働くこと仕事をすることへの肯定感。『HELLOlife』は働き方・暮らし方を共に考えます!
2019.09.25 UP

働くこと仕事をすることへの肯定感。『HELLOlife』は働き方・暮らし方を共に考えます!

WORK

大阪市西区靱本町の拠点を中心に、その人の人生に必要な仕事探しのサポートとして、求人情報やイベント、プログラムを提供する『HELLOlife(ハローライフ)』。
どのような活動をしているのか、スタッフのみなさんに聞きました。

「ひとりで闘わない、仕事探し」。就活テクニックではない就活をサポート!

働くことは自分の人生の一部。

 求人募集を探したり応募したりする前の段階で、ぜひ活用したいのが「ハローライフスクール」。「私はどんな仕事がしたいんだろう?」と自分の気持ちに向き合い、納得のいく就活や就職への第一歩になるプログラムだ。

 担当者の渡辺眞子さんは、「これから先の人生をどう生きていくかをきちんと考え、自分が働く目的や大事にしたい働き方に立ち返ることで、納得できる就職や進路の決定をサポートする内容です。自分の人生を支えてきた価値観や考え方、『こう生きたい』と思った要素を掘り起こし、それをもとに『こんな人生にしていきたい』という方針を見つけていきます」と話す。参加者は、環境の変化により働くことについて再考したい人や、仕事でうまくいかないことがあって前向きな気持ちが弱まっている人などさまざま。

2015年から始まったプログラム。これまでのスクール参加者は300名以上で、毎回15名前後が参加している。
2015年から始まったプログラム。これまでのスクール参加者は300名以上で、毎回15名前後が参加している。

 ワークショップ形式で行われ、自分の思いだけではなく、ほかの参加者の話が聞けることも大きな財産になるようだ。「お互いの価値観がよく分かるので、同期同士で応援し合い、とても親しくなったり、なかにはここで出会って結婚した方もいます。参加後、夢に向かう気持ちを取り戻したり、働くことは自分の人生の一部だと前向きにとらえられるようになる人が多いです」。また、企業訪問や個別面談などもあり、プログラムの終了後も継続して個別にサポートを受けられる。

左/自分や参加者の思いに触れる濃密な時間だ。右/書き出すことで自分の人生の軸を探し、「未来予測」と「計画づくり」をしていく。
左/自分や参加者の思いに触れる濃密な時間だ。右/書き出すことで自分の人生の軸を探し、「未来予測」と「計画づくり」をしていく。

なんと、住宅付きでコミュニティにも参加できる求人!自立をサポートする就職支援プロジェクト。

仕事と住宅とコミュニティで人は自立し、自信を持てる。

 自分の住まいを持って自立したい人、環境を変えて新しいことに挑戦したい人、転職を考えている人にオススメしたいのが、「住宅つき就職支援プロジェクト MODEL HOUSE」だ。これは大阪府四条市にある公営住宅の一室を借りることのできる”住宅付きの求人“。仕事は、住宅に近い参画企業の求人が用意され、選ぶことが可能。「求職者は住むところが安定しないと、将来のことをゆっくり考えられない状況があると分かって、仕事を探すうえで住宅も大事なのではと、2017年度からスタートしました。さまざまな事情で無職だった人たちがこれに参加して一歩踏み出し、やりたいことが見つかるなど、さまざまな変化が生まれています」と話すのは、担当者の箭野美里さん。参加者が自立して自信をつけ、生き生きとした表情や話し方になったこともうれしかったそうだ。

2019年度は大阪府、四條畷市、『日本財団』と『HELLOlife』の四者協定のもとで実施。
2019年度は大阪府、四條畷市、『日本財団』と『HELLOlife』の四者協定のもとで実施。

 住宅は、ノウハウを持つスタッフの指導のもと、壁や床の塗装などをして自らリノベーションしたうえで、月々2万5000円で住むことができる。しかも同じ公営住宅に入居する、プロジェクトの参加者同士のコミュニティもある。自分が住まう一室とは別に、冷蔵庫や洗濯機などの生活家電が揃ったコミュニティスペースがあり、集まって食事を楽しんだりイベントをしたりして、参加者との交流を深めることができる。

上/共同の空間があるよさを満喫できる。左下/2018年度の参加者(年度末で全員が卒業)は自治会や夏祭りに参加し、地域の住民と交流。右下/DIYにかかる費用も込みの家賃設定。
上/共同の空間があるよさを満喫できる。左下/2018年度の参加者(年度末で全員が卒業)は自治会や夏祭りに参加し、地域の住民と交流。右下/DIYにかかる費用も込みの家賃設定。

『日本センチュリー交響楽団』と若者たちで音楽を創作し、最後に発表会を開催。

「伝えたい」という気持ちが湧くのが音楽づくり。

 2014年度から5年間実施されていた珍しいプロジェクトが、『日本センチュリー交響楽団』とのコラボレーションで展開する「The Work(ザ・ワーク)」。例えば2018年度は、「住宅つき就職支援プロジェクト MODEL HOUSE」のコミュニティプログラムの一環として実施。働くことや人生に悩みや迷いを抱える若者とオーケストラ楽団員、地域の住民が、共に音楽をつくり上げた。

さまざまな立場の人と一つの音楽をつくった。
さまざまな立場の人と一つの音楽をつくった。

 担当者の和津田靖野さんはこう振り返る。「作曲家の野村誠さんや楽団員の方たちのリードで、参加者一人ひとりのアイデアや発想を活かした、自由な音楽づくりをしました。音の出るものや、楽器を通じて表現や創作活動をすることで、参加者たちの様子が変わっていったんです。日々の暮らしや仕事、人生に対して前向きになり、自信をつけてくれたようでした。音楽って、言葉じゃないからなかなか伝わらないけれど、音楽づくりは伝えたい気持ちが湧いてくるもの。その経験が『社会でも伝えたい』と感じさせ、日常でも変容が生まれるのだと思います」。

左/出会った楽団員のファンになり、参加者たちは今も演奏会に行っているそう。右/音楽創作と並行し、仕事や人生について考えるワークショップも実施した。
左/出会った楽団員のファンになり、参加者たちは今も演奏会に行っているそう。右/音楽創作と並行し、仕事や人生について考えるワークショップも実施した。

 また、自宅に引きこもりがちだった参加者が、緊張しながら発表会の舞台に立ち、観客から大きな拍手をもらったことで、「人生で初めて主役になれた」と涙ぐんで話したこともあったそうだ。今年度の活動は未定だが、ぜひ再開して自由な音色を奏でてほしい。

プロジェクト名は「作品」「働く」という意味。「これこそ自分たちの生き方だと誇りを持てるようなプロジェクトになればという願いがありました」と和津田さん。
プロジェクト名は「作品」「働く」という意味。「これこそ自分たちの生き方だと誇りを持てるようなプロジェクトになればという願いがありました」と和津田さん。

働くことって、人生の目的ですか?
『HELLOlife』代表理事の塩山 諒さんに聞きました。

 2016年に大阪府主催の就職者の受け入れプロジェクトで「ボケない大阪へ、ツッコメ。」というキャッチコピーのインパクトのあるPRをしたり、2019年3月にはなんとコタツで行う合同企業説明会「コタツ就活EXPO」を開催したりするなど、ユニークな活動で常識を打ち破ってきた『HELLOlife(ハローライフ)』。メインの拠点としているのは、大阪市西区にある4階建てのビル。1階が創作ドリンクや和スイーツを販売する日本茶スタンド、2階が仕事の相談窓口、3階がイベントスペース、4階が和スイーツなどの製造工場で、ジョブトレーニングの場にもなっている。この全フロアが彼らの運営だ。

靱公園に面して立つ。
靭公園に面して立つ。

 企業と密にコミュニケーションをとったうえで求人情報を発信し、これまでに紹介したようなさまざまなプロジェクトを実施。同ビルの拠点のほかに、大阪府と一緒に運営している『OSAKAしごとフィールド』、厚生労働省より受託している『大阪府地域若者サポートステーション』、『奈良若者サポートステーション』でも職にまつわる活動をしている。

 そうした多面的な現在の活動をしている理由を、代表理事である塩山諒さんに聞いた。

 「僕は兵庫県尼崎市で育って、社会に貧困や差別の問題があることを幼少期から肌で感じていました。不登校を経験し、その後引きこもるうちに社会のほうがおかしいんじゃないかと思い始めたんです。10代からフリースクールのスタッフ、人材派遣会社、政治家のカバン持ちなどを経験しました。あるとき、ビジネスマンがある社会課題の関係者の話を取りまとめ、国に提言することでプロジェクトを動かしている様子を見て、『社会課題を解決するためには、そうやってムーブメントを推進させる人が必要なのでは!』と思い、2007年にNPO法人(『HELLOlife』の前身となる『スマイルスタイル』)を設立しました」。

プロジェクトは多数。各所との信頼関係も築き上げている。
プロジェクトは多数。各所との信頼関係も築き上げている。

働くことは、目的ではなく手段の一つ。

 そんな経緯があって、塩山さんは活動で「何かの理由で学校に行けなくなったり、働けなくなったりした社会的に弱い立場の人たちを含めたすべての人が、人生をこれからどう歩んでいくか。肯定され、胸を張って生きていける状態をどうつくるか」を大事にしている。

 近年の求人や就職、労働事情は決してやさしくない。「普通の人が普通に就職できず、普通に働けなくなる時代」と塩山さん。働くことにまつわる問題は、誰にでも起こりうるからこそ”すべての人のための場所“をつくったのだ。

事務局長の古市邦人さん(写真右)とプログラム開発ディレクターの豊西梓さん。豊西さんは「ハローライフスクール」を受講し『HELLOlife』へ就職!
事務局長の古市邦人さん(写真右)とプログラム開発ディレクターの豊西梓さん。豊西さんは「ハローライフスクール」を受講し『HELLOlife』へ就職!

 しかし、塩山さんたちの視野は「働く」だけにとどまらない。「働くことは目的ではなく、求職は手段でしかない」と話す。求職者の人生を丸ごと支援したい、と願って『HELLOlife』と名づけたという。

 塩山さんは謙遜しながらこう話してくれた。「さまざまな立場の人の声を知っているからこそ、それを変えうるのは自分しかいないと、大いなる勘違いをしていて(笑)。社会のシステム自体を変えていかんとあかんという気持ちが強いんですね。その発明をするのが、我々のミッションです」。

記事は雑誌ソトコト2019年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

photographs by Hiroshi Takaoka
text by Yoshino Kokubo

キーワード

塩山 諒

『HELLOlife』代表理事。1984年生まれの塩山さん。『ハローライフ』は2014年度のグッドデザイン賞を受賞。