの視点で、台湾と日本をつなぐ「台日系カルチャー」の発信を続けてきたが、その足場をアジア全体に拡大。自ら提唱する「微住(びじゅう)」とは一つの場所で2週間以上滞在してみること。観光以上、移住未満でアジアを俯瞰する。