なつかしさと新しさが同居する絶妙のブレンド。 ーSUSTAINABLE DESIGN
2019.09.21 UP

なつかしさと新しさが同居する絶妙のブレンド。 ーSUSTAINABLE DESIGN

SUSTAINABILITY

 なぜ日本には、普通でかついい感じのビルが少ないのだろうか。建築設計者の実力不足? 建築コストが高いから? 施主の意識が低い? 実際のところは、日本の建物が“若造”だらけだから、というのが一番的を射た答えかもしれない。よく知られているように日本は建築の平均寿命が世界一短い。日本の住宅の平均寿命が約25年に対して、例えばイギリスのそれは75年を超える。日本の建物は、やんちゃさや明るさはあるが、味わい深さや慎み深さという点ではどうしても奥行きが浅くなる。建物も、人間と同じで時間をかけて内から外に味が滲み出てくるからだ。

 浜松の中心市街地に立つ「KAGIYAビル」は築50年を超えるレアなビルである。複数のお店の軒先の上にビルをそのまま積んだような立体的な立ち姿をしている。実に普通で、かつすごくいい感じである。戦後の復興期にはこのようなビルが全国にたくさん建った。専門的には共同ビルとか防火帯建築と言われるのだが、都市火災が起きないように地主たちが共同で出資し、街のブロック単位で鉄筋コンクリート造の建築をつくった。共同で出資しているので複雑に区分所有されていて容易に建て替えができない。

 しぶとく生き延びてきている。「KAGIYAビル」を2012年に地元の不動産屋が取得後に、浜松の目利きたちが次々と関わることでビルがどんどん輝いてきた。写真家・若木信吾さんの『BOOKS AND PRINTS』の2号店が入居、気鋭の建築設計集団『403architecture[dajiba]』が4つのプロジェクトを「KAGIYAビル」の中に展開するなど、いまや浜松のみならず、全国区の建築や文化やファッションの発信地になっている。なつかしさと新しさが同居する、文化と時間と建築が醸し出す絶妙のブレンドである。

記事は雑誌ソトコト2019年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

photographs by Kenta Hasegawa

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藤原徹平

ふじわら・てっぺい
建築家。1975年横浜生まれ。2009年より『フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所』主宰。2010年より『一般社団法人ドリフターズインターナショナル』理事。建築、地域計画、まちづくり、展覧会空間デザイン、芸術祭空間デザインと領域を越境していくプロジェクトを多数手がける。2012年より横浜国立大学大学院Y-GSA准教授。受賞に横浜文化賞 文化・芸術奨励賞など。